山岡消費者相の失言問題

2012年01月06日 06:55

正月明けで、マスコミが「ネタ」不足で困っている所に、早速山岡消費者相からのお年玉である。朝日新聞は「ユーロ破綻、中国バブルも破裂」 山岡消費者相訓示でと伝えている。

山岡賢次消費者相は5日、内閣府職員への年頭訓示で、欧州債務危機に関連して「近々、ユーロは破綻(はたん)するのではないかと内心思っている。そうなると中国のバブルも破裂する可能性がある」と語った。通貨危機をめぐる不用意な閣僚発言として、野党が批判を強める可能性がある。


勿論、不適切な発言である。そもそも「ユーロの破綻」とは何を意味するのであろうか?

普通に考えれば、ユーロが決済機能を喪失すると言う事であるが、そう言うケースは直ぐには想定し辛い。山岡氏としては、私が以前、欧州とは日本に取って一体何なんだ?で説明した下記の様な事を訴えたかったのではと推測する。

決して揃う事のない加盟各国の足並み。機能不全の欧州中央銀行(ECB)。口は出すけど、金は出さないIMF。その隙間から、共通通貨のEUROが助けも無く、自沈して行く。このファンダメンタルズは今年もきっと相変わらずで、結果EURO安は当分続くと思う

閣僚の失言問題と言うのは、マスコミは扱い慣れており、騒ぎを拡大し大臣辞任までもって行きたい筈である。しかしながら、最早国民はその手の展開にはうんざりしており、野党は軽挙妄動を慎み本質論で政府に迫るべきである。

具体的には、欧州ソブリンリスクへの対応であったり、ユーロ債券を要注意とする事であろう。昨年の、意味不明なEFSF債購入と、それに伴う為替差損等は、一体どの様な経緯、背景で購入に至ったのかであるとか、現状の為替差損総額、今後の差損膨張の可能性等を財務省に説明させるべきであろう。

中長期的には、ユーロ加盟国がユーロから離脱し、自国通貨に回帰する可能性も高いと思う。その際は、各国とも旺盛な資金需要が生じ、日本に取って絶好な投資先となる可能性が高い。それに備え、与野党間で議論するのは有意義と考える。

要は、決して果実が生じる事のない、不毛の揚げ足取りに興じるのではなく、国益に繋がる議論を期待すると言っているのである。

さて、今一つは「中国のバブルも破裂する」である。多分、山岡氏は中国の急成長はバブルであり、バブルは何れ破裂すると、上から目線且つ、色眼鏡で中国を見ているのであろう。残念であるが閣僚としては失格である。

今朝のBBCは、中国経済を下記伝えている。

Commerce Minister Chen Deming said the surplus was around $160bn (£103bn) in 2011. That compares with a record of $295bn in 2008.

中国の貿易黒字は2008年の2,950億ドルの黒字から、2011年は1,600億ドルの黒字に縮小。

Connie Bolland, the chief economist at Economic Research Analysis, said that she expected the trade surplus to shrink further to $100bn in 2012.

そして、2012年には更に1,000億ドルにまで縮小する。

China will have to come up with other ways to boost its domestic demand to make up for the loss in trade surplus that is expected in coming years,” said Ms Bolland.Beijing is anxious to prevent a sharp slowdown in the economy but at the same time wants to avoid reigniting inflation, which hit a three year high of 6.5% in July but has since slowed.

中国は貿易黒字の落ち込みを、国内需要の喚起で補わねばならない。しかしながら、中国当局としては昨年7月に記録した、6.5%もの高いインフレ率は避ける必要があると、注意を怠らない。

要約すれば、欧米の景気後退により輸出が落ち込み、これを補うために、インフレに細心の注意を図りつつ、内需拡大に努めていると言うのが、現在の中国の姿であろう。

それでは、日本はどう対応すべきであろうか?

以前の記事、日本の貿易実態を理解している?で説明した通り、日本に取り中国は輸出、輸入共に最大の相手国であると共に、日本は対中貿易で4兆円もの黒字を獲得している。

中国、香港を一体と考え数字を合算して計算する。対中輸出は総額17兆円で第一位。アメリカが10兆円でこれに次ぐ。一方、輸入は中国からが13兆円で第一位。アメリカが6兆円でこれに次ぐ。中国は日本に対し4兆円もの貿易黒字を供与する最高のお得意様である。又、中国からの輸入品は100円ショップで売られている安くてそれなりに質の良い商品であったり、ユニクロの衣料品であったり、その低価格で質の良い商品に日本国民は恩恵を受けている。本当にお世話になっている大事な恩人なのである。

中国の貿易黒字が急速に萎んでいる状況で、日本が、今後4兆円の黒字を維持する事は不可能であろう。

この落ち込み分を補うには、中国当局内需拡大策と歩調を併せ、今尚フロンティアである辺境に投資を実行し、利益を上げる様な、従来の「通商」から「投資」への発想の転換が必要と思う。

同時に、中国に雁行する新興産業国への進出、展開にドライブをかける事も必要かもしれない。

今回の、山岡消費者相の失言問題を契機に、かかる重要事項を与野党で熟慮の上、実のある議論をして欲しいものである。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役


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