日本の良質な商習慣が際立つ結果になりそうな期限切れ鶏肉事件 --- 岡本 裕明

2014年07月24日 10:36

この事件を耳にした時、思わず口から出たのが「懲りないな」でした。

中国の食品偽装事件としては2007年の冷凍餃子に殺虫剤の成分が入っていたことが思い出されます。ただ実際には中国国内だけの問題になった事件はいくらでもあるとされており、「野菜、コメ、果物、茶葉などの残留農薬、高毒農薬検出、違法添加物の使用、重金属汚染等による有毒食品、動物用医薬品や抗生物資などの超過残留などの事例発生が後を絶たず」(ウィキ)ということですから今回の事件も起こるべくして起きたということではないでしょうか?


この期限切れ鶏肉を使っていたとされるファミリーマートの中山社長が「信頼関係を裏切られた。結果として国内のお客様の信頼を裏切ることになり大変申し訳ない」とコメントしていますが、中国でこれだけ問題が頻発している上に同社として取引を始めたばかりなのに「信頼関係」があったという意味がよくわかりません。その上「信頼できるほかの中国の業者を探し…」としたところで炎上してしまいました。この社長は口下手すぎます。

なぜこのような事件が頻発するのか、と考えると従業員や会社経営者の倫理観と愛社精神への欠如ではないかと感じます。拝金主義と個人主義の同国において最も大切なのは家族、お金、不動産、貴金属。それを得るための手段なら問わない、としてしまっては言い過ぎかもしれませんが、多くの事件で共通してみられる根本原因であります。

中国では従業員の定着率が悪いとされています。雇ってもすぐ辞めるため日系企業も従業員教育に頭を悩ませているようです。なぜ辞めるのかと考えた時、「自分が外資のもとでは偉くなれない」「日本人支配の会社だから」というのはその次のステージの問題でしょう。それよりは、もともと汗水たらしてひたすら努力という積み上げ思想が足りない気がします。その点、アメリカ型思想に似ているといえば似ています。つまり、会社と従業員の結びつきの線が細く、その関係は賃金だけであるといっても過言ではないと思います。

会社に不満があればすぐにストライキをするし不正もする、あるいはやれと言われたことはそれが倫理に反していても行うことは文化大革命の常軌を逸した行動を見ればわかるかと思います。

一方の日本。信頼とは何か、と言われれば相手の言ったことを信じることですが、世界ではそれは通用しないということであります。性善説と性悪説があり、日本は基本的に相手を信じるスタンスですが、海外でそんな人の良いビジネスをしたらすべて巻き上げられます。私が海外で20数年もビジネスを続けることができたのは誤認と騙されやすい環境の中で何が正しいか自らの尺度で納得できるよう解明して事業推進するからであります。つまり、裏を取ること、対策を立てること、相手を常に天秤にかけ続け、(相手を)安泰の地位に置かないことなどなどであります。

では日本なら大丈夫かと言えばそんなことはなく、まだ記憶に残るアグリフーズの農薬混入事件がありました。あの事件の原因は犯人が会社に対しての待遇面を含めた不満を会社側が全く関知していなかったことにあります。これもある意味、性善説で「うちの従業員に限って…」ということになっているのです。ではなんでも疑いをかければよいかといえばそれでは長年蓄積された日本型信頼関係は崩壊してしまいます。

私が必要と感じるのはコミュニケーションだと思っています。日本でビジネスをしていると「○○の件はどうなっていますか?」と聞けば「それは協力会社の△△社が担当していて任せています」という回答が多いのです。つまり、全部他人任せ。今回の鶏肉事件もファミマが取引前に50項目に渡る品質検査を実施し、通過したというのですが、それはごく一面の判断でしかありません。なぜなら検査は試験項目だけ見繕うことも可能なのです。取引前、取引後も含め、業者と様々なコミュニケーションを通じてあらゆる情報を寄せ集め、分析し、トップまで含めてそれをシェアするぐらいの構えが必要だということでしょう。

マックやファミマが高いレベルのサービスや商品の品質をいくら提供してもたった一か所で不具合があればすべての商品、信用、積み上げた実績は崩れ去るのです。車のタイヤにごくわずかの穴が開いていたら立派な車でも走れなくなるのと同じなのです。

発想を転換すれば、日本は価格重視から品質重視もっと敏感になってくる気がします。今回は鶏肉でしたが農業、畜産業含め日本の良さは国内外に売り込める余地が大いにあるともいえるでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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