震災復興のシナリオづくりに向けて(続編) - 村林 正次

2011年04月19日 11:35

先日披露させていただいた「震災復興シナリオづくりに向けてのシナリオ」の続編です。
全体像の構築は詳細な被災の実態把握データ無しでは出来ないので、まずは、ランダムですが、いくつかの個別の提案の主旨をまとめてみました。
これは全国総合計画から国土形成計画までの一連の流れや首都機能移転や近年の都市再生政策等が基本的な知見として必要ですが、それら無くしても構いません。
まずは、地域経済の最大の課題である漁業再生と計画・事業実践部隊としてのネイバー・ワークス・ジャパンについてです。

【漁業振興のための漁船ファンド】
先に、「第二の故郷創生」案を提示しましたが、現地でも他の地域においても漁船が必要です。どの港でも大半の漁船が喪失しています。漁業権や網元等の関係は根強いので簡単には他の地域で自由に事業はできないかもしれませんが、まずは高性能な多様な漁船を所有するSPCを設営し、漁師に貸与することにより、従来は個人的に営業していた漁業が長期的視点により新たな漁業産業への取り組みが可能な地域もあると思われます。受け入れサイドは住宅や加工業等の手当てをし、当該地区はこのような仕組みを用意すれば、協働的にwin-winの展開が可能かもしれません。 国が所有して猟師に貸与する方法もあるかもしれませんが、国は公共事業に注力すべきかと思います。

すでに復興事業に係わる国や自治体の債権を組み込んだ投資ファンドの提案がありますが、より復興に具体的にイメージでき、で収益への期待もあるこのようなファンドへのニーズはあると思います。

【ネイバー・ワークス・ジャパン】(Neighbor Works Japan)
復旧から長期的視点での復興、再生に向けたプランニングとその事業化の重要性は前回述べましたが、この事業推進のための組織を提案してみました。
これは、米国における地域での多様な住宅供給のために、地域の事業型の非営利団体を多面的に支援する国の仕組みをわが国に援用したものです。
米国は原則的には、国が直接地域の事業に関与することはないのですが、住宅を中心とする地域再生には強い国の関与があります。これはその典型的なものであり法律により設立され、国の資金も投入しつつ、社会資本家などの民間資金を誘導するものです。資金のみならず、地域の事業体へのノウハウの提供や関連するスタッフのためのトレーニングプログラムもあります。

わが国では、まだ、地域に事業力のある非営利団体が少ないことと、一方で公的な事業主体があるため、これを活用して自ら地域で事業を行うとともに将来的な地域の担い手を育成するものです。資金も公的な投融資機関を協働的に活用し、さらに民間資金の導入をも図るものです。

これは、わが国の大きな課題である地方活性化解決のための仕組みとして検討しましたが、この震災復興における事業体としても有用だと思います。都市再生機構は民間支援に傾斜していますが、まだ、事業力のあるうちに、新たな組織に再編して長期戦となる復興・再生事業への取り組みを行うべきだと思います。
<米国のNeighbor Works@Americaをベースに構築>
・ 法律により組織設営し、資金と権限を付与する。
・ 復興時に設立するが、復興に限らないで普遍的に全国的な地域再生を担う。
・ 自ら事業を実施すると同時に、地域の事業者への支援を行うことにより事業推進を拡大する。
・ 地域への支援は資金及びノウハウ(人材のトレーニングも含む)
<組織構成>
・事業力:URの事業部隊を核に民間事業者も参画
       地方支社とともに各地域の事業型NPO等との協働
・資金力:民間都市開発推進機構(民都機構)
       復興事業資金の集約(公共事業とは別枠)
       民間金融機関

組織の構成図を参照してください。

【ネイバー・ワークス・ジャパン】(Neighbor Works Japan)と事業概要
さらに、再生プランニング作成への姿勢や新たな自治体形成に関する提案を記述してみました。難しい面は当然ありますが、これらを凌駕するレベルの構想力と実践力がなければ今回の震災を乗り越えて、さらに新たな地域の創造を実現することは到底無理だと思います。

【新たな地域再生プランニングの姿勢】
復興は長期に亘りますが、すでに、復旧から復興の議論、それも将来のモデルになるようなスキーム(スマートシティー等)の提案や宮城県や仙台からも復興方針が出されています。
基本的には現状回復にとどまらない将来を見据えた新しい都市づくりが必要です。一方で、震災の有無に限らず日本の人口は今後、急減することを忘れてはなりません。全国レベルではこの50年間に約3500万人減少し、特に地方圏では激減し、限界集落といわれるような地域等を中心に国土の2割で居住者が居なくなることになります。東北圏においても2005年の1207万人が2025年には1040万人、2050年には727万人へと減少します。
大人口減少時代に向けての国土再編がずっと大きな課題でしたが、その方向は見えていませんでしたので、この震災復興というさらなる大きな問題を抱えながら、すぐに将来のモデルになるまちづくりをしようなどとは軽々しく言えないと思います。
この機に「スマートシティーやエコシティー」形成等の論調もありますが、一定の規模と時間が必要ですし、まだまだ、事業化には課題があるので、震災地を実験場にするのは疑問です。
しかし、高齢化社会対策も同様でしたが、数十年前から分かっていても目前にならないと取り組めないのが実態です。今回も数十年後の話ですが、すぐに取り組まなければならないのです。いずれ迎え大減少時代への対応を今からする動機ができたのです。単に復旧から復興、将来モデルづくりをしようではなく、これまでの問題意識も含めてこの機にしかできない政策をも総力で取り組む必要があります。

【緻密で迅速な実態把握とプランニングの方向】
復興のプランニングにおいては、当然のごとく現状を正確に把握することからスタートします。すでに、当該自治体や関連省庁そして大学(例えば、奈良大学におけるGISを活用した地域の従前従後比較マップ作成等)等の多くの主体により事態把握が実施されています。問題はその実態データをどのように活用するかです。復興のメニューは地域の社会特性・空間特性や被害の程度により多様です。高台移住案(山を削り低地を埋立てれば良い)等の例示がありましたが、ひとつの例で代表できるような単純なプランニングではないと思います。緻密で迅速な実態把握の重要性は単に多様なプランニングの基礎とするのみではなく、復旧エリア(いつまでに復元されるのか)、復興エリア(いつまでにどのような地域になるのか)そして、転換エリアの峻別が重要です。転換エリアは言い換えると復旧・復興が不可能(人は戻れない)なエリアです。例えば、大量な海水と油が染み込んで地盤沈下し、膨大な瓦礫が沈積している港のようなエリアは使えるまでに10年以上かかり、その上、従来以上の堤防建設が前提になりますので、他の用途への転換をせざるを得ません。
限られた予算と時間内で非難した住民のそれぞれの生活と経済を再生するには、思い付きではなく、正確な実態把握と再生可能性へのプランニングの面から迅速に対処の基本方針を定めて、それを住民に早く知らせ、今後の再生方向を共有することが何よりも重要です。
このためには、専門家による迅速な実態調査と将来方向の見定めが不可欠であり、さらには、首長による決断が何よりも重要です。

【新自治体形成】
そのひとつとして「一団(町村レベルも)の移住による新たな自治体の形成」策があります。本来的には自治体を構成する人口の規模は関係ないはずです。日本の自治制度は決して悪いものではないのですが、米国のように住民が主体的に投票で決議をすることによる自治体形成の方法も導入してもいいのではと思います。どの行政サービスをどこか担うか等の課題はありますが、何もない状況から新たな自治体とそのサービスのあり方を模索する機会になります。道州制の是非はともかく、震災復興においては従来の縦割りを超えた役割り分担での行政サービスが行われますので、その一環と考えていいでしょう。

【拡大版第二の故郷創生】
過疎地域等では、限界集落を含めて事実上生活圏として成立しなくなりますが、わすかでも居住者が居れば行政サービスが必要ですし、人々(高齢者がほとんど)を無理に移住させることもできませんので、延命措置以外の有効な方策がありませんでした。
しかし、今回の災害は大変不幸なことですが、元居住地が壊滅(あるいは集団避難して戻れない)し、事実上復元は出来ないケースも多くあります。このような地域(複数も)を新たな土地に集団的に移転定住し、新たな生活圏としての自治体を創生するのです。(双葉町はその先駆けになるかもしれません)。先に提案した第二の故郷創生のさらなる拡大版です。場合によっては元の自治体の飛び地としてもいいかもしれません。
このためには、まずは、きちんとした調査・計画を踏まえて元の地域にもどることはできないことを明示し、合意する必要があります。
その上で、安全で交通条件が良く、基本インフラは整備されているが、人口減少しているような地域と協働で新たな自治体を形成するのです。既成市街地の活用とともに新たな市街地も必要でしょう。

さらに事業実施面で「復興PPP」について触れたいと思います。数十兆円と言われる資金調達を復興税か国債かなどの議論はすでに行われているのでここでは触れません。
国や自治体では大きな方針や個別公共事業の実施はできるでしょうが、公共事業が中心とは言え、公的主体だけで長期的視点と構想力が必要とされる難しい地域復興のためのコンセプトから事業化に至るまでの一連の事業を担えるのでしょうか?

【復興PPPと実践のための特区】
復興に必要なインフラ事業をPFIの活用により実行することは当然だと思いますが、単に民間資金の活用ではなく、インフラとまちづくり、産業振興等を一体として実施するためには、民間のノウハウ、資金、事業力を総合的かつ構想段階から取り入れるための「復興PPPスキーム」が必要です。PFIは公共施設が中心、PPPは民間施設が中心ですが、復興PPPは公共事業と民間事業との協働的事業を意味します。道路・インターチェンジ、鉄道、上下水道さらには堤防・港湾施設においてもこれらの公共事業を核にした多様な民間施設の導入が可能かもしれません。
国有地の使い方、各種規制、融資・補助制度等に関しても制約としてではなく、今回の事業推進にとって何が有効かを議論して、そのための措置を講ずることが重要です。その結果として今回の措置が新たな規制誘導策になるかもしれません。いずれにしても従来の制度を制約としては今回の危機を乗り越えることは難しいでしょう。
公共事業への民間の参入は少し前に外資も加わって話題になりましたね。今回はどうでしょうか。大都市と違って水道事業等への関心は低いかもしれませんが、港湾・空港周辺関連やそれらと関連する都市開発事業等への関心はでてくるかもしれません。
また、各自治体で復興計画の立案が始まっていますが、この復興計画のアイデアやコンセプトづくりの段階から民間を取り込むようなことも有用かもしれません。例えば広く世界に復興コンセプトとその後の事業に関するアイデア・事業参加を募集するのです。このPPP方式をRFC/RFP(Request for Concept/ Request forProposal)と呼びますが、日本ではまだほとんど実績がありませんが、世界的にはすでに多用されています。通常は民間事業として大きな収益が期待できることが条件ですが、今回のような震災復興にこそ民間の知恵を発揮すべきだと思います。
公共事業でインフラ整備を行い、地域再生のための住宅建設から関連施設、農漁業の再構築そして観光業等まで復興ワンセット事業を担うことも可能かもしれません。地域ごとに海外のAグループ、日本のBグループ等が責任を持って国や自治体と協働で実施するのも面白いのではないでしょうか?日本のゼネコンは海外では失敗続きですが、単なる工事の請負ではなく、他社と共同で地域復興に改めてその力を発揮して欲しいものです。
(村林正次 ㈱価値総合研究所 常務理事)

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