どうすれば外国人向け短期アパートが現実化するか --- 岡本 裕明

アゴラ

鳴り物入りの国家戦略特区の内容の一部に外国人が空き家になっているアパートを使う場合、最低7日から使える優遇策を打ち出すことになるそうです。この特例はある意味、空き家で悩んでいるアパートオーナーには好都合のように思えますが、さて、考えうるメリット、デメリットは何でしょうか? 案外、この特例、水平展開は難しそうに思えますが。


まず、アパートオーナーが外国人に空き部屋を貸す場合、その募集をどうするか、ということが考えられます。通常、アパートオーナーは近所の不動産屋に一括でお任せしていますから、オーナーさんは契約などを含めた実務には疎いことが多いでしょう。そのような前提で自分で外国人に部屋を提供するとなると次の点を考慮しなくてはなりません。

募集するための英語、中国語、韓国語などのウェブなどの用意(将来的には専門の業者ができると思いますが)。
短期滞在ですから家具付きである必要。
シーツなどの洗濯を含めたホテルのハウスキーピング的なサービスを要求されます。
ゴミ出しなどを決まった日に分別して出すルールが分かりにくいでしょう。
緊急時に大家とのコミュニケーションをどうするか?

ぱっと考え付くだけでこれだけのハードルがあるのですが、私は最大の問題はそのアパートの他の住民との融合性になると思います。アパートも基本的には長期的に居住している人が主体で、場所によってはアパート内のコミュニティも存在しています。静かなところでは夜の出入りには気を使うなど暗黙のルールなども存在しているでしょう。そこに短期滞在の人が「混入」するとオペレーション上きわめて難しいハンドルが要求されるとみています。私はこれは外国人云々の問題ではなく、アパートの居住空間の尊厳を軽く見ている気がいたします。

元々の政府の発想は「外国人観光客が安い宿泊費で日本に長く滞在できるようにする狙い」(日経)ですので駅前の高層の高級アパートメントがこのマーケット対象になるとは思えません。当然、住宅街の普通のアパートをターゲットに考えているものであります。

では、この緩和ルールをうまく利用するならどうしたらよいか、といえば、アパート丸ごと外国人向けにすることではないかと思います。

まず、家具付きの短期滞在型ならば家賃は高め設定が可能です。例えばバンクーバーの夏の家具付きアパートはごく普通の1ベッドルームでもひと月40万円程度(高いところで70万円ぐらい)の相場になっています。一方東京では古い1DKのアパートならば7万円も出せば借りられるところはかなり見つかりますが、家具付きで月16万円、週当たり4万円程度でも借り手はマーケティングと場所次第でいくらでも見つかるはずです。

もともとアパートのオーナーは外国人向けに貸したがりません。理由は使い方が荒く、汚くする場合もあること、また、最後の家賃は払わず逃げるといったことも横行していると言われています。ただ、その使い方が荒い、汚くするという度合いは日本人のクリーンなイメージをベースにしているのでしょうが、外国に行けば比較的当たり前ですので日本に来る外国人だけが汚く使うわけではないという認識を持つべきでしょう。家賃のとりっぱぐれはそれを事前にセキュアしていないからです。一見の外国人とビジネスをするなら支払いは前払いに保証金が当たり前です。

結論からするとこのアパート緩和特例はごくごく一部の運用者にはメリットがある話かと思いますが、ほとんどの既存のアパートオーナーにはハードルが高すぎる話になりそうです。一番良いのは外国人向けビジネスのノウハウをもつ会社が起業し、既存アパートのオーナーから運営委託を受ける形がベストではないかと思います。

一方、比較的部屋ごとの独立性の高い街中のワンルームマンションをお持ちの人ならば業者に2割の手数料を払ってもお得なビジネスになるはずです。私でも検討したいビジネス案件となりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。