ムダの削減という集団催眠の背景と実態

2012年04月05日 11:02

辻先生のアゴラ記事、「巨額のムダ」という集団催眠を拝読。当然の事ながら、何故かかる集団催眠が可能になったか興味が湧いて来る。


矢張り背景にあるのは、一般国民の「役所は税を無駄使いしている」という、最早疑念というより確信でなないだろうか?

一方、役所はどう思っているのであろうか?

「「法」と「制度」に従い、正当に税を使っている」と思っているに違いない。そして、国民の疑念は性質の悪いマスコミの煽り記事や、政治家の無責任な役所を悪者にしての人気取りの結果と思って事であろう。

今回の辻先生の記事に、溜まりに溜まった溜飲を下げたのではないか?

問題は、一般国民と公務員の間に大き過ぎる意識の溝がある事だと思う。この溝は一体何処から来るのであろうか?

「予算」に対する認識の違いではないか?

国民の大多数は、規模の違いはあれ民間企業に勤めている。そして、民間企業の場合、「予算」とは「売り上げ」と「売り上げ」からもたらされる「利益」を意味する。「売り上げ」、「利益」共に達成されるのが理想であるが、外的要因に依っては売り上げが落ち込む事も往々に生じる。

大事な点は、「民間では「利益」予算の達成はマストと言う事である。

民間企業にあっては冗費削減の不断の努力は当然の事として、売り上げの落ち込みに対し経費削減で何とか「利益」を絞り出すと言うのは常識である。言い換えれば、経費は圧縮し利益を生み出す手段の一つである。

居酒屋チェーンの新入社員が過労死した事件が、ネットを賑わしたのは記憶に新しい。

何分この不況である。客足が遠のく。客単価が下がる。売り上げ減少の理由を探すのに苦労はしない。

仮に店単位で一日当り@2万円の利益が減るとなれば、店長はどう対応するだろうか?

簡単明瞭なのは、日当@1万円のアルバイトを2名解雇し、2万円の経費を削減し利益を予算に合わせに行く事ではないか?アルバイトの仕事は当然正社員が負担する事になり、業務負荷は増大する。そして、こういう経緯なので、残業代が支払われる事は決して無く、サービス残業となる。

これが、許容される企業努力か否かの議論は放置するとして、兎に角、民間は何とか「利益」を捻出し、申告、納税を果たしている訳である。

一方、役所の「予算」とは何であろうか?

結局の所は、消化すべき「経費」に過ぎないのではないか?

私は間違いなく色眼鏡で見ている訳であるが、こう言う理解をしている。

先ず屁理屈を捏ね回してでも多めの予算を獲得する。多めの予算があれば仕事がやり易いのは言うまでもない。

年度末になれば予算を余らせてはいけないので(次年度の予算が削減される)、無駄な工事を発注し予算の消化に動く事になる。

私は、ニュータウンである横浜市都筑区に住んで居るが、例年2月から3月にかけては緑道の砂利道を掘り起こして砂地の道にしてみたり、砂地の道を舗装してみたり予算消化が目的としか思えない工事が多い。

緑道に点在する出来たばかりの公園で、ブランコや滑り台の位置をしょっちゅういじっている。未だ充分使える筈の遊具がその度に新品になっているのは言うまでもない。

こういう無駄な税の使い方は納税者の利益にはならないが、関係する業者を潤すのは間違いない。役人が定年後、一定期間嘱託扱いで雇用して貰うとか利益の還流もあるのではないか?

こう考えれば、民間企業の常識を踏まえた大多数の一般国民が役所の税の使い方に接し不快に感じたり、余りの出鱈目さに開いた口が塞がらないというのは、自然な結果と思うし、役所の税の使い方に目を光らすと言うのも寧ろ当たり前の話ではないだろうか?

問題は、こう言う非効率な税の使われ方の実態を是正する事が、日本の重篤な債務問題解決に直結するかの如き誤解を与える、政治家の発言であったり、公務員イコール諸悪の根源と問題を単純化して国民の怨嗟を煽り、人工的にマスを作りマネタイズに励むマスコミの姿勢と思う。

幸いな事に、私の回りには集団催眠にかかっている人間はいない様である。

若手の企業経営者達は、こんな問題よりも「海外移転」を現実的な経営テーマとして検討に忙しい。

残りは、税の非効率な使われ方に不満を持ちながらも、社会保障費の削減と一体での増税を支持している。

それでは、一体誰が集団催眠にかかっているのであろうか?

真面な人間がこういう荒唐無稽な話に乗るとは思えない。

最近増えた、「フリーター」、「ノマド」と言った得体の知れない人間達や、将来を考えない高齢者達ではないのか?

彼らの特徴は「税」や「社会保障費」を殆ど負担する事なく、ちゃっかり社会システムにタダ乗りをして、決して恥じない事であると聞いている。

消費税を払うと言う事で、税負担に応じる事を潜在的に快く思っていないのに違いない。

こういう層に取っては「ムダの削減で巨額の財源が出てくるので、消費税増税は必要ない」という言葉は、心地良く響くのではないだろうか?

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑