南青山・児童相談所新設は、典型的な「NIMBY(私の近くではやらないで)」案件に…

音喜多 駿

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

地元行事にイベント登壇と慌ただしく過ぎ去っていった師走の週末ですが、地方行政に関連してこちらの話題が再び大きくニュースになっていました。

青山ブランドに「児相の子つらくなる」 建設に住民反発:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASLDH4W9FLDHUTIL00K.html

区の説明に対し、周辺住民からは「なぜ高い土地を買って南青山につくるのか?」「保健所がある三田ではダメなのか」「人口が増えている港南地区にすればいい」など反対意見と質問が続いた。(中略)

近くに住む女性は「3人の子を南青山の小学校に入れたくて土地を買って家を建てた。物価が高く、学校レベルも高く、習い事をする子も多い。施設の子が来ればつらい気持ちになるのではないか」「青山のブランドイメージを守って。土地の価値を下げないでほしい」といった声も出て、区側との考えの溝は埋まらなかった。
(上記記事より抜粋、強調筆者)

映像ニュースでも拝見しましたが、かなり強い口調で反対意見が次々と述べられており、驚きとともに非常に残念な気持ちになりました(ただ、ニュースではネガティブな意見が目立つものの、「子どもたちのために反対などするべきではない」等、賛成意見も多数あったそうです)。

児童相談所がすっかり「迷惑施設」だと認識されてしまったことも、現状認識が誤解に基づく偏見であることも、悲しい限りです。

例えば「小学校に通う(児相の)子どもがつらくなる」という発言については、児童相談所の機能が正しく理解されていません。

児童相談所に併設されるのはあくまで「一時保護所」ですので、支援対象の子どもたちが地域の学校に通学することはなく、「児童養護施設」と誤解しているのだと思います。

もちろん、「児童養護施設だったら反対しても良い」というわけでもありません。「自分たちと立場や価値観の違う存在」について畏怖するのは、人間としての本能ではありますが、福祉施設に反対する人たちからは

「(今は困っていない自分自身も含めて)誰もが福祉の対象になる可能性があるのだ」

という現実が、すっかり抜け落ちてしまっているように感じられてなりません。

LGBTや外国人労働者の問題が議論される昨今、足元の「多様性」に対する受容性の欠如を改めて日本社会・地域社会は見つめ直さければならないように思えます。

もっとも、こうした反対活動が起こるのは、何も現代日本に限ったことではありません。海外では

「Not in my backyard(私の裏庭ではやらないで)」

略してNIMBY(ニンビー)などと呼ばれています。「施設の必要性は認めるけど、私の近くではやらないでね」という態度や姿勢のことを指します。

NIMBYという言葉は「住民のエゴ」といった否定的な文脈で使われることが多いようですが、今回の件もニュースで見れば「なんてひどい態度だ!」と感じるものの、いざ自分の地域ごとになると考えてしまう…という人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

こうしたNIMBY問題を解決するため、まちづくりの計画段階から市民参加を促すなど様々な試みが行われているものの、明確で万能な解決策があるわけではなく、民主主義社会が21世紀に超克しなければならない課題の一つと言えるでしょう。

・施設に対する正しい知識と必要性を知ってもらう周知活動
・早めの計画段階から説明を尽くす情報公開
・そして計画修正のタイミングで意見公募等で住民参加を促す

こうした地道な施策の組み合わせで、行政はこれから増え続ける児童相談所などの福祉施設の新設に対応していく他ありません。

南青山の件は引き続き注視するとともに、こうした悲しい係争の再発防止に向けて私も自分の立場でできることを考えて、行動して参ります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、あたらしい党代表、東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出)のブログ2018年12月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。