中国はネットで政治が変わるかもしれない

大西 宏

中国のネット人口が昨年11月に4億5千万人に達し、世界でトップになったようです。前年同期比で20.3%増という勢いです。政府のフィルタリングなどによる規制と、それをかいくぐって情報発信するネットユーザーのイタチごっこ状態ですが、いつまで規制が効くのかが疑問です。

ネットユーザー人口4億5千万 世界トップに=中国 – (大紀元) :


同じ大紀元に面白い記事がありました。胡錦濤総書記の慰労訪問ニュースが中国ネットで笑い話になっているというものです。
“>胡錦濤総書記の慰労訪問ニュース、中国ネットで笑い話に – (大紀元) :

年末に、胡錦濤・総書記が北京市の低所得者層の家庭を慰労訪問し、政府が提供しているアパートの家賃を質問したところ、77元(約1000円)だと答え、政府の支援政策に感謝したというニュースが流れたものの、北京の実際の家賃相場は、トイレや風呂なしの10平方メートルのワンルームですら1000元で、この家庭が借りている2Kだと2000元~3000元だというのです。

中国の経済成長はまだまだ続くと思います。昨年に中国で出願された特許件数が40万件と予想され、日本での出願された特許件数予測の35万件をはじめて上回るようです。特許の中味や質はともかく、開発力もついてきたということでしょう。同記事によると、米国のシンクタンクは本年に、研究開発費でも日本を抜き、米国につぐ世界第二位になると予測しているようです。
さらに、いまは世界の製造工場でしかない中国も、徐々に中国ブランドで自らマーケティングを展開する動きもでてきています。
特許出願も中国優位に 10年見通し、日本での件数上回る – SankeiBiz(サンケイビズ) :

しかし問題は国内での歪がではじめてきていることで、2008年の金融危機後に中国政府が打ち出した4万億元の経済刺激対策の後遺症がではじめているようです。なにか日本とよく似た構図ですが、地方政府の負債が急増し、中国の銀行が地方政府の資金調達団体に行った融資7兆6600億元(1兆1300億ドル)の約23%がデフォルト(債務不履行)の危機に直面しているとロイターが報しています。
中国地方政府の債務、約23%にデフォルトの危険=週刊誌 | Reuters :

さらに景気刺激策によって560万人の長期雇用、5000万人弱の非正規雇用が創出されていたのが、今年はプロジェクトが終了するため、数千万人もの人々が職を失う可能性があるというのです。

レコードチャイナ:中国の2011年問題=数千万人失業の危機―シンガポール華字紙 :

インフレ、住宅価格の高騰、地方での大学生の就職難、さらに地方経済の破綻や失業が重なると、国民の不満がいつ爆発してもおかしくありません。その不満がネットを通して広がり、なにかの小さな事件が発火点となって、政治体制を揺るがすような動きが起こっても不思議ではありません。

冒頭の家賃77元のニュースがネットで笑いものになっているという話も、そういった脈絡で見ると、なにかが起こる予兆かもしれません。

日本も政党の賞味期限が切れ、政党難民が急増してきていますが、中国共産党も賞味期限切れということでしょうか。それでもビジネスで先進国にキャッチアップしようというエネルギーは消えないとは思いますが。