先般、タクシーに乗ったら、運転手の態度が横柄でとても無愛想だった。
「どこの会社のタクシーだろう?」と思って助手席の裏側を見ると、「個人タクシー」とのこと。
以前、長銀高松支店で個人タクシーを利用して外回り営業をやっており、当時の運転手さんたちから、「個人タクシーの権利はけっこういい値段で売れるのですよ」と聞いたことを思い出した。
自分に関係のあることなら、少しは愛想も良くなるのではと考え、
「最近、個人タクシーの権利はいくらで売れるのですか?」
と訊ねたら。
「たいしたお金にはならないよ」
と、ボソリと一言で打ち切られた。
国交省がタクシー台数を制限していることによって、金銭的価値のある「個人タクシー権」が発生するのに、私は納得がいかない。個人タクシーの経営者になるには、「新規許可を得る方法」と「個人タクシー権を譲り受ける方法」がある。一定のスキル等があれば誰でも個人タクシー営業ができるなら、絶対に「個人タクシー権」などが発生するはずがない。
台数制限によって「新規許可」を得るのが困難な事情があるので、わざわざ有償で権利を譲り受けるのだ。
タクシーの台数を国交省が決めている理由は、乗客の安全性とのことだ。
過当競争になって運転が劣悪になると、乗客の安全性が脅かされるという理屈だ。
それならば、なぜ「個人タクシー権」の譲渡を認めているのか?
お金を払って法が定める一定要件を充たせば、どんなに運転が劣悪でも個人タクシー営業ができることになってしまう。
劣悪とまで言わなくとも、譲渡代金を回収するために睡眠時間や休憩時間を削って運転すれば、安全性は損なわれる。タクシー業も私的営利業なので、国の関与が必要最低限であるべきなのは当然のことだ。
さほどでもない距離を低速度で走るのと、長距離高速バスのように多くの乗客を乗せて長時間の高速運転をするのとは、性質が全く異なる。「安全性重視」を掲げるのであれば、一定以下の走行距離等のケースだけでも台数制限を廃止すべきだ。
例えば、「1日の走行距離100キロ以内」「首都高速道路等、都市部の通常移動手段以外の高速道の走行はしない」…等々の条件を課した上で、ウーバーやリフトのようなシェアライドを全面的に認めるべきだ。
日本に来日した多くの外国人の最大の不満は、「移動料金の高額さ」だそうだ。
移動料金を世界標準に近づけないと、いずれ外国人観光客にソッポを向かれてしまう。
ちなみに、前述の個人タクシーを降車する際、カード払いをしようとしたら「現金だけです」と断られた。
車両の横には「カード利用可」と書かれているのに…。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。