最後は台風襲来!沖縄知事選、選挙の常識を破る結果に?

2018年09月29日 06:02

沖縄県知事選は29日、選挙活動の最終日を迎えた。翁長前知事の死去に伴う選挙戦前倒しに始まり、翁長氏の後継指名の遺言騒動、さらには安室奈美恵さん引退ライブが重なり、終盤には非常に勢力の強い台風が襲来するという、最後の最後までドラマ性に満ち満ちた展開になった。

さて、筆者は今週月曜夜に那覇に入り、火曜には八重山日報の伊東大輔・那覇支局長と対談。

さらに辺野古を視察し、陣営関係者らも取材して、金曜午前最後の羽田行きの便で帰京した(午後は台風の影響ですべて欠航だったため、冷や汗をかいた)。選挙戦が終わってから書いた方がいいことはまだ取っておきたいが、一つだけ言えるのは沖縄の選挙は、本土とは異質な部分が多く、実際に現地に入り、関係者から話を聞いてみないとわからないことだらけだということだ。

選挙前から情勢数字が飛び交う異例の情報戦

今回の選挙戦は公知の数字をみるだけでも「常識破り」の展開だ。期日前投票は前回比で大幅に増加。27日までの時点で1.5倍に急増しており、さらにこの台風の影響で続々と足を運ぶ有権者が増えたため、那覇市では2.5倍にまで膨らんだようだ。

常識は、水面下の数字を巡っても問われている。今回の選挙戦で、もっとも筆者が注目したのが、報道陣や陣営などが行う世論調査が沖縄は例外になるのかどうかだ。

そもそも選挙戦に入る前から異例の報道があった。琉球新報が『虚構のダブルスコア 沖縄県知事選、出回る「偽」世論調査』と題した記事を掲載。記事では実名を出していないが、玉城デニー氏が佐喜真淳氏をダブルスコアで上回る世論調査が出ているという真偽不明の情報が飛び交ったという話題を報道したのだ。

選挙戦に関して、政治関係者、報道関係者の間で数字の情報が出回るものだが、週刊誌やネットでゲリラ的に出るものはともかく、テレビや新聞などがそうした「舞台裏」の様子を報道すること自体、前代未聞だった。ただ、選挙戦に入ってから最初の各社の情勢報道では、玉城氏が先行していたこと自体は「事実」であった。

そして後半戦、ラストサンデーを終えた時点での各社の終盤情勢報道でも、「玉城氏やや先行、佐喜真氏激しく追う」の傾向で報じている社もあるが、「互角」「激しく競り合う」という見立てを報じる社も増えてきた。その中で、現地取材をして興味深かったのは、「互角」と判定した社が公表していない調査サンプルでは、玉城氏と佐喜真氏の数字が「3:2」の傾向が出ていたということだ。

遊説中に女性有権者の記念撮影の求めに応じる玉城氏

玉城陣営のサンプルが多くても「互角」判定の背景

しかし、これは決して「フェイクニュース」というわけではない。

翁長前知事の弔い合戦ムードが漂う中、本土と比べて地縁・血縁が選挙に色濃く影響する沖縄にあっては、佐喜真氏を支持しているが、期日前投票の出口調査で「回答拒否」あるいは「玉城氏に入れた」と回答した人が少なからずいるとの指摘がある。

とくに回答拒否がこれまでになく増えているらしく、たまりかねた報道機関の調査員がオフレコで説得して聞きだすと、「実は佐喜真氏に入れた」と告白する人が相次いだという。こうしたことから「隠れ佐喜真」支持者の存在が、選挙現場では噂されている。

もちろん、「隠れ佐喜真」支持者の存在などは、裏を取りきれない話だ。しかし、沖縄の選挙では今年はじめの名護市長選(1月28日告示、2月4日投開票)で、世論調査の数字が「当てにならなかった」先例があったことから、一定の説得力をもたせている。選挙戦スタート時点では、どの報道機関の調査でも、翁長知事派の前市長が過半数のリードをしていたが、蓋を開けてみれば55対45の比率で、自民・公明が推す新人が圧勝した。

調査の精度が狂ったのは、人口わずか6万と地縁の影響が大きな街の選挙にあって、辺野古移転問題のご当地というセンシティブなイシューが重々しかったからとみられている。この流れが、都市部の那覇市を含めた沖縄全県に広がると短絡的にいうことはできないが、「互角」と書いている社は、サンプル数の差異は認識した上で、取材現場で感覚的にとらえた総合的判断をしているようだ。

玉城陣営に焦り?佐喜真陣営には小泉氏3度の応援

実際、玉城陣営は、佐喜真陣営の肉薄を意識してか戦い方に変化が表れている。先週土曜(22日)に那覇市内の(自称)1万人集会では、翁長前知事の妻、樹子さんが登場して演説。その内容を文字起こしして県内各地にポスティングもした。さらに終盤戦の「切り札」にポスター張り替えを敢行。デニー氏の下に翁長氏の遺影を載せるなど、四十九日を機に「弔い合戦」ムードを煽る“泣き落とし作戦”に出た。


そして27日に小泉進次郎氏が、3度目となる佐喜真氏の応援に入ると、玉城氏の支援者が自民党の街宣車の横で横断幕を張るなどの示威行動にまで出た。

しかし、小泉氏に「佐喜真さんの支持の広がりを感じる。こうして相手陣営の方々が来てくださった」と、あっさり切り返される始末。そそくさと姿を消してしまったことには苦笑してしまったが、いずれにしろ、玉城陣営の「焦り」を感じさせる動きだった。

そして、ここにきての大型台風直撃。離島では投票日を繰り上げており、県内全般でも期日前投票がかつてない増加をしている。陣営の街頭活動は著しく制限され、きょうは電話作戦などを注力することになりそうだ。

悪天候と投票動向の一般論としては、玉城氏の浸透が伝えられる無党派層の投票率が下がり、佐喜真氏を支援する組織票の存在感が増すという見立てが成り立つ。一方で、世代別投票率の高いシニア層の移動を直撃することが両陣営にとって吉と出るか凶と出るのか?…「変数」の多い今回の選挙を示唆するような状況だ。

世論調査の数字を覆す結果になるのか、それとも沖縄でも本土と変わらない数字の正当性を示すことになるのか。あすの夜はNHKの当確速報が出る瞬間を待ちながら、ニュースに首ったけになりそうだ。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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