就活はグローバル化で臨界点へ ‐ 鈴木和夫

2011年03月07日 11:06

人は臨界点に到達した時にどんな行動を取るのでしょうか。2月下旬、就活を始めたばかりの鹿児島大学の男子学生は信じられない行動を取りました。学生が長距離バスを乗っ取り横転させ、殺人未遂で捕まったのです。エントリーシートの締め切りが迫っていたと伝えられています。まさに臨界点を越えていたのでしょうか。


水など圧力や温度などを変えて臨界点を超えると、もはや液体、気体の区別がなくなりメルトダウンします。これが臨界状態です。男子学生の精神状態もそんな状態だったのでしょう。報道によると、商社志望で成績も良かったらしい。どこで最高刑は死刑まである殺人未遂という重罪を犯すスイッチが入ったのでしょうか。 昨年に続き今年も大学生には頭の痛い就活シーズンがピークを迎えつつあります。

就活失敗で自殺するのは男性が9割

一方で、若者の未就業者の自殺が増えているニュースが流れました。2010年に就職に悩み自殺した20代の153人のうち9割は男性だったそうです。理由を詳しく調べなくてはいけないですが、こうした流れは臨界点を超えたから起こっているように思えます。

そして、今年の就活はこの臨界点に近づいていると思います。頭を悩ますもう一つに最近やたら取り上げられる企業のグローバル化の動きがあります。実は大手広告会社の2012年採用では、こんな募集条件が書いてあります。

「グローバル採用を強化したいので次のような学生を求めます。外国語ができる。英語、中国語、スペイン語、高度デジタル人材を求めます。今後は、成長著しいBRICsなどでのビジネスの拡大を目指します。グローバル・ビジネスに関心がある方。特に英語、中国語、ポルトガル語、ロシア語に堪能な方。海外からの受験や、外国語による受験も一部で可能です。また高度デジタル人材の募集もします。デジタル領域のエンジニア、プログラマーとして活躍を希望される方です」

こうしたメールが来ると、就職活動はむずかしくなります。これでは日本に生まれ、普通の学生生活を送って来た人は、どれにもあてはまらずどうすればよいか、頭を抱えるのではないでしょうか。高い語学レベル、高度なデジタル技術を学べる大学がいくつあるでしょうか。

こうしたことは広告会社に限らず、今年の就活では、企業のほとんどがグローバル採用を強めています。文系学生に人気がある金融界の就活にもグローバルの波が襲います。最近、金融の三菱UFJ銀行が新規採用を大幅に増やすニュースが流れました。よく調べると、まずアソシエイト採用と呼ばれる一般職を2倍以上増やし、アジアでの覇権を握るためにグローバル人材を獲得したいとしています。みずほ、三井住友といったメガバンクも三菱にならいます。

証券大手の野村証券はリーマンショックの時にはリーマンのアジアン部門を買収したため、外国人比率が1割と高まっています。 大和、日興もこれに続きます。つまり、金融界ではリーダーシップを握る企業がグローバル化のために人材採用方針を大きく変えるためにさらに就活は、混迷を深めると思われます。

しかし、これまで大学教育はどれだけ、グローバルに対応してきたでしょうか。まず上げられる大学の英語教育で、一般教養から専門教科まで講義を英語で対応できる大学がいくつあるのでしょうか。ほとんどの大学生は、グローバル対応のために上げられたハードルの前に立ちすくんでいるのではないでしょうか。

経済学者が予想した日本の就活

かつてノーベル経済学賞を受けたレスター・サロー氏がこう予想しました。日本人学生はアジアの大学生の下半分と競争することになる、と。上半分は欧米と自国企業を目指すのでしょうか。グローバル採用はまだ始まったばかりですが、今後、日本の学生はアジアの大学生と本格的に競争することになるというのは当たっているでしょう。

そこで、アジアの同学年の学生はどれだけいるのでしょうか。実は調べると、中国、インド、韓国、インドネシア、フィリピンなどだけでも1000万人を超えます。その半分ですから、500万人以上になります。彼らは英語のほかに母国語も話し、さらにハングリーでやる気も抜群にあります。

最近、世界的に大学生の企業分析コンテストを毎年行っている日本CFA協会によると、今年度のアジア大会では、昨年はフィリピン、今年はタイの大学が優勝したそうです。日本代表となって敗れた筑波大学の教員は、各国の学生は驚くほど、日本よりアグレッシブで優秀だったと感想を語っています。

日本の教育制度を見直す必要性

もうすでにおわかりかもしれませんが、日本の大学に欠けているのは、グローバル人材になる基礎的素質を備える教育システムです。現在の教育が急激なグローバル需要に対応できれば、就活の臨界点を大きく高めることが可能になるでしょう。今後、日本の学生はアジアの下半分の人材、つまり、アジアの下半分学生、約500万人との競争で勝てるかどうかのなのです。そして将来はアジアの中で待遇面でも同化すると思われます。

今回のポイント

  • 日本の就活は、グローバル化でハードルが上がっている
  • 今後、アジアの人材と競争、待遇面でも同化するだろう
  • <アジア各国の就活生数 資料:筆者>
    中国630万人
    韓国62万人
    シンガポール6万人
    インドネシア60万人
    フィリピン32万人
    インド260万人
    日本54万人
     
    (鈴木和夫 ジャーナリスト‐MBA diploma)

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