成長できる会社の見極め方 --- 高橋正人

アゴラ編集部

筆者はまだ若手(20代)であり、例年、学生からOB訪問の依頼を受けている。学生からよく聞かれるのは、「自分が成長できる会社を見極めるにはどうしたら良いか」という質問である。そこで、入社後に獲得すべきスキルを整理し、成長できる会社を見つけるための着眼点について考えてみた。

なお、成長とは、「どこに行ってもパフォーマンスを発揮できる人材になること」と定義しておく。


1.会社員が獲得するスキルの分類

20111204高橋正人_図表

横軸は、知識の外形的な特徴についての分類である。「日常業務はいわゆるOJTで習得するような、稟議書の作成や社内の根回し、その他企業や部署に特有の一般的な業務である。もう一方の「アカデミックな知識、資格など」は、主に自主的な勉強で獲得するような各種資格、語学のスキル、ファイナンス理論などを指す。

縦軸は、知識の習得に際しての自らの姿勢・心構えである。具体的には、自分の頭で物事の根本から理解を積み上げて習得したのか、言われたことを鵜呑みにしているだけかという軸である。

(1)企業特殊的スキル
深く考えず、自動的な作業として日常業務を行うことにより獲得した全く応用の利かないスキル。その会社(またはその部署)でしか通用しない。

(2)環境特殊的スキル
専門性は高いが、腹の底からは理解していない知識のみに裏付けられたスキル。そのようなスキルは、外部環境の変化が起きると役に立たなくなる。例えば、会計の知識を丸暗記しても、会計基準が変わってしまうと役に立たないであろう。環境変化に弱いという意味で「環境特殊的スキル」と名付けておく。

(3)中レベル汎用的スキル
日常業務ではあるが、業務の必要性等を自分なりに考えることで、どこの組織でも応用しうる汎用的な理解に抽象化できたスキル。社内の日常業務であるため、経済学的な分類では企業特殊的なスキルの範囲とされるが、筆者は、自分の努力次第で汎用的なスキルに昇華できると考えている(もちろん、100%汎用的なスキルに昇華できるとは限らないため、(4)との対比で「中レベル」とする)。

例えば、社内のマニュアルを鵜呑みにして業務を行った場合は単なる「作業」でしかなく、他の組織では応用できないであろう。しかし、マニュアルの構造や各作業の必要性、改善すべき点等を自分なりに考えていれば、他のマニュアルを理解するスピードも上がるだろうし、自分がマニュアルを作成する立場になった際にも応用が利く。これは立派な汎用的スキルと言える。

世の中には、異業種の会社に転職して立派に適応する人も多いが、(1)になりがちな日常業務を(3)にするよう努力を続けてきたからではないか(もちろん、加えて(4)のスキルも必要条件ではある)。

(4)高レベル汎用的スキル
自分の頭で地道に理解を積み上げた専門性の極めて高いスキル。(2)とは違い、理論体系の本質を理解しているため、ある程度の環境変化にも対応しうる。

2.獲得すべきスキル

(1)だけでは、特定の会社に依存した流動性の極めて低い人材になるしかない。(2)は、ないよりはましだが、変化の激しい現代社会では、すぐに陳腐化するリスクが高い。したがって、成長するためには、日頃の業務において(3)、業務及びプライベートの時間で(4)のスキルを磨いていかなければならない。

要は、分類表の縦軸(自分の頭で考えているか?)に常に気を付けながら、(1)及び(2)のマトリクスに入り込まないように心がけることが大切である。

3.確認すべき点

では具体的にOB訪問等で何を確認すれば、(3)や(4)のスキルを獲得しやすい環境であると判断できるのか。いくつか書いてみる。

―「そもそも論」に付き合ってくれる社員が多いか
「業界動向」「今後の経営戦略といった質問に自分の言葉で答えてくれる社員が多い場合は、日頃から根本に立ち返って考える習慣のある会社だと考えられる。「経営陣が考えることだ」といった思考の放棄や「現場はとにかく根性を出してやることが大事だ」といった精神論で切り返してくる場合は要注意だ。分類で言うと(1)の技能しか蓄積していない社員が多い可能性がある。

―業務と直接関係のない本を読んでいるか
雑談で良いので「最近読んだ本で何か面白いものはありましたか」と聞いてみると良い。硬派な本を読む習慣のある社員が多い会社は(4)のスキルの習得に熱心な職場環境であることが多い。

他にも色々な質問が考えられるが、後はそれぞれの就活生自身で考えてみて欲しい。

高橋 正人