レナウンのバーゲンの目玉は会社その ものだった - 大西宏

2010年05月24日 13:27

レナウンは当社が公表した情報ではないと否定していますが、レナウンが数十億円で中国の繊維メーカー「山東如意集団」(山東省)の傘下にはいるという記事が先週流れていました。おそらく記事通りの動きなのでしょう。
ずいぶんお安いセールだと感じますが、アパレルは売れないものはたたき売るというのがあたりまえなので、会社もバーゲンに出たということでしょうか。中国企業の日本企業買収としては、レナウンの企業規模が最大だそうですが、あまり驚きはありません。


IBMがパソコン部門をレノボに売却した当時のほうがはるかに衝撃的でした。その後は、ラオックスも中国の蘇寧電器集団の傘下に入ったとか、比亜迪汽車(BYDオート)が金型大手オギハラ(群馬県太田市)の工場を買収するという報道もあり、いよいよそういう時代になってきたのだという思いのほうが強くなってきます。

さて、レナウンもかつてはブランド企業でした。今はダーバンと合わせても1290億円の売上しかありませんが、1990年代には旧レナウンだけで2000億円を超える売上高がありました。その面影はありません。

レナウンといえば、「ドライブウェイに春がが来りやあ、イェイエイェイエ、イェイェイ。プールサイドに夏が来りゃあ、イェイエイェイエ、イェイェイ。レナウン、レナウン、レナウン娘がわんさかわんさか、わんさかわんさ。イェイイェイイヶイェ」というコマーシャルソングが浮かんできます。
このCMがはじまったのは60年代。まだ日本が高度成長期のさなかでした。その後も、さまざまなバージョンで繰り返し使われ、90年代まで使っていたようです。
アーノルド・パーマーの傘のマークのポロシャツもありました。それもやがてダサイ、オジサンの代名詞となってしまいます。またレナウンの子会社ダーバンで、アランドロンを起用し、”D’urban, c’est l’elegance de l’homme moderne. “(ダーバン、現代の男のエレガンスだ)」とアランドロンのささやきで終わるコマーシャルが、人々を魅了したこともありました。きっと今でも脳裏に焼き付いている人が多いことと思います。

しかし、コマーシャルは印象に残ったのですが、ビジネスそのものはどんどん凋落し続けてきたというのが現実です。
レナウンの不振は、今に始まったことではなく、2000年以降は、ダーバンを吸収したため、瞬間風速で売上規模が大きくなったり、営業利益がでたことはあっても、業績は低下の一途を辿り、営業赤字は続いていました。

時代変化への乗り遅れです。変わらなければならなかったにもかかわらず変われなかった結果で、自己変革できないことが、いかに経営リスクとなってくるのかという教訓をレナウンは残したように思います。

アパレル業界は、流行に左右されるリスクが高い業界です。いくら売上高が大きくとも、売れ残った在庫をかかえるとそれが経営を圧迫してきます。かつてのVANも倒産した時でも、どんどん商品は売れていたそうですが、在庫が膨れあがってしまい、潰れてしまいました。

90年代以降は、激しくなった流行変化にどう対処するのかがアパレル業界大きなテーマとなり、売れ筋をいちはやくとらえ、追加生産を集中させていく、製造小売りのビジネスモデル(SPA)への転換がはかられてきました。

ライバルのワールドやオンワード、またファイブフォックスなどの企業が、製造小売りのビジネスモデルの転換していくのに、大きく乗り遅れてしまったレナウンが競争力を失っていったのは必然だといえます。さまざまなしがらみを捨てきれずに思い切った事業転換ができず、ずるずるきてしまったということでしょう。

またブランド戦略についても教訓を残しています。たとえ、高いブランド価値を築いたとしても、商品やサービス、また事業そのものが時代変化に対応できなければ、ブランドも陳腐化し、やがて事業そのものも衰退していくのです。変革から目を背けることがいかにビジネスを衰退させるかを物語る出来事となりました。

さらに今や、アパレル業界は、グローバルな競争時代に突入してきています。世界のアパレル業界が日本にも上陸し、価格競争が激しくなってきました。低価格でも利益をだそうとすると、いかに原価を抑えるかが焦点になりますが、そのためには規模がものをいいます。

しかし、日本のアパレル業界の多くは、市場をきめ細かくセグメントし、それぞれのセグメントにブランドを投入するというスタイルを取ってきました。そのほうが消費者の嗜好に合わせた展開が取りやすく、あちらのブランドが駄目でも、こちらのブランドが伸びるというふうにリスクを小さくできます。しかしそれは同時に原材料調達、製造の分散となってきます。

単一のブランドで、企画から調達、店舗オペレ-ションまで統合し、銀座松坂屋を埋めつくす幅広い品揃えを誇る黒船に、このままの多ブランド分散型のマーケティングで対抗できるのかは疑問です。

なんらかの戦略転換が迫られているものと思います。ブランドの統合は避けられないとしても、これまで築いてきた個性あるブランド展開と両立する道はあるのかというのが焦点でしょう。

いずれにしても、いくつかのブランドの柱で、それぞれのブランドの規模を拡大することを目指さなければ国際競争に勝てないということになりそうですが、いずれにしても、規模を確保しようとすると、海外展開が鍵となってきます。

国際化で規模を支えるなら、日本ブランドの人気が高い中国を中心としたアジア市場を攻めることが重要になってくるでしょう。中国の繊維メーカー「山東如意集団」(山東省)は、日本のブランドを利用してアジアの市場を広げる自信があるからレナウンを傘下に収めました。

そういえば、ゼネリックの医薬品メーカーで、インド企業に会社を売却した会社がありました。それがニュースで流れ、その会社のオーナーの方にお目にかかったときに伺うと、ゼネリック医薬品はアジアでは大きい市場であり、伸びているので、会社を伸ばすためには、販路を開拓するパワーのあるインド企業に売った方が良いと判断して売却したということでした。

レナウンもそういうことでしょうが、いずれにしても多品種少量生産,多ブランド展開は、デフレの時代で効率性が競争の焦点となってきたなかで、あちこちで破綻しはじめていることは事実です。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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