「集団的自衛権解散」は「郵政解散」より価値があるのでは

2014年07月07日 12:11

安倍内閣が進めている憲法解釈変更による集団的自衛権問題は、世論が分かれています。メディアによって結果は異なりますが、賛成か、反対かの二者択一では朝日の調査でも毎日の調査でも反対が5割を超えていましたが、産経や読売のように「最小限の行使」を加えると、賛成はほぼ7割に達します。
【産経・FNN世論調査】2択か3択かで分かれる賛否 報道各社の集団的自衛権調査 – MSN産経ニュース
質問方法や選択肢が異なることが原因ですが、ただ賛成が圧倒的だという読売の調査でも、両手をあげて全面的に賛成という人は6%にすぎません。賛成という人でも中味次第だということです。
集団的自衛権、行使容認71%…読売世論調査 : 世論調査 : 読売詳報_緊急特集グループ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)


さて、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受けた後の世論調査ですが、こちらは安倍内閣に厳しい結果となっています。
共同通信社の調査では、行使容認の範囲が広がる恐れがあるとした人が、閣議決定前の62.1%から73.9%に増え、また「検討が十分に尽くされていない」が82.1%、さらに「衆院を解散して信を問う必要がある」も68.4%に達しています。内閣支持率も5割を切り、不支持が増加しています。
内閣支持47%に下落 集団的自衛権納得せず 82%が「検討不十分」 共同通信世論調査 : 47トピックス – 47NEWS(よんななニュース)

朝日新聞の調査では、憲法改正ではなく憲法の解釈を変えた首相の進め方について、「適切だ」が18%で、「適切ではない」は63%、集団的自衛権をめぐる安倍政権での議論が「十分だ」は14%で、「十分ではない」が72%とやはり安倍内閣の集団的自衛権行使に関する進め方はまったく国民のコンセンサスが得られてはいないという結果です。
必要最小限度にとどめることで「歯止めがかかる」と答えた人は26%で、「歯止めはかからない」も51%と懸念の声のほうが上回っています。
集団的自衛権容認「よくなかった」50% 朝日新聞調査:朝日新聞デジタル

読売新聞の調査でも、自衛隊が国際的な機雷掃海活動に参加できるようにすることや紛争中の外国から避難する邦人を乗せた米輸送艦を自衛隊が守れるようにすることについては評価が6割を超えたものの、集団的自衛権を限定的に使えるようになったことそのものについては、「評価する」が36%、「評価しない」が51%と上回る結果で、限定容認によって、日米同盟が強化され、抑止力が高まると思う人が39%で、そうは思わない人が49%と、やはり国民の理解はすすんでいないという結果でした。
集団的自衛権、事例は理解・総論慎重…読売調査 :  読売新聞(YOMIURI ONLINE

集団的自衛権行使の権利は、国連憲章でも認められており、国際社会ではあたりまえのことだとはいえ、そもそも集団的自衛権がなにか、なぜ行使容認に転換することが必要なのか、それで日本の安全保障にどのような関係してくるのかの丁寧な説明もないままに、ただただ公明党と、8事例についての各論で合意をつくることに照準をあて調整に調整を重ね、結局出てきたのが、以下の自衛権発動の要件だったのではよくわかりません。
① 日本への武力攻撃や密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
② 日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない
③ 必要最小限度の実力行使にとどまる
いったい公明党はなんの役割を果たしたのかよくわかりません。

読売新聞は絶賛していますが、読みようによっては、それで、ほんとうに集団的自衛権を容認する実際の効果があるだろうか、逆になにが具体的な歯止めになるのだろうかと疑問に感じてしまいます。逆に法案で広げていくつもりだろうかとも疑ってみたくなります。いずれにしても抽象的でわかりづらいという印象を受けます。
集団的自衛権 抑止力向上へ意義深い「容認」 : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

米国や英国とは同じようにはならないとしても、集団的自衛権で、「やってはならない」こと、「ここを踏み越えてはいけない」ことを明らかにしたほうが、国民にとっても、実際に任務に当たる自衛隊にとってもわかりやすいのではないでしょうか。

しかし集団的自衛権で感じるのは、賛成だ、反対だという結論ありきから口角泡を飛ばすような議論はあっても、世界の現実がどう変化してきており、どう向き合っていくのかの、そもそもの議論が抜けているような気がします。

日本の抑止力についても、軍事力だけの問題ではなく、とくに経済大国間では、どの国も国際経済の秩序に大きく依存しているので、経済力でのプレゼンスや国際世論を動かす力も重要な要素です。

日本の国を守る安全保障で重要なのは、なにをさしおいても国民の意識だと思いますが、その意味では、憲法解釈の積み上げや内閣による解釈変更というのは健全だとは思えません。

本来は憲法でシンプルでわかりやすく国民の理解をつくるべき話ではないでしょうか。憲法9条の理念は、日本の発展に大きく寄与したことは誰も否定出来ないでしょうが、世界の現実が大きく変化してきたなかで、70年間も一度も手を入れることがなければ、現実とは合わなくなってくるほうが普通です。

憲法改正を議論することすら反対する人たちがいますが、それでは憲法が宗教そのものになってしまいます。
現実にあわせ、侃々諤々の議論を行なって修正をはかっていくほうが、国民の憲法へのコミットメントも深まり、「わたしたちの憲法」、「わたしたちの国」という意識も深まってくるのではないでしょうか。

憲法改正のアプローチでなくとも、集団的自衛権で民意を問う解散はあり得るのではないかと感じます。すくなくとも、小泉政権での郵政解散よりは意味があるのではないでしょうか。そのほうが本気の議論が起こってきて、国民の理解も深まってきます。経済にとってはリスクが生じますが、推し進めるのは、それほどの覚悟が必要だということだと思います。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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