アップルが中国で苛められる理由 --- 岡本 裕明

2013年04月04日 16:49

アップルが中国でたたかれ、挙句の果てにCEOのティム・クック氏が製品の保証ポリシーについて謝罪したという記事が出ています。iPhoneなどの修理に関し、部品交換による修理に満足できない中国側がなぜ新品と交換しないのか、と責めているのがその理由であります。

外国との付き合い方について中国の例から探ってみましょう。


山崎豊子の長編小説「大地の子」は上海の宝山鋼鉄の建設に際し新日鉄が全面的に技術提供しながらそのプロジェクトを進めていく話がモチーフなのですが、その中で日本から送られてきた建設部材に錆がついていることを発見した現地スタッフはそれ以降、日本から送られてくるさまざまな建設資材や必要な機器を厳しく検品します。そして錆がついていたり不良品があったものは「新品に変えろ」と日本側に強く要求します。日本側はその錆は製品の性能に影響を及ぼさないと再三再四説明をしながらも激しい中国側のクレームにかなりの譲歩を強いられます。

アップルと「大地の子」の例からは中国人は「自分たちが特別扱いされること」に非常に強い誇りを見せます。それが獲得できないなら徹底的に叩く、というのが今までのパタンとも言えるのです。

中国市場において当初、日系の自動車会社としては日産自動車が好調でした。理由は何であったでしょうか? 中国では後部座席に人を乗せることも多く、また、見栄えを重視することから車体を大きくし後部のレッグスペースを広くする中国仕様車を販売したことがその成功の原因のひとつとされています。「中国のための特別なもの」です。

私がバンクーバーでコンドミニアムの販売責任者としてその指揮に当たっていたころ、中国系(香港、台湾)の顧客には特別なディールが必要でした。その際、「あなただけの…」というトークでお客様にずいぶん喜んでいただけました。そして一人満足して買っていただければお友達も連れてきてくれるという「芋づる」も何度も経験いたしました。

私の知り合いの中国人。中華レストランに私を連れて行けば黒服(マネージャー)がささっと彼のもとにやってきて「今日は特別においしい○○をお持ちできますがいかがいたしましょう?」。すると彼はにんまりと「ではそれを」というのはお店と私に対する見栄なのかもしれません。

国営メディアを通じてアップルのネガティブキャンペーンをぶち上げるということはくだんの修理の件はその引き金の一つでもともと不満があったはずです。それはひょっとしたらアメリカに征服される、ということでしょうか? 日本製品の不買運動はかつて何度か中国で起きていると思います。外国企業の市場シェアがあがりすぎることに敏感なのではないでしょうか? つまり、日本企業は中国ではさほど目立たず、そこそこの事業をするならともかく大々的に13億の市場をのっとるような気持ちで当たると大きなしっぺ返しを食う、という風に見えます。

日本人は韓国や中国と付き合うのは難しい、と口癖のようにいいます。ですが、私が人種のモザイクであるバンクーバーで21年も仕事をしていて思ったのは韓国や中国に限らずどの国のどんな人々もそれなりの常識観があるということです。それを日本のスタンダードにはめ込もうとするところに大いなる間違いがあります。外国人とお付き合いするにはまず自分の価値観を押し付けず、相手の話をよく聞くことです。その中で相手がもっとも大事にしている部分はどこにあるのか、ということを見出すことがお付き合い上手のテクニックではないでしょうか?

日本人はアメリカ人と仲良くできると思っています。それは戦後から今日に至るまで長い時間をかけてアメリカの文化、社会、経済、習慣、食生活、娯楽などが日本に取り入れられたことで違和感なく受け入れられるからなのです。では日本人がイギリス人と仲良くできるか、といえばかなり難しいかもしれません。私は19歳でイギリスに短期留学したのですが当時そのカルチャーギャップに悲鳴を上げていました。そしてここカナダ、ブリティッシュコロンビア州のイギリスの色が残る街でそのときの苦労を今でも引っ張っりながら少しずつ理解を進めている状態なのです。

グローバリゼーションとはただ企業が商品を売りまくるという時代から相手をリスペクトし、お互いにパートナーとして迎え入れる努力をせねばなりません。そのためにはまず、日本人がもう一度相手の国を勉強することが重要ではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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