ココカラ正念場 !? マツキヨ・スギHDの統合提案になぜ特別委員会?

2019年06月12日 11:30

すでにご承知のとおり、6月10日、ドラッグストア大手のココカラファインは、同業のマツモトキヨシHDと、スギHDとの間でそれぞれ進めている経営統合や資本業務提携の協議について、両社からの提案を比較検討する特別委員会を設置すると発表しています(特別委員会設置に関するお知らせ)。 ココカラ社の社外取締役さんが委員に含まれていますが、こういった委員会の職務に就く社外取締役さんというのも珍しいですね。

各社ロゴより:編集部

この特別委員会の設置目的は、

当社の企業価値を向上させる可能性の有無の観点から、マツモトキヨシホールディングス及びスギホールディングスによる提案を客観的な立場から総合的に検討すること

とされています。企業不祥事発生時の第三者委員会や公正なM&Aのための第三者委員会への社外取締役の関与事例は増えていますし、敵対的買収防衛策発動時における企業価値評価委員会なども、経営陣と会社との利益相反状況が認められますので、社外役員関与の必要性は認められます。しかし、ココカラ社のケースでは、どういった意味合いから社外取締役さんが(外部の専門家とともに)委員として関与されるのでしょうか。

そもそも同業他社であるマツキヨ社、スギHD社は、ココカラ社からみれば完全な独立当事者であり、黙っていてもココカラ社の取締役は株主共同利益のために最善を尽くすことが期待できる状況です。いや、こういった有事においては、死に物狂いで株主の利益最大化のために社長以下の社内取締役が相手先と交渉することで「最適解」が得られる、と株主は期待しているのではないでしょうか。

統合の相手先はライバルの同業者ですから、「業界で長年培った知見をもとに」相手先企業のデューデリを行い、できるだけ自社の価値を高めて有利な統合に持ち込むことが、ココカラ社の現経営陣の方々の善管注意義務を尽くす姿だと思います。

そこでは業界外の有識者による客観的な企業価値評価への意見など必要なのでしょうか。もし必要であれば、ココカラ社が財務アドバイザーを活用すればよいのではないでしょうか。経営者ご自身の「必死のパッチ」の姿勢を後方からモニタリングして、交渉の合理性を担保するための委員会であればわかりますが、「提案に応じることが企業価値向上につながるか、(応じるとして)どっちが統合先としてふさわしいか」を第三者に決めてもらう(第三者の意見を参考にする)というのは、私の中ではかなり違和感が残ります。

ドラックストア業界の勢力図を大きく塗り替えるためのリスキーな決断をしたスギHD、マツキヨ社としては、「ご提案は、第三者委員会の評価結果を参考にしながら検討します」と言われてどう思われたでしょうか。「オタクの会社の従業員の方々を、ウチの従業員の方々と一緒に絶対に幸せにしましょう」といった「(企業価値向上のための)統合の正当性」は、同業で切磋琢磨してきた経営陣だからこそわかってもらえる、といった気持ちとして提案には示されているように思うのですが。

たとえば①現経営陣が先頭に立って交渉を行うと、短期的な利益追求を優先してしまい、中長期の企業価値向上に配慮する姿勢が期待できない、②統合交渉の末、双方の提案をいずれも断り、独立経営を維持する可能性がある、③三社の歴史的背景から、ココカラ社の社内取締役は、どうしても公正な判断ができない事情がある、といったなんらかの理由があれば納得もできそうなんですが、社外取締役さんも関与するような特別委員会(第三者委員会)をなぜこの時点で設置しなければならないのか、もう少しココカラ社らの説明がなければ株主の方々も統合に向けた経営判断に納得がいかないのではないかと感じました。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。

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