地域医療の光と影!医師の羅針盤とは何か?

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「自衛隊の医官で始まり、防衛省退職後、次の就職まで2年くらい、いろいろな仕事をしてみたいと飛び込んだフリーランスの世界。今は、年間200回以上飛行機に乗って、時には新幹線で、全国の僻地の病院を飛び回る「空飛ぶドクター」となりました。

本日は、フリーランス医師の奮闘記を紹介します。

空飛ぶドクター~ママさんフリーランス医師の僻地医療奮闘記~』渡辺由紀子(著)かざひの文庫

若手の力の重要性

著者の渡辺さんは旅行が趣味で、知らない場所を訪れて、その土地の空気を感じ、人や文化を知るのが好きだったそうです。フリーランス医師となって、全国あちこちに行けることも性にあっており楽しいことだったと言います。

「父母が東京出身だったため、小学生の頃、夏休みや冬休みに友達が祖父母の住む『田舎』に行くのを羨ましく思っていました。それが、大人になってから、フリーランスの医師として働くようになって、馴染みの「田舎」のような町がいくつもできた感じです。遠方から交通費を負担してでも医師を呼ぶのは、なかなか医師が定住しない隣地が多いです」(渡辺さん)

「わたしの場合、趣味と実益を兼ねて、僻地での仕事をしていくうちに、やり甲斐の面からも、僻地医療に対して情熱を持つようになりました。当初『とにかく医師の仕事を広範囲に色々とやってみたい』だったわたしの仕事スタイルが、僻地医療をライフワークにする方向に変わっていったのです」(同)

渡辺さんは、僻地医療を活性化させるためには、若い力が必要不可欠だとも言います。

「今は、臨床研修制度が変わり、『地域医療実習』を必ず受けることになりました。若い医師たちが数か月、僻地の病院で研修するのです。将来的に、在宅医療に携わりたいという先生もいます。そういう先生たちは、喜んで地域実習を受けており、頼もしいなと感じます。稚内の病院では、若い先生が2年ごとに研修に来ています」(渡辺さん)

モラル教育の必要性

医療における課題は様々です。僻地医療も重要ですが、筆者はモラル教育が重要ではないかと思います。とくに、医師と関わる関係者のモラル改善は優先すべき事案です。

10年以上前の出来事になります。筆者の祖父母が90歳を過ぎて認知症を発症した際、要介護5級と評価されました。家族だけで介護することは困難なことから、在宅医療とホームヘルパーの派遣を要請します。

数カ月が経過してからあることに気が付きました。祖父は郵政省を定年退職しており、退官時に金時計を贈呈品としてもらっていましたが無くなっていたのです。

ほかにも、希少価値の高い、切手シート、切手、古銭、古貨幣、エラー切手、エラーコイン、般若・おかめの面などもすべて無くなっていました。金庫の中に入れていた現金や有価証券、金塊なども全て消えていました。

驚いたのは、新興宗教団体の入会申込書と、資産をお布施として提供する旨が書かれた書類を発見したことです。被害額は数千万円にのぼった可能性もあります。

関係者に照会したところ、「日頃のお礼に受け取ってほしいと言われて、仕方なくもらった」という回答でした。日常会話が不可能で、すでに家族を正しく認識することができない状態です。虚偽であることは明白でした。

リスク対策が身を守る

警察に相談したものの介入には消極的でした。録画など決定的な証拠が必要だったのです。その後、関係者とは連絡がとれなくなりヘルパー派遣会社は倒産します(事件発覚を恐れた結果の計画倒産と判断しました)。

素晴らしい志をもつ医師も大勢いると思います。しかし、なかには人の弱みにつけ込む、似非医師やトンデモヘルパーがいることも事実です。センシティブな問題だからこそ、このよう問題にも向き合うべきではないかと思います。

本書ではフリ―ランス医師ならではの、自由な論評を目にすることができます。これらの論評からいまの医療業界における課題が見えてくるかもしれません。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

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