スピークイージーとラーメンの革新的な融合、ROKC/NR

2019年11月09日 06:00

明治時代末期、港脇の倉庫街にカクテルで有名な店があった。

重い鉄の扉を開くと、葉巻やタバコの匂いが鼻孔を刺激し、欧州の紳士から水夫まで一緒になって、思い思いにグラスを酌み交わしている。紫煙がくゆる店内、カウンターで黙々とシェイカーを振っているのは、あご髭をたくわえた大和男児だ。横浜のホテルでオランダ人やアメリカ人のヘルプをしながら覚えた技は、本家を凌ぐほど。評判を聞きつけた者がひっきりなしに訪れ、店はなかなか繁盛しており、彼の額には玉のような汗が光っていた。

(カバー写真:ROKC/NR

…..なーんて、妄想が膨らんでしまいました。カクテルが日本に紹介されたのは江戸時代末期の1860年。オランダ人船長C・J・フフナーゲル氏が建てたヨコハマ・ホテルで(諸説あり)、その歴史の幕が開きました。当初カクテルは外国人オンリーでしたが、日本人がヘルプとして外国人バーテンダーについた事情もあって徐々に認識され、1868年(明治元年)には函館屋、1880年には神谷バーなどのバーが誕生。洋酒やリキュールからグラスに注いで頂くスタイルから、次第に現在親しまれるカクテルの様式で、日本人に愛されるようになりました。

前置きが長くなりましたが今回ご紹介するのは、西と東がカクテルで出会った明治時代をコンセプトとしたスピークイージーなカクテル・ラウンジ兼ジャパニーズ・ダイニングの「ROKC」と「NRです。

スピークイージーをテーマとしつつも、店名にはオーナー陣の大和魂と気概が込められています。Ramen, Oyster, Kitchen, Cocktailの略でROKCながら、CKを逆にした理由はCocktailこそ彼らのシグナチャーでありアイデンティティであるためなんだとか。2店舗目のNRはROKCにちなみROCK N’ ROLL,から、雪だるまのように転がりながら大きくなっていこう」との意味を込めたといいます。

ROKCは、のれんでお出迎え。カウンターとテーブル数席のカジュアルな空間。

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(出所:ROKC/NR

ROKCとNRで是非堪能して頂きたいのが、珠玉のカクテル群。バーテンダー陣、もといミクソロジスト達は、奇想天外な組み合わせとサービングで飲む者の心を、視線を、舌を捉えます。それもそのはず、彼らは泣く子も黙るNYのカクテルバーの名店、エンジェルズ・シェア(Angel’s Share)出身なんですよね。想像を絶する作品を数多くそろえるだけに、オープンから約3年半が経過したROKCはNY市内のベスト・バーに入っただけでなく、米国で最良のバー21店にも選出されました。

一度飲んだら、やみつきに!話題にも事欠かないサービングも魅力。

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(出所:ROKC/NR

日本人には馴染みの薄い140丁目と141丁目の間、ブロードウェイ沿いに佇むROKCは、30〜45分待ちは当たり前。ウエスト・ハーレム奥地と恐れるなかれ。白人と黒人、アジア人と白人、ヒスパニック系とアジア系・・・あらゆる人種が交差し、NYらしいサラダボウルでヒップな風景が楽しめます。家賃の高騰に耐え切れず、黒人以外の人種がハーレムに移り住んでいますから、時代は変わったものです。

ダイニングはというと、こちらのおススメはラーメン!カクテルと一緒にラーメンというのが、何とも革新的であり、確信的なフュージョンですよね。NY風にベジタリアン向けもご用意しております。私が訪れた時は、入店していた方々全員がラーメンを注文していらっしゃいました。NYでのラーメン熱は、未だ衰えを知らないようです。

しょう油味と海草ミックスの出汁に、ジューシーな豚脇腹肉、ガーリックと共に。

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(出所:ROKC/NR

そのほか、ゆず風味の枝豆といったスナックのほかフレッシュな生牡蠣、とろとろポーク・バンズ(豚の角煮まん)、さらにビールとしょうゆ、ゆずなどで味付けしたムール貝に綿菓子のセットなど、和を尊びながら洋風をプラスしてニューヨーカーをトリコにしています。

とろとろポーク・バンズ、食べる者を笑顔にさせてくれる逸品。

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(出所:ROKC/NR

ウエスト・ハーレムまで足を伸ばせるかな…と思ったあなた、ご安心を。系列店のNRが10月にオープンしました!2ndアベニューと1stアベニューの間、1stアベ寄りの75丁目にございます。ROKCはミレニアル世代を中心にあっという間にいっぱいになってしまいますが、75丁目とアッパーイーストサイドに構えるだけあって、メニューはROKCと同じでも客層はガラリと変わり、店内もグッと落ち着いたムード。客席数も格段に多いので、ROKCでは日常茶飯事な30分待ちなどは恐らく回避されるでしょう。

NR、華麗なるギャッツビーを彷佛とさせる趣き。

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(出所:ROKC/NR

菊池寛はかつて「酒ならばコクテール、コクテールならばミリオンオンダラー・コクテール、雑誌ならばわが文藝春秋」とのコピーを謳ったといいます。今なら、明治時代に横浜で産声を上げた有名ホテルグランド・ホテルのミリオンダラー・コクテールではなく、ROKCのカクテルを選んだかも?

*明治時代のカクテル文化など、詳細はこちらをご参照下さい。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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