大学というバブル

2011年02月15日 10:23

井上さんの記事を少し補足しておきます。「教育に外部効果がある」というのは古い話で、前にも紹介したハーバード大学のPritchettなどの行なった世界銀行の調査では、教育にはマイナスの外部効果があるという結果が出ています。図のように各国を比較すると、教育投資(縦軸)と成長率(横軸)にはまったく相関がありません。教育(特に大学教育)は生産人口を浪費して、成長率を下げている可能性があるのです。

pritchett


個人の教育投資が大きいのは、教育の私的な収益率が高いからですが、労働生産性や成長率に貢献しないということは社会的には浪費であることを意味します。読み書きなどの基礎的な教育は重要ですが、労働生産性に貢献するのは中学ぐらいまでの教育で、大学教育は無意味(あるいは社会的にはマイナス)だというのが、多くの経済学の実証研究の結果です。Pritchettは、大学教育を(非生産的だがもうかる)海賊にたとえています。

したがって現在の日本のように高等教育が過剰になっている状態で、国立大学や私学助成に公費を支出することは正当化できない。大学教育への投資は私的リターンが高いので、奨学金のような貸し付けで十分です。欧米では学部卒の収益率が低くなり、修士でないといい職につけなくなっていますが、これはシグナリング効果を求めて学歴が過剰になるバブルの一種で、日本が「大学院重点化」で追随すべきではない。

世界的にも高等教育の見直しが行なわれており、イギリスのキャメロン首相は教育への政府支出を大幅に削減する方針を打ち出しました。公的支出は、効果の高い幼児教育や、労働者の再訓練のための専門学校や専門職大学院などに限定すべきです。

もちろん研究機関としての大学は必要ですが、これは基本的には学問を目的とする娯楽の一種で、生産性とは関係ありません。公的助成がなくなれば大学バブルは崩壊し、現在の1割ぐらいの(適正な)規模に縮小するでしょう。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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