一番恐ろしゅー敵は、景気減速じゃろがぁ。- 知民由之

2010年07月23日 11:46

7月18日放送のNHK大河「龍馬伝」第3部は、この一話をもってそのまま映画にしてもおかしくない、聞きしに勝る傑作であった。その中で龍馬の言った「こんな狭い部屋の中で、薩摩と長州が、刀を抜きおうて、、、、一番恐ろしゅー敵は、異国じゃろがぁ」と叫ぶシーンは、そのまま、政府と日銀の今の置かれた関係にダブって見える。


デフレに加え、株安、円高が進行している日本経済は、金融コンディションが極めて引き締め的になっていることは、日銀も十分理解しており、出来れば株安や円高に働きかけて、金融コンディションを和らげたいのが本音であろう。しかし、長い間に培われた、日銀の政府に対する不信感によって、政府が有効な経済政策をコミットできない状況で、日銀だけが残り少なくなった政策オプションを行使してしまうことは許されないのである。

日銀の使用できるオプションはいくつも考えられる。例えば、銀行保有株式の購入再開である。日銀は、これまで2002年と2009年に銀行保有株の購入を実施し、2009年の買い取りはこの4月末に終了した。しかし、今年末に合意される新バーゼル規制によって、銀行同士の持ち合いに対し規制がかかると見られており、それ以降も、株式市場での銀行の持ち合い解消売りは断続的に出ており、プルーデンス政策の意味合いからも、政府との連携なしでも、真っ先に採用すべきオプションである。しかし、この政策でさえも、日銀担当者によると「株買いは、一度やったら止められないし、出口も見えない」という、政府に対する不信感によって、おいそれと踏み出すわけにはいかなくなっているのである。

また、時間軸効果の復活により円高に働きかける政策や、企業金融の指標金利のデファクトスタンダードが、日銀の政策金利ではなく全国銀行協会のTIBORになっているため TIBORを引き下げさせることによって実質的な金利引き下げ政策を実施する余地すら実はある。

考えれば、まだまだやれることはそれなりの数になるが、それらは、日本経済が立ち行かなくなったときの最後の政策オプションとして残しておきたいもので、政府が有効な経済政策も打たないのに、日銀だけが先行して数少ない政策オプションを使う訳にはいかないという打算が働いている。

しかし、日銀にとっても政府にとっても「一番恐ろしゅー敵は、景気減速」であり、このまま円高が進み、株安が進んでしまえば、否が応にも、政府は財政拡張に、日銀は金融緩和に動かざるを得ないことは自明であり、そろそろ、坂本龍馬の出現で、日銀と政府が同名して「倒デフレ」に動き出してくれることを、国民としては、静かに祈るしかない。
(知民由之 機関投資家/リスク管理責任者)

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