世界で広がる中国に対するコロナクレームの行方

コロナの情報開示が十分ではなく、隠ぺいしたという理由で世界各地から中国への大訴訟合戦が始まっています。これはまだ始まりの段階でこれからさらに多くの国が訴訟に動く可能性があり、最終的にどんな賠償請求に積みあがるのか想像を絶する状態になりそうです。

flickr(Global Panorama、Gage Skidmore)

アメリカのポンペオ国務長官は諜報ルートから武漢の研究所がその問題の根源であるという膨大な証拠(significant amount of evidences)を持っていると発言、トランプ大統領もフォローしており、現在アメリカの州レベルの訴訟が国家レベルの激しいバトルになることが予想され、今度はそれが理由で株価が揺さぶられるという事態も生じています。

他にオーストラリア、ドイツ、フランスが動いており、感染者が急増した英国も訴訟に向けた検討を行っています。特にドイツについてはメルケル首相がもともと中国寄りだったとされる中で態度急変となっており、中国と蜜月の関係にあったから訴訟はしないというシナリオは通用しなくなるのかもしれません。

ではこのウィルスの根源は何だったのかですが、日経が「米国の情報機関を統括する国家情報官室(DNI)は新型コロナが『人工でも遺伝子組み換えされたものでもない』との見解を示しているが、発生源については結論を示していない」と報じています。この一文にもみられるように新型ウィルスが研究所内で人為的に作られたわけではなさそうですが、非常に強力なウィルスが何らかの形で漏れたにもかかわらず、中国はそれを黙っていた、英語でいうnegligence (過失)というのがシナリオのようであります。

ちなみにアメリカでの報道では「人間と実験室で作られたウィルスには通常では超えられない障壁があるが、それが(何らかの形で)野生で発生し『Zoonotic Spillover(動物由来感染症の波及)』が起きた可能性が高い」とみています。また、国土安全保障省は中国は1月初めにコロナの問題を意図的に隠蔽し、世の中に発覚する前に医薬品の輸入を増やし、輸出を減らすことで医薬品在庫を増やしたと報告しています。

では容易ではない国家間訴訟をどう乗り越えるのかですが、今回の欧米の動きを見ていると関税の引き上げや中国の在外資産の差し押さえが有力視されています。かといって一方的な差し押さえができるわけではなく、本来は長い裁判を通じて判断していくところをトランプ大統領は選挙アピールで政治バトルにもっていこうとしているようにも見えます。

これら一連の動きに関して様々な意見があるかと思います。私はそれ以前にこのコロナの終息宣言が出た時点でWHOをいったん解散し、機能、人事、体制を切り替えるぐらいの刷新が必要かとみています。以前から申し上げているようにWHOのテドロス事務局長は中国寄りの姿勢だけでなく、上記のアメリカ政府の分析が正しいなら「悪の片棒」を担ぐことで世界に向けた危機状況の発信を決定的に遅延させ、しかも本人はその頃、習近平国家主席と仲良く会談しているわけです。WHOが本当に危機を感じたのは欧州での感染が本格化したところであり、あまりにも作為的怠慢であったと考えています。

WHOテドロス事務局長(UN Geneva/flickr:編集部)

テドロス事務局長辞任要求は世界で署名活動が行われており、私も一票投じています。現在102万人以上に上る署名が集まっているとされ、針のむしろ状態にあると思いますが、コロナが沈静化していない今、辞めるに辞められないとされます。いづれ、辞任すると思われその際に中国の「盟友」は消えることになるのでしょう。

次に中国への訴訟と賠償請求がヒートアップすると欧米人の中国人への感情が悪化することで迷惑な懸念材料が出てきます。すでに白人がアジア人に対してヘイトクライムするケースが続出しており、日本人の多くも巻き添えを食らっています。当地の日本国総領事館からも警告の通達が在住者に発出されています。

折しも職を失った人だらけで街中が荒れ、ストレスを溜めた人が増えている中、白人が汚い言葉で罵る話は私も耳にしており、特に女性にその被害者が多いような感じもします。白人の一般人からすれば日中韓の顔の区別などつかない中(私だって年中、間違えます)、一様にヘイトされる居心地が悪い状況が生じてきそうです。

最後に中国にどう攻め入るのか、であります。アメリカは「決定的証拠」を少しずつ見せて世論を煽るとみており、中国としては非常にやりにくい展開にあるとみています。習近平氏にとって昨年一年は関税戦争対策で苦労し、今年1月15日にようやく第一弾の合意署名を行ったところでした。

今回は情報工作、隠ぺい対策といった民主主義国家からすれば最も非難される中国の特性を直球ど真ん中から攻め入るわけで果たして本当に防戦できるのか軽率に予想できない状態です。アメリカの矛先が習近平体制にあるとすればこの牙城が壊れるまで攻め続けるのかもしれません。

江沢民国家主席が03年3月に退任したのは、氏が国家目標を達成できなかったことがその退任理由ですが、SARSの蔓延も間接的にあったとされます。習近平氏は中国共産党結党100周年の21年までにGDPが10年比で倍増になることを掲げていますが、達成はまず不可能となった今、習近平氏の身の置き方が今後の焦点になるとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月5日の記事より転載させていただきました。