文部科学省が『情報活用能力調査(高等学校)調査結果』を1月17日に発表した。「見慣れない状況で、複雑な情報を、複数の条件に合わせ,分析的にとらえ評価することができる」生徒は約1割で、「見慣れた状況で、単純で整理された情報を、明確な一つの条件に合わせて用いることができる」程度しかない生徒が約3割を占めている。情報の海の中から的確に探せなければ情報は活用できないのだが、そのような能力を持つ生徒は限られる。
文部科学省の発表には『結果概要』が添えられている。そこには、「関連付け」「取捨選択」「優先順位付け」「振り返り」ができる生徒、ICTを道具として役立てようとする生徒、インターネット上でのルール・マナー意識が高い生徒ほど得点が高い、といった生徒の側の傾向がいくつか示されていた。
しかし、『結果概要』には学校側の傾向については一切言及がない。これは統計的な差が見出された項目が少なかったためかもしれないが、報告書本文の第3章「情報活用能力の背景要因」を読むと重要な課題指摘をしていることに気付く。
情報活用能力の育成を意識した教育をほとんどの教科で行っていると高校長が回答した高校と、特に行っていないと回答した高校の間に、統計的に有意な差が見出された。前者の高校では平均点が514点で、後者では472点だった。統計的には有意とはならなかったが、「教育用コンテンツなどソフトの整備が不十分である」「情報活用能力の育成の指導事例が不足している」などと、学校側の課題を指摘した生徒が多数いた。要するに、情報活用能力の育成を意識した教育を行えば成績は上がるが、多くの高校は対応が不足している、という結果である。
それでは、情報活用能力の育成を意識した教育は科目『情報』で行うだけ、あるいは教員個々に委ねているという、普通の学校の生徒は情報活用能力をどこで身に着けているのだろうか。これも第3章に書かれていた。家庭でパソコンを利用している生徒は、利用していない・持っていない生徒よりも得点が有意に高い。また、低年齢で使い始めた生徒ほど、また、ゲームやメール・SNSだけでなくインターネット検索を利用する生徒ほど、平均得点がそれぞれ統計的に高くなっている。
要するに、高校における情報活用能力の教育は不十分で、家庭で積極的・主体的に利用する、あるいは利用できる生徒が高得点になっているわけだ。家庭任せの状況を改めるように教育方法を変革しないかぎり、家庭状況によって情報活用能力に差が付く状況が続く恐れがある。
今回の調査結果は、現行教育に潜んでいた大きな問題点を露わにしたのである。