電子書籍は紙の書籍の味方である

2010年10月01日 00:30

今年の3月に電子出版社/電子書店、アゴラブックスを立ち上げて半年、やってみなければわからないことがいろいろわかってきた。同じようなビジネスを考えている人も多いと思うので、簡単に総括しておこう:

  • 「ベンチャー」はもはや冒険ではない:アゴラブックスの資本金は400万円。サーバはGoogle Appsを使うので、維持管理費は年6000円/アカウント。ウェブサイトの開発にはコストがかかるが、固定費のほとんどは人件費だ。ムーアの法則とクラウド・コンピューティングのおかげで、起業のリスクは小さくなった。サラリーマンの貯金でも起業できるし、危なくなったら撤退しても大怪我はしない。

  • 電子書籍はもうからない:本を端末で読む習慣は日本では定着していないし、アゴラブックスはiPadに最適化したので、肝心の端末が数十万台しか売れていない現状では、電子書籍の販売部数は紙の本の数十分の一だ。だから大手出版社のように年収1000万円のサラリーマンがやったら、確実に赤字になる。役員・従業員あわせて4人のアゴラブックスでも、他の事業とあわせて赤字が出ないという程度だ。
  • ボトルネックは出版社との交渉:電子出版は大したビジネスではないのに、出版社は非常に警戒して経営会議などに上げるようだ。このため、本をスキャンして電子化してアップロードする時間は1日程度なのに、出版社のOKを取るのに数ヶ月かかる。著作権法上は出版社に許諾を得る必要はないが、アゴラブックスでは出版社に敬意を表して許諾を取り、手数料も払っているので、この法的根拠のない法務費用が大きい。
  • 電子書籍はプロモーションの手段:日本ではアマゾンやアップルのような大手の電子書店がないので、電子書籍が紙の書籍の売り上げを減らすほど売れることは考えられない。むしろクリス・アンダーソンの『FREE』が電子版を公開してベストセラーになったように、「ソーシャルメディア・マーケティング」の効果のほうが大きい。経済学的にいうと、今のところ電子書籍は、紙の本の代替財ではなく補完財なのだ。

そんなわけで著者におすすめしたいのは、紙の本の内容見本をかねて電子書籍を出すことだ。アゴラブックスのAJAXリーダーは違法コピーはできないし、これを見て紙の本を買う人も多いので、電子化によって紙の本の販売部数は増えると思う。すでに出版されている本の場合は、著者+版元に売り上げの50%を還元する。絶版になった本を著者が出す場合も同じなので、窓口までお問い合わせください。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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