まるで民主党政権下に続いた「決められない政治」の鬱憤を晴らすかの様に、安倍内閣が喫緊課題を次から次へと舵切している。
日米首脳交渉を成功裏に纏め、結果、「外交」と「安全保障」の進むべき方向性を明確にした。
その結果、アジア・太平洋地域での「通商」の基軸となるTPP参加は必然であり、先週交渉参加を表明した訳である。
結果、日本に取っての積年の課題である農政問題も解決に向かうに違いない。
そして、朝日新聞が今朝伝える所では、司法試験3000人枠撤廃へ 需要伸びず「非現実的」との事である。
安倍内閣にて問題山積の法科大学院を閉校し、以前の制度に戻してくれるものと期待している。
法科大学院の問題については以前のアゴラへの下記エントリーで詳細説明しているので、これを参照して欲しい。
今回の朝日新聞記事は、新司法試験の合格者数が低迷している事や法科大学院の志願者数が激減している事を背景に挙げているが、これは問題の本質ではないと思っている。
このブログを参照する限り、「裁判官」、「検事」共に任官数はちっとも増えていない。「検事」は寧ろ減少している。
刑事訴訟法に基づく、立件(検察)、公判(裁判所)であったり、民事訴訟における口頭弁論の件数が増える事はないとの推定に基づくもとの思われる。
こういう状況で、弁護士のみを増やしても当然仕事にあぶれると推測され、事実、昨年度は司法試験に合格し司法研修を終え弁護士資格の取得にまで至りながら、何と546人もが弁護士登録をしていない。
<結論>
65期からの判事補任官92人、検事任官72人、12月20日の一斉弁護士登録時点での未登録者は546人(2012年12月28日)
懇意にしている弁護士に聞いた所、弁護士登録費用が捻出出来なかったり、或いは、その後の弁護士会会費の納入が困難という理由で登録していないという説明であった。
更に、驚いたのは司法研修を終了しながら未登録者の546人の消息である。仮に、弁護士資格を取得した上で企業に職を得、企業法務で活躍しているならそれはそれでありだと思う。しかしながら、大部分が消息不明でプータロー、ニートも充分にあり得るとの説明であった。
これ程の人材の浪費は日本の歴史を振り返っても他にはない様に思う。そして、これが法科大学院を閉校し以前の制度に戻すべきと主張する根拠である。
誤解して貰っては困るが、私は決して法律家の存在を軽視している訳ではない。寧ろ、格段に重要になると思っている。具体的にはTPPを参照すべきであろう。
今世紀の日本の繁栄のためにはTPP加入は避けて通れない。そして、大事な事は国益に配慮し少しでも交渉を有利に進める事である。
TPP交渉の本質は法律議論であり、交渉を有利に展開するためには組織化された「法」の専門家の活躍が不可欠と思う。
マスコミや野党の政治家の多くは、今後、「今の政府の力では米国と対等の交渉はまずできないだろう。押し切られてしまうのではないか。(岩手県でも)農業は壊滅的な打撃を受ける」の如き妄言を吐き、国民を不安に陥れるに違いない。
これに対応する意味でも、安倍政権はTPP交渉における法律家の効率的な活用という、現実的、具体的施策で国民を安心させ、交渉を有利に展開すべきと思う。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役