FedからのXマス・ギフトは「相当な期間」の維持 --- 安田 佐和子

2014年12月19日 00:10

12月16-17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)、注目の「相当な期間(considerable time)」の低金利維持は、市場予想に反して維持してきました。欧州中央銀行(ECB)が期待はずれに終わった半面、イエレン・サンタが今年最後のFOMCでクリスマス・ギフトを届けてくれたといっても過言ではありません。おかげ様で、ダウ平均は288ドルもの大幅高で引け。週足でも、そろって上昇に転じました。イエレン議長とマーケットの蜜月関係、復活といった感があります。

「相当な期間」を据え置きながら、出口政策ののろしとなる「忍耐強くなれる(patient)」も、きっちり盛り込みました。とはいえ利上げを見極める上での材料として「金融市場」を加えたほか、インフレ低下に配慮した内容も挟んだたため、全体的にハト派寄りへ軸足を移したといえます。FF先物でみた2015年9月の利上げ織り込み度は50%となり、声明発表以前の60%から低下しました。

スターン・アジーのリンジー・パイザ米主席エコノミストは、声明文につき「『相当な期間』を残しつつ『利上げに忍耐強くなれる』との文言を加え、スムーズな出口戦略を進めている」と指摘。2015年のFOMC投票メンバーは「今年と比較し格段にハト派が優勢となる」こともあり、第1弾の利上げ時期を「2016年」で据え置きました。

バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、「『忍耐強くなれる』との文言を採用するにあたり『相当な期間』を残した理由は、マーケットの利上げ観測前倒しを避けるため」と説明。第1弾の利上げ時期を「2015年半ば」で維持しつつ、「インフレ下方リスクに合わせ先送りの場合もありうる」と付け加えています。

イエレンFRB議長の記者会見で、ポイントは以下の通り。

1)FOMC参加者は大多数が、2015年の利上げを予想

2)緩和的な政策を維持

3)向こう2回にわたって利上げはしない

4)原油安はインフレ抑制要因

イエレン議長が「向こう2回にわたって利上げしない」という明言したのは、興味深いですね。原油安とインフレ鈍化リスクを踏まえ利上げするとは見込まれないものの、「6ヵ月発言」で懲りたにも関わらずあえて具体的な数字を漏らしています。つまり、3回目となる2015年4月28-29日開催のFOMCで、何かが起こる?

経済見通し改訂版は、原油安を背景にPCEインフレを大幅に下方修正しコアPCEも引き下げた一方で失業率はさらなる改善を見込んでおり、二大統治目標の進展にかい離がみられます。

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第1弾の利上げ時期の予想は、2015年が15人、2016年は2人でした。前回の2014年が1人、2015年は14人、2016年は2人から、2015年へ収束しています。

FF金利誘導目標は、2016年の中央値が9月の2.875%から2.50%へ低下したように全体的に下方修正されました。

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ドット版、12月分。

dec-fed-dots

9月分は、こちら。

dec-ff2

声明文の主な変更点とポイント

【景況判断】
前回:「労働市場はいくらか一段と改善」


今回:「労働市場は一段と改善」

※”いくらか”を削除。米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が2012年1月以来の高水準に達し、失業率は5.8%まで低下していた。

前回:「概して、一連の労働指標は労働資源の活用不足が徐々に減退していることを示す」


今回:「概して、一連の労働指標は労働資源の活用不足減退を示す」

※”徐々に”を削除。米11月失業率は5.8%と10月に続き2008年7月以来の6%割れを示現し、9月FOMC時で公表した経済・金利見通しのレンジ下限を割り込んだ。米新規失業保険申請件数も30万件割れを維持している。

前回:「インフレは委員会の長期的目標を下回る推移を続けている。」


今回:「インフレは、エネルギー価格の下落を一部反映し、委員会の長期的目標を下回る推移を続けている。」

※6月以降で40%以上も下落し5年半ぶり安値をつける原油先物に配慮。米11月消費者物価指数は前月比マイナス圏に振れただけでなく、2008年12月以来の水準へ落ち込んだ。

前回:「マーケットベースのインフレ期待は幾分低下した」


今回:「マーケットベースのインフレ期待はいく分、低下が進んだ

※”進んだ(further)との文言を追加。5—10年後の期待インフレ率は、10月のFOMCの時点に2.21%だったものの、足元は1.97%まで低下。

【統治目標の遵守について】

前回:「委員会は適切な緩和政策によって経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働指標とインフレは二大目標に沿う判断する水準へ向かうと予想する。」


今回:「委員会は適切な緩和政策によって経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働指標は二大目標に沿う判断する水準へ向かうと予想する。」
※インフレを削除。足元の物価動向に配慮か。

前回:「インフレは短期的にエネルギー価格やその他の下落によって押し下げられるだろうが、委員会はインフレが統治目標の2%を継続して下回って推移する可能性は年初からいく分減退したと判断する」


今回:前回の文言を完全に削除し、「委員会は労働市場外地団と改善し、エネルギー価格やその他の一時的な効果が後退すれば、インフレは緩やかに2%へ上昇していくだろう」へ差し替え。
※同じく、インフレ低下に対応か。

【量的緩和策について】

前回:「委員会は、現状の資産買入プログラムを導入してから労働市場の見通しが大いに改善したと判断する。さらに、委員会は経済全般が最大限の雇用と物価安定への進展を支援するに十分な強さがあると認識する。それに応じ、委員会は今月での資産買入プログラム終了を決定した。委員会は、政府機関債と政府機関が発行する住宅ローン担保証券(MBSの償還元本を政府機関が発行するMBSへ再投資するという既存のプログラムを継続し、満期を迎えた米国債のロールオーバーを入札にて行っていく。委員会が非常に大きな長期債保有高を維持する政策を通じ、緩和的な金融環境が支援されるだろう。


今回:「委員会は、政府機関債と政府機関が発行する住宅ローン担保証券(MBSの償還元本を政府機関が発行するMBSへ再投資するという既存のプログラムを継続し、満期を迎えた米国債のロールオーバーを入札にて行っていく。委員会が非常に大きな長期債保有高を維持する政策を通じ、緩和的な金融環境が支援されるだろう。
※QE終了に合わせ、文言を修正。

【政策金利について】

前回:「委員会は最大限の雇用と物価安定の改善を支援するにあたって委員会は本日、0—0.25%のFF金利誘導目標レンジが適切と判断した。目標レンジをどの程度維持するかは、最大限の雇用とインフレ目標値2%への進展を実際の数値値および期待値と合わせて評価していく。」


今回:「最大限の雇用と物価安定の進展を支援するにあたって委員会は本日、0-0.25%のFF金利誘導目標レンジの維持を適切と判断した。どの程度維持するか決定する上で、委員会は最大限の雇用と2%のインフレ目標値ヘ向かう進展を実際の数値および期待値と合わせて評価していく。評価に際しては労働市場の状態、インフレ圧力とインフレ期待、金融市場の動向を考慮していく。」
※最低限の雇用と物価安定への進展を見極める上で、労働市場とインフレ以外に金融市場を追加。

前回:なし


今回:「足元の評価を元に、委員会は金融政策スタンスの正常化の開始に忍耐強くなれると判断する。」

※2004年当時にならい、利上げの地ならしとして”忍耐強くなれる(patient)”を追加。

前回:「委員会は現状の評価に基づき、特にインフレが長期目標の2%を執拗に下回り、インフレ見通しが長期的な目標である2%を下回り抑制的であり続ければ、今月に(追加)資産買い入れプログラムを終了した後もFF金利誘導目標レンジを現状で据え置くことを適切と予想し続ける


今回:「委員会はこのガイダンスが、資産買い入れを10月で終了させた後も、特にインフレが長期目標の2%を執拗に下回り、長期的インフレ見通しが抑制的であれば、FF金利誘導目標を0-0.25%で相当な期間維持するとの前回の声明に沿うと見込む。」
※”今月に”を削除。”相当な期間”を維持するとともに”(利上げに)忍耐強くなれる”と文言を追加したものの、金融政策スタンスとして整合性があると説明。

【票決結果】

今年最後のFOMCで、反対票は3票となり前回の1票から増えた。ダラス連銀のフィッシャー総裁は、第1弾の利上げ開始に忍耐強くあるべきとはいえ、10月以降の経済活動は改善が進んでおり委員会の多数が利上げを予想する時期より前倒しすべきと主張した。

前回に続き、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁も反対票を投じている。インフレ見通しの低迷とマーケットベースでの長期インフレ見通しが低下するなかでの今回の決定は、2%というインフレ目標値の信認性を阻害しかねないとの見解を示した。

フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は、7月と9月と合わせ今回で3回目の反対を表明。声明文は経済状況の改善を踏まえ、フォワード・ガイダンスとして「相当な期間」を維持すること、同文言と「忍耐強くなれる」と併記し不変性がない点を強調することに異議を唱えた。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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