日本初。蓄電池ゼロ円設置が宮古島で実現

2019年04月27日 06:00

太陽光発電システムの値段が世界的に下がってきています。条件次第では火力発電などの従来の発電システムのコストと同じか、それを下回るいわゆるGrid Parity(再エネ電力価格の均衡)が発生しています。

写真AC

特に、南国の島などはGrid Parityが発生しやすいと言われています。本土に比べて規模の効率性に劣り、大規模な発電所を作れずに小規模なディーゼル発電に頼らざるを得ないという悪条件に加え、その重油を本土から輸送する手間やメンテナンスのための人件費がかさむので、既存のシステムはどうしても高くなります。そこで、燦々と照るお日様で発電する太陽光の方が比較優位が高くなるのです。

実際、米国のハワイ州がその好事例で、米国で一番高かった電気料金とネットメータリングというインセンティブが後押しをし、2010年以降太陽光発電システムが急激に普及して、その浸透率はカリフォルニア州を抜いて全米1位となっています。

こうして、ハワイの脱炭素化は進んだわけですが、あまりに急激に導入が進んだゆえに大きな副作用が問題となっています。太陽光の発電量はお日様頼みで不安定、また、夜は全く発電しないということで、送配電網(電力システム)の安定性が揺らいでしまい、太陽光発電システムのネットワークへの接続保留、出力抑制措置がとられ、ネットメータリングも2015年には廃止されました。今、九州のメガソーラーで起きているのと似た状況にいち早く到達していたのです。

そこで救世主として注目されたのが蓄電池です。ハワイ州では、SE(蓄電池併設オプション)という仕組みが導入されました。この仕組みでは、電力の買取可能な時間を午後4時から翌日午前9時、つまりお日様の出ていない時間に限定、すなわち住宅各戸で蓄電池を設置してもらい、昼間に発電した電気を貯めて、夜にネットワークに流すことで電力系統を安定させようという試みです。ただ太陽光パネルから系統にだだ流しするのに比べて費用がかかるため、買取価格も高め、例えばラナイ島では1kWhあたり23円で、買取価格は2022年まで固定・保証されています。

近年、リチウムイオン電池の価格も低廉化しているので、電池を新たに購入しても理論上、ペイするというわけです。

しかし、このオプションのそのままでの普及に私は懐疑的です。もう「一捻り」が必要だと思います。確かに、理屈の上では、投資回収可能とはいっても数十万円もする蓄電池を、自腹で、住宅オーナーに購入させるのは無理があると考えるからです。

私のいう「一捻り」とは、「第三者保有モデル」です。つまり、住宅のオーナーに設置させるのではなく、第三の事業主が家の屋根や敷地を借りて太陽光発電・蓄電池システムを設置して、普通に電力会社からネットワークを通じて買うよりも安い電気を供給するという事業モデルです。

宮古島の海(写真AC:編集部)

実は近年、日本でも太陽光発電システムだけ(蓄電池は含めない)なら、この第三者保有モデルを各社が手がけ始めています。しかし、蓄電池を含めて、「ゼロ円設置」を打ち出す事業者はここまで登場しませんでした。これを初めてやってのけたのが、2018年4月に設立された比嘉社長率いるベンチャー企業の株式会社宮古島未来エネルギー(MMEC)です。

詳しくは、「藤本健のソーラーリポート:太陽光パネル・エコキュート・蓄電池を各家庭に無料設置、宮古島でのビジネスは日本の未来の試金石となるか」をご覧ください。

「宮古島では、エネルギーが高コスト構造になっています。この構造にITをうまく取り入れて改善していきたい、という思いがMMECの基本的部分にあります。確かに燃料費は高いけれど、それ以上に高いのが固定費なんです。なぜなら電力会社側は最大出力需要にいつでも対応できるよう、体制を整えている必要があるのです。

これを調整力と呼ぶのですが、この調整力に高いコストがかかり、これが固定費となっているわけです。そこで電気の需要=負荷を予測し、平準化することができれば、固定費を下げることができます。そのためにはピークカットやピークシフトの実施が重要になってきます。また、これが再生可能エネルギーを多く取り入れていくために大切なものなのです」と比嘉氏は語る。

比嘉直人社長は、沖縄電力グループ会社の出身で、宮古島メガソーラー実証設備のシステム設計責任者や、国内初の可倒式風車導入のシステム設計責任者などを手がけられ、非常に手堅いビジネスモデルを打ち出されています。私も昨日、比嘉社長にお目にかかり、直接お話しを聞かせていただきました。確かに、発電コストが高く、蓄電池まで含めたGrid Parityが実現した宮古島だからこそ始められるビジネスだと感じました。

今の時代、「所有」より「使用」というサブスクリプションモデルが各業界で流行っていますが、これこそまさに蓄電池付き電力システムのサブスクリプションモデルです。さらに、電力会社から買うより安くなる。また、台風が多く通過し停電が多いという宮古島で、蓄電池は威力を発揮します。

この取り組みが成功を収め、全国・全世界に展開されることを期待しています。

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酒井 直樹
株式会社電力シェアリング代表

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