デフレと市場占有率至上主義の罠 --- 岡本 裕明

2013年03月22日 10:29

メディアのニュースにはしばしば、市場占有率の話題がのぼります。「○○の製品のトップシェアを誇る当社としては……」などという言葉は耳にたこが出来るぐらい日本企業の勲章と化しています。この市場占有率第一主義の日本がもしかしたら日本経済のデフレの元凶ではないか、と仮定したらどうでしょうか?


以前、某企業の社長が「製品のシェアはトップを取らねば生き残れない」と談じていました。事実、二位で損益はトントン、三位以降は赤字というのがその業界の実態だったと記憶しています。勿論、これは業種によってまったく違いますので一概には言えませんが、日本の企業戦士たちは上司からシェア奪回を常に要求されているのです。

一昔前、新聞業界も定期購読者を増やすため、洗剤やらティッシュを山のように配り、「一ヶ月だけでもいいですから」と激しい営業攻勢で、私の母親はその度に新聞を変えていたため、実家に行くたびに「あれ、また変わったかね?」と聞き返す始末でした。

ただ、市場占有率を少しでも高めるためには出血を伴うことも覚悟しなくてはいけません。多大なる販促費用を計上し、割引も辞さず、ということになります。これが結果としてどの会社も勝者なしという結果になっているような気がします。

頭で分かっていても他者より1円でも安い商品を投入しなかった結果、市場占有率が下がったとすればこれは役員から大目玉を食うのは目に見えているわけで結果としてなんら新しい戦略を取れないというのが典型的日本企業であります。

その中で異色なのは三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長で、バーゲン開始時期を繰り下げるという英断を下した張本人です。そして、結果として売り上げはまだ下がっていますがこのポリシーを継続すると断言しているところにこの社長は日本の小売を変えるかもしれないという期待感を抱かせました。

しかし、これは社長本人が旗振りをしているから出来るのであって一般企業ではまず不可能な行動です。大西社長の経営判断を奇策と取るか、後に歴史に残る大経営者として祭られるかはフォロワー次第ですが、私は応援しています。

ITの雄、アップル社がなぜ、成功し、なぜ今、衰退期に入っているかはこの市場占有率の話で説明がつく部分があります。スティーブ・ジョブズがある意味ギークなiMacを発表した時、彼はこの商品が好きな人だけに売るというぐらいの強気さがあったと思います。その強気の裏にはその価格設定もありました。ウィンドウズに比べ高く、値引きもなかったのです。その商品に対する圧倒的な価値観、優れた性能、デザインなどが評価され続け、今のアップル社があるのですが、彼の死去と共にマスコミは市場占有率をより面白おかしく書き立てるようになりました。なぜなら、他社製品がアップルの優位性を凌駕し始めたからです。結果としてアップル社は市場占有率の罠に引っかかり、今、株主やマスコミから「なぜ、占有率が下がっている?」と厳しく問いただされているのです。だからこそ、同社は今や衰退期に入ったと言っても過言ではないのです。

日本国内の市場占有率競争にフォーカスするよりより質の高いもの、消費者がほしいと思うマーケティングを通じてアジアなど海外での規模の拡大を目指すことが日本企業には必要だと感じています。それが真の意味でのデフレからの脱却に繋がるのではないでしょうか? アベノミクスの特徴は短期的効果は期待できるのですが、構造変換させる政策ではないということです。企業体質を変えるのは政治ではなく、企業そのものが目覚める必要があるのだということに気がつかねばなりませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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