バカでもできる円安目標

2018年05月27日 15:30

日銀サイトより:編集部

インフレ目標に行き詰まった日銀が、外債を買うという話が出ている。理論的には、黒田総裁が1ドル=200円にペッグすると宣言して米国債を買い、日本国債を売れば、円安・インフレが起こる。これはスヴェンソンが2000年に提案したバカでもできる方法(Foolproof Way)の応用だ。もちろん政治的には不可能だが、どうなるかは容易に予想できる。

1.円は暴落して200円に近づく
2.国債の相場も暴落する。
3.財政インフレが起こって物価が急上昇する
4.市中銀行が大きな評価損を抱えて金融危機が起こる
5.日銀が一転して市中銀行の売った日本国債を買い、米国債を売る

財政インフレを起こす方法として、シムズは消費税の増税延期を提案したが、国会同意の必要ない国債の売買のほうが簡単だ。法的には日銀は為替介入できないが、特定の水準を宣言することはできる。この後どうなるかは、二つの答がありうる。

  • よい均衡:1ドル=200円で為替と物価が安定する。おそらく物価水準は今の2倍ぐらいになるだろうが、インフレ税で損するのは金持ちと老人なので、所得分配は公平になる。海外に出ていた日本企業が戻ってきて、潜在成長率も大幅に上がるだろう。
  • 悪い均衡:物価水準が発散する。財政インフレを日銀がインフレ目標で止めることはできない。日銀が動かせるのはマネタリーベースだけで、民間に通貨が流通する貨幣乗数はコントロールできないので、日銀はマネーストックをコントロールできないからだ。

むずかしいのは、最初に国債を売った日銀が、金融危機が起こったら買い支える側に回ることだ。このタイミングを誤ると大惨事になるが、それでも無限大に発散することはない。Del Negro & Simsはアメリカについて、25倍のハイパーインフレを予想している。

 

財政インフレのシミュレーション(縦軸はインフレ率)

Foolproof Wayはトンデモではなく、スヴェンソンはスウェーデンの中央銀行の副総裁もつとめ、その論文は日銀のウェブサイトにも掲載されている。理論的には、日本経済が複数均衡の「悪い均衡」に陥っているとすれば、こういうショック療法で「よい均衡」に戻すことは可能だ。そういう均衡が存在するかどうかはわからないが、実験してみればわかる。

これはきわめて簡単なオペレーションなので、私が日銀総裁になってもできる。政府の実質債務も一挙に半減するので、一石二鳥である。インフレを起こすことだけが目的なら、誰でもできるのだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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