TPPは日米両政権の重要な試金石 --- 岡本 裕明

2014年04月21日 10:29

いよいよ今週、オバマ大統領が来日するわけですが、その目玉はTPP交渉になるかと思います。その事前交渉は甘利大臣が5日で30時間も費やして交渉に立ったものの依然、アメリカとの妥結には距離があるとされています。安倍首相とオバマ大統領の直談判で大筋妥結まで至るのか、大いに注目されます。

少なくとも両首脳にとってはこのTPP、合意しないわけにはいかないという状況にあるのではないでしょうか?


まず、安倍首相はこのところ、パフォーマンスは多いものの成果が少なく、アベノミクスに懐疑的声が出ていることは事実です。株式市場で年初来、外国人投資家が大きく売り越した理由の一つでもあります。そのためにも安倍首相として最優先課題のTPP成立に向けてアメリカとの交渉は最大のハードルともいえるでしょう。

幸いにして当初もっとも大きな圧力となっていた農畜産業部門については全般的な反対圧力が明らかに弱まり、個別の関税交渉というピンポイントの動きになってきました。合わせて、農業部門を輸出産業に育てるという世論も増え、この1年ほどで日本の農業に対する姿勢は大きく変化してきました。事実、農協も含め、農産物の輸出に積極的に関わるようになったことは重要な転換点を意味します。

一方、TPPの主導者であるオバマ大統領ですが、あらゆる意味で逆風下にある中、せめてTPPだけはうまくまとめないとそれこそ成果ゼロの大統領となってしまう可能性があります。とりもなおさずアメリカ中間選挙をにらみ、最悪の事態を招くことになります。私は仮にTPP交渉もうまくいかなかった場合、その後の約2年半はアメリカがうっぷんを溜める結果になるだろうとみています。それはアメリカとっても世界にとっても好ましくない結果を生むことになるでしょう。

日経の世論調査によるとTPP妥協はやむ得ないが37%に対して妥協するなら合意すべきではないが44%、いまだ反対派が多いものの分からないも12%を占めているところに多くの疑心暗鬼が見て取れます。多分ですが、経済学者でも評論家でも今の時点でTPP導入後の日本のピクチャーをきちんと描ける人はいないでしょう。グローバル化が生む歪みもあるかもしれません。

しかしながら日本もオーストラリアとEPAで大筋合意で本年中にも調印となります。カナダとのEPA交渉も今後大きく進展していくでしょう。つまり、TPPという多国間協議があろうがなかろうが、個別協議はどんどん進んでいく中でいずれ日本は市場を開放せざるを得ない状況にあるということです。不思議なのですが、二国間交渉ではメディアから反対、賛成の意見はほとんど見られず、TPPにのみ意見が集中しているところにある意味、偏りが生じているともいえるのです。そして特に今回はアメリカという巨大国家との枠組み形成を含んでいるところにその計り知れない影響力を懸念しているのだろうと思います。

交渉の具体的中身は一切わかりませんが、この数週間の動きは日米関係の再構築という目線が際立っています。それはアメリカにとってもやはり日本はくみし易い国であり、長期的国家間戦略に立っても重要であることを再認識したのかもしれません。アメリカは一時期、破竹の勢いの中国に対して大きく振り回されました。そして中国が美人かどうか見定めるのに時間を要したのです。私の感覚からすればその熱が冷めて古女房に戻ってきたという気がします。

とすれば「妥協には相当の距離がある」とされる中でその困苦を乗り越え一気に大筋合意とし安倍、オバマ両首脳の株を上げ、両国間の関係を再度深めるというボトムラインが垣間見えるような気がします。日本側からオバマ大統領に無理繰り一泊の予定を二泊にしてもらったお礼が何であるのか、あと数日でわかることになります。さて、結果はどうなるのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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