10月から消費税のインボイスの申請受け付けがはじまりました。これは2023年10月からはじまりますが、反対の声が出ています。よい子のみなさんにはむずかしいと思いますが、大事な問題なので最後のおまけで解説しました。
図1(財務省)
Q. 消費税って何ですか?
消費に税金をかける「間接税」は昔からありますが、日本の消費税はEU(ヨーロッパ連合)と同じ付加価値税です。これは1960年代にヨーロッパで始まったもので、それまでの物品税が商品の種類ごとに違う税率をかけるのに対して、図1のようにすべての商品・サービスの付加価値に一律の税率をかけるのが特徴です。
Q. どういうしくみで税金がかかるんですか?
たとえばみなさんがお店で1万円の洋服を買うと10%の消費税がかかりますが、お店は消費者から1000円の消費税をあずかるだけです。洋服を問屋(卸売業者)から7000円で仕入れたとすると、その利益3000円に10%をかけた300円を税務省に納税し、卸値に10%足して問屋には7700円払います。
問屋がメーカー(製造業者)から洋服を5000円で仕入れたとすると、それに10%足した5500円をメーカーに払い、利益2000円に10%かけた200円を納税します。メーカーは原価5000円の10%である500円を税務署におさめます。合計で500円+200円+300円=1000円の消費税をおさめるわけです。
Q. なぜこんなややこしい税金をかけるんですか?
所得税や法人税は、売り上げから経費を引いた所得に課税するしくみですが、これだと黒字の会社が売り上げを小さく見せたり経費を大きく見せたりして、赤字にすることができます。図2のように日本の会社の6割以上は赤字法人で、法人税をおさめていません。こういう会社からも税金をとるしくみが消費税です。
図2(東京商工リサーチ)
たとえば図1で、小売店が「卸値が9000円だったので利益は1000円で消費税は100円」と税務署に申告しても、問屋の請求書には「卸値は7000円」と書かれているので、うそがばれてしまいます。だから消費税は税金をごまかしたい自営業者にいやがられるのです。
Q. 消費税が「逆進的」だというのはどういう意味ですか?
貧乏な人は所得のほとんどを消費しますが、お金持ちは所得に対して消費が少ないので、貧乏な人ほど重くなります。
たとえば年収100万円の人が90万円消費すると、消費税を9万円はらうので、所得に対する負担率は9%ですが、年収1000万円の人が500万円消費すると消費税は50万円なので、負担率は5%です。このように所得が増えると負担が軽くなることを逆進的といいます。
Q. 逆進的な消費税は不公平ですね?
税務署が所得を100%捕捉していれば消費税は不公平ですが、実際には図2のように6割以上の企業が赤字(所得はマイナス)ということになっています。
中小企業の経営者や自営業者は所得をごまかしている人が多いので、所得の捕捉率はクロヨン(サラリーマン9割・自営業6割・農業4割)といわれています。給料から100%天引きされるサラリーマンにとっては、所得税こそ不公平な税金です。
Q. 消費税は何に使われるんですか?
消費税法の第1条2項には「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と書かれており、すべて社会保障に使うことになっています。図3のように国の社会保障に投入されている公費50.4兆円のうち、21.7兆円が消費税ですから、社会保障以外に使うことはできません(例外は教育無償化)。
図3(厚生労働省)
だから消費税がなくなると、社会保障に使われる公費に4割ぐらい穴があくので、社会保険料を上げるしかありません。社会保険料は今でも給与所得の約30%で、消費税よりはるかに重い負担です。これは超高齢化でふえるお年寄りの生活費を少なくなってゆく若い世代が負担する不公平な税で、60歳以上とゼロ歳児の生涯所得の差は1億円もあります。
Q. 消費税は社会保障目的税なんですか?
消費税の使い道は、法律で社会保障に限定されていますが、一般会計の財源なので、特別会計のように収支の独立した目的税ではありません。
大蔵省は本当は使い道を限定したくなかったのですが、増税するとき「社会保障の財源にする」というと政治的に通りやすいので、そうしただけです。一般財源に色はついてないので、目的税かどうかは大した問題ではありません。
Q. 消費税は法人税を下げるためにできたんですか?
日本で消費税ができたのは1989年で、それまでに何度も大型間接税をつくろうとして挫折したあとでした。大蔵省は、不公平で税金を集めるコストのかかる所得税から、とりはぐれのない消費税に変えようとしたのです。また法人税率は世界的に40%台から20%台に下がり、日本も下げないと企業が法人税の安い国に逃げていくので、下げたのは当然です。
Q. 消費税率を上げたら税収が減るというのは本当ですか?
うそです。図4のように1997年に消費税率を3%から5%に上げたときも、2014年に5%から8%に上げたときも、2019年に8%から10%に上げたときも、消費税収は増えました。所得税や法人税の税収が減ったのは景気が悪くなったからで、図4でもわかるように、ほとんど消費増税と関係ありません。
図4(財務省)
Q. なぜ消費税はこんなにきらわれるんですか?
毎日お店で払うので、だれでも負担しているとわかる一方、それが社会保険料という「隠れた税」の赤字を埋めていることがわからないためでしょう。消費税が不公平だとか逆進的だとかいう話も、所得税や法人税が穴だらけで、社会保険料が老人福祉の負担を若者に押しつける不公平な税だと知らない人が、政治家に踊らされているだけだと思います。
Q. インボイスって何ですか?
これは普通の取引でやりとりしている請求書のことです。たとえば漫画家が出版社から10万円の原稿料に消費税1万円を上乗せして11万円もらうと、その1万円の消費税は漫画家が(原価を引いて)税務署におさめないといけません。
ところが漫画家の売り上げが1000万円以下だと「免税事業者」になるので、この1万円は益税としてポケットに入れることができます。これはおかしいので、漫画家も請求書を出して税額を記録し、出版社からあずかった消費税を国におさめるのがインボイスです。
立憲民主党やれいわ新選組は「インボイス反対」といっていますが、これは今まで国におさめるべきなのにポケットに入れていた税金をはらうだけなので筋違いです。このようにお金の流れをガラス張りにして、みんなが公平に税金を負担するのが消費税のいいところなのです。
Q. 輸出企業は消費税をはらわなくてもいいって本当ですか?
うそです。たとえば自動車メーカーは部品メーカーに消費税をはらい、消費者から受け取りますが、輸出品の消費税は国内で受け取れません。これだと自動車メーカーが部品メーカーにはらった消費税の一部が損になるので、税務署から還付してもらうわけです。だから自動車メーカーは得も損もしていません。