みんなが体験でき、実感できる成長戦略を

2013年08月05日 16:54

ガソリンスタンドで表示されているガソリン価格が目に見えて上がってきています。資源エネルギー庁の発表では、7月29日時点でレギュラー1リットルあたりが全国平均で158.8円となり、これは約4年9か月ぶりの高値だそうです。どこまで高騰するのでしょうか。そういえば2008年8月にはレギュラーガソリンがリットル185.1円という高値を記録したこともありました。ガソリン価格などの燃料費の高騰は、車を持っていないから、あるいは車に乗らないから関係ないと済ませられる話ではありません。
ガソリン価格1リットル158.8円 4年9か月ぶり高値 : J-CASTニュース :


アベノミクスは、円安を誘導し株価を押し上げたわけですが、その円安が輸入物価高騰を起こし始めています。デフレ退治という点では、6月に総合物価指数がプラスに転じたものの、生鮮品やエネルギーを除くとやはりマイナスです。つまり、電力料金やガソリンの高騰、その影響を受けて生鮮品が高騰しただけのことじゃないでしょうか。

円安は、輸出企業に潤いをもたらし、各社好決算となりました。また株価上昇で一部の人たちに潤いをもたらしましたが、輸入物価高騰の煽りをうければ家計に響きます。また国内産業のコスト増になってきています。

アベノミクスはたとえうまくいったとしても、ほんとうの成果がでるまでは時間がかかる経済政策なので、どこまでこの負担増に国民が我慢できるのかが気になります。成長への意欲や挑戦が生まれてくるよりも、負担増で疲弊してしまっては元も子もありません。

さて、もともとデフレ脱却が日本の経済課題としたのも、インフレを予想すれば、眠っている資金が「民間設備投資や研究開発投資の拡大、事業再編・事業組換えを促進し、産業の新陳代謝を進める(経済財政運営と改革の基本方針)」という発想ですが、さらにその先の目的は、日本の生産性をあげていくことです。この点で異論を持つ人は少ないと思いますが、もし生産性があがらず、輸入物価の上昇と金融緩和による金利上昇だけに終わるとアベノミクスは大失敗となり、日本は今以上に厳しい状況になってきます。

しかも、日本の経済が抱えている問題は、投資がなかったからではなく、設備投資はそれなりに行われてきたのです。しかし、残念ながらそこからの収益が低い状態がつづいてきたことです。つまり儲からないところ、競争が激しくとも成熟してしまったビジネスに投資してきた、だから利益も低く、生産性もあがらず、所得も増えるどころか減ってきたのです。問題は日本の生産性です。生産性が高まらなければ所得も当然あがりません。
日本の経済が抱えている問題は、投資はそれなりに行われてきたのですが、要はそこからの収益が低い状態がつづいてきたことです。つまり儲からないところに投資してきた、だから利益も低く、生産性があがらず、所得も増えるどころか減ってきたのです。
「低成長運命論」を受け入れる前に、日本が取り組むべきこと|伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論|ダイヤモンド・オンライン :

経済学者やエコノミストの人たちの中には、インフレが起こりそうだという観測によって投資が活発になるというお話、つまり「インフレ期待」が投資が呼び込むということを言う人がいますが、もうひとつピンときません。
むしろ、規制が解かれたり、なにか変化があって、新しいビジネス機会が起こってきそうだ、新しい市場が生まれてきそうだという「成長期待」があってはじめて投資が活発になったり、ビジネスのチャレンジが生まれてくるというほうがリアリティを感じます。

その点でも、成長戦略が重要なのですが、「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」では、「民間の力を最大限引き出す」「全員参加・世界で勝てる人材を育てる」「新たなフロンティアを育てる」などの基本的な考え方があっても、あとはダラダラと優等生が書いたような項目が並んでいるだけです。いったいなにで人々のマインドを変え、「成長期待」を広げ、チャレンジを引き出そうとしているのかのシナリオが見えて来ません。
新たな成長戦略 ~「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」を策定!~ | 首相官邸ホームページ :

重要だと思うのは、多くの人が「変化」を体験し、実感できるサムシングをつくりだすことだと思います。古い殻にしがみつき、絶対に変わらないと思っていたものが変化し、その変化を多くの人が体験できるものを探すことではないでしょうか。

ひとつの例ですが、いい対象があります。放送業界です。放送業界はかたくなに電波にこだわり、「放送とネットの融合」には消極的です。思い起こしてもらいたいのは、ライブドアにいたころに堀江さんが仕掛けたり、楽天の三木谷さんが仕掛けた「放送とインターネットの融合」にむけた買収劇がありました。

いずれもが失敗に終わりましたが、あの当時、信じがたいことに「放送とネットは違う。融合はありえない」ということを堂々と発言していた人もいました。笑ってしまったのは、「テレビは遠くから見て楽しみ。ネットはPCに屈みこんで楽しむもので世界が違う」と言っていた人もいたことでした。しかも今では「放送とネット」を融合させるアイデアも技術もつぎつぎに生まれてきています。スマートフォンやタブレットPC、動画サイトがでてきた今日、それらの画面を連動させることができる今日でも「放送とネットは違う」という人がいるのでしょうか。

放送の場合は、規制は政府の規制というよりは、業界が自ら敷いた規制でしょうが、許認可事業なので、政府が業界に働きかければ、「放送とネット」の融合に向けた動きを門外漢から見れば実現することができそうです。これは技術の問題ではなく、やる気があるかどうかだけです。

放送局や放送業界が変れば、いつでも好きな時間に好きな番組が楽しめるようになります。スマホでみんなが話題にして盛り上がっている番組のリンクをクリックさえすれば、テレビでその番組、あるいは録画番組を見ることができるとか、もっといろいろな新しい体験もできるようになるでしょう。

とうぜん、そういったスマートテレビにむけてゲームをつくるビジネスもでてくるでしょう。新たな方法での英会話教室なんかもでてくるのかもしれません。つまり小さくともさまざまな新しいビジネスも起こってきます。

官僚の作文ではなく、一般の人からは遠い世界の基礎研究のような話ではなく、「目に見える成長戦略」「実感できる成長戦略」を見つけ出し、進めることができるかどうかにアベノミクスの正否がかかっているように感じてなりません。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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