ベネズエラ依存のキューバ、マドゥロ大統領失脚で迎える運命の分岐点

最初はソ連の寄生虫となったキューバ

ベネズエラの今後の行方を深刻な眼差しで見守っているのが、キューバの国家指導者層だ。

今回の大統領選挙の結果は正当性に欠けるとして市民が抗議デモをしている。それが国家騒動のレベルにまで発展して、マドゥロ大統領が政権を放棄せねばならないような事態になると、キューバはパトロンを失ったかのように国家存亡の危機を招くのは必至だ。

キューバはカストロ兄弟によるキューバ社会主義革命以後、経済的に発展したことはなく、寄生虫のごとく他国に依存して国家を存続させて来た。最初にその対象国となったのはソ連だ。1960年から1990年までキューバはソ連に依存して来た。

例えば、サトウキビを加工して生産した砂糖をソ連は市場相場の10倍以上の価格で購入。その一方で、ソ連は原油を市場価格の半額でキューバに輸出していた。ソ連にとって、キューバは米国を牽制する意味で重要な国であった。だから損出を覚悟してでもキューバとの関係維持に務めた。

ところがソ連が崩壊すると、国家を支える産業を発展させなかったことから国のGDPは35%もマイナス成長となった。

次にキューバはベネズエラの寄生虫となった

2000年に入るとキューバに救世主が現れた。それはウーゴ・チェベスによって政変を起こしたベネズエラだ。

チャベス氏が大統領になると、反米主義を唱え、近隣諸国を味方につけた。その為の餌にしたのが原油だ。例えば、キューバには日毎5万3000バレルの原油を供給することでカストロとチャベスの両氏が合意した。それがさらに増加して9万3000バレルまで増えた。キューバでは供給された原油を国内消費に充て、またそれを精製して輸出に向け外貨を稼いだ。それに砂糖や葉巻などの僅かな輸出も手伝って、キューバ経済は回復した。

キューバはベネズエラからの原油の支払いに金銭ではなく、医者、教師、エンジニアなどをベネズエラに派遣して相殺した。その派遣された人の数は延べ20万人とされている。(8月5日付「エコノミア・ディヒタル」から引用)。

原油価格の下落でベネズエラ経済は大きく後退

ところが、原油の国際価格が下落し始めると、キューバと同じく、国内の産業の発展を図って来なかったベネズエラの経済は次第に後退して行った。また、マドゥロ氏が大統領になれたのも、キューバ政権が工作した結果である。それを知っているマドゥロ大統領は国の経済が後退する中でも、キューバへの原油の供給を嘗てほどの量ではないが続けている。

原油だけの輸出に依存して来たベネズエラでは原油価格の下落と、さらに多くの企業の国営化から赤字経営が目立つようになり、ベネズエラ経済は深刻な後退を余儀なくさせられた。700万人以上が国外に脱出し、同じく700万人が極貧に喘いでいる。それでも、マドゥロ氏はキューバに原油を送っているのである。

いかさま選挙でポストを維持したマドゥロであるが

このような事態の中、今回の大統領選挙でマドゥロ氏が勝利したというのは国内外で偽りであるというのが実証されつつある。国内で市民の抗議デモがさらに発展すると軍部からもそれに同調する動きが起きるかもしれない。

今後の成り行きは全く不明である。しかし、確かなことはマドゥロ大統領の政権放棄は時間の問題になりつつある。そうなると、キューバはまたソ連が崩壊した時と同じような事態に追い込まれることになるであろう。

そうでなくても、70%の食料を輸入に頼っているキューバでは外貨不足で食料が輸入できない状態にある。それに加えて、救世主であるマドゥロ大統領の政権が崩壊する事態になると、キューバの国家そのものが危機に見舞われ、政権維持に困難を伴う事態が発生するであろう。