水陸機動団より空挺団の方が島嶼防衛に役立つのでは?

2018年10月16日 06:00

さて、本年度から水陸両用団が発足したわけですが、本当に必要だったんですかね?

そもそもまともに英海兵隊含めて、参考になりそうな海外の部隊をリサーチもしないで「ぼくのかんがえたかいへいたい」作ったわけです。控えめに言ってもあまり当事者能力があるとは感じられません。

政府が「島嶼防衛」といっているのは、尖閣などの離島の小島であり、沖縄本島や宮古島ではなかったはずです。

島嶼への上陸訓練を行う西部方面普通科連隊の隊員。Wikipediaより:編集部

ところがAAV7は3年の評価期間を陸幕長が「アメリカ様に言われましたと」半年に端折って導入しました。おそらくは「官邸の最高レベル」から押し付けでしょう。とても主権を持った独立国じゃないでしょう。安倍首相は総理ではなくて総督なんですかね?

これが「新しい国」とか「日本を取り戻す」とか「戦後レジームからの脱却」というやつらしいです。

ですが、AAV7なんぞはビーチでしか揚陸できない代物で、尖閣なんぞでは使えず、沖縄本島とか宮古島など広いビーチがある場所じゃないと使えない。離島のリーフや防潮堤なんぞ超えられません。

そもそも強襲揚陸なんぞ現在では不可能ですが、AAV7はそのための装備です。それが現実的ではないから、米海兵隊もAAV7の近代化をキャンセルしたわけでしょう。

政府と防衛省は民間人を巻き込んだ沖縄本島の奪回作戦をやる、「あの素晴らしい第二次大戦の沖縄戦をもう一度」と、いっているのに等しいわけですが、沖縄のメディアですからこれを問題にしない。不思議な話です。あれほど基地に反対しているのによくわかりません。

本来の島嶼防衛で、相手が上陸してくる前、あるいは増援部隊が上陸してくる前に水陸機動団を投入するのであれば、九州よりも沖縄に少なくとも一個中隊とその輸送手段をおいておくべきでしょう。

戦争に発展する大規模な戦闘は想定しない、相手の動きを察知したら上陸前、あるいは小部隊が上陸した段階で水陸両用団を投入するというのであれば、ですけども。

で、そのためにクソ高いオスプレイも導入したわけです。その巨額の導入及び運用費用で陸自のヘリ部隊の運用を危機に追い込みながら。離島への兵力投射は既存のチヌークやブラックホークに給油機能をつければ可能ですが、それでは遅い、オスプレイは2倍速いと導入賛成する人たちはいいます。それだけ磯くのであれば沖縄本島あたりに部隊を配備するべきでしょう。

また、そういう目的であれば、水陸機動団を編成するまでもなく、空挺団の活用で良かったんではないでしょうか。空挺の一個中隊程度とオスプレイを沖縄に配備しておけば迅速に展開できるはずです。あるいはチヌークやブラックホークでもいい。本土からオスプレイで運ぶよりもよほど早く現地につくことができます。

ところがオスプレイも佐世保界隈に配備(予定)、水陸両用を佐世保界隈でのせて、おっとり刀で駆けつける。一刻を争うというのにのんびりした話です。

場所にもよりますが、オスプレイよりもC-130HやらC-2に空挺団を載せて、投入した方が速いでしょう。所詮オスプレイの速度は固定翼機よりも遅い。九州からでもC-2で輸送する方が確実に速い。しかも車輌か重火器も投下できます。C-2もまだ現役です。

実戦に投入できるオスプレイはせいぜい12機程度でしょう。運ぶのは兵隊だけじゃなくて、弾薬から対戦車、対空装備、陣地構築の装備や食料なども必要です。ですが車輌は懸吊しないと運べませんし、検量輸送すればご自慢の速度はかなり遅くなります。

輸送機からの空挺作戦の場合、仮に尖閣のように狭くて落下傘降下が難しい場所でも、セミリッジボートを投下することも含めて、水上に降下することも不可能ではないでしょう。
また車輌や重火器も投下が可能です。

エアボーン作戦を主力として敵が本格的な侵攻をする前に展開するのであれば、空挺団を使えばいいわけです。わざわざ大カネかけて水陸両用を編成して役に立たないおもちゃを買う必要はなかったはずです。そういう事を考えたのでしょうか。

降下訓練中の空挺団員(陸自サイトより:編集部)

逆に申せば、せっかく存在している精強部隊の空挺団がお茶を引いているのはもったいない。もっと空挺団の活用を考えるべきです。

もっと根源的な話をすると、敵が上陸しそう、した場合には特殊部隊を投入して情報収集をするのが常套手段です。ところが尖閣などに特殊作戦群を投入する手段はありません。ブラックホークでは航続距離が足りません。諸外国のように潜水艦による潜入手段もありません。輸送機で近くに海に可潜艇などを投下して、それで侵入するような手段もありません。

以前から申し上げておりますが、オスプレイをどうしても政治的(自衛隊も導入しましたよ、これを本土に配備しますよ、だからオスプレイは安全ですよ、沖縄皆さん)に導入する必要があるならば特殊部隊用にCV-22を数機導入すればよかった。そうであれば特殊部隊の投射能力が獲得でき、調達・運用コストも抑えられたはずです。

現状、偵察もしないで相応の部隊を丸裸のMV-22で送り込むならば、無責任な投機的な作戦となり全滅する可能性もあるでしょう。オスプレイに随伴できる攻撃ヘリはありません。

それから昨今空挺部隊用の装備があまり更新されていませんが、消防では結構導入されているアルゴ社の水陸両用の8×8なんぞよろしいかと思います。低圧タイヤで不整地走行力が高く、牽引力も強いのでトレラーを牽引して物資を運んだりもできます。無論、落下傘降下した部隊の隊員を迅速に集合させることにも威力を発揮します。南アの空挺部隊のゲッコーはその派生型です。実はその一輌が日本の輸入元が持っているそうです。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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