人海戦力の日本 --- 岡本 裕明

2015年01月30日 14:37

カナダと日本を往復していていつも思うのは日本には職員が溢れている、という事でしょうか?

羽田国際線ターミナル。到着する飛行機は概ね10-15分おき。ところが羽田も国内ハブだけでなく国際線のハブとしての機能が強化されつつあり、カナダから羽田で降りる人はざっと3割程度でしょうか?(成田着のJALはもっと少ない気がします)その程度の乗降客となると観光ピークの時期を別とすれば歩けば靴音が空港内の建物に響くほど閑散としているのです。


が、そこに待ち構える税関職員。税関のレーンは閑散としていて20名ぐらいの職員が手持無沙汰の状態であります。たまたまそういうときだったのだろう、と言われるかもしれませんが、私も年間6-7回は動きますからそれなりに見させてもらっています。

先日、中学校時代のクラスメートと飲みながら歓談した中で日本と外国の仕事のやり方について意見が大きく食い違ったのが「人の使い方」であります。彼は大手広告代理店で長年人生を賭けてきたのですが、早期退職募集に知らぬ間に手を挙げていたというのです。なぜ中途半端な年齢で会社を辞めたのか、と聞くと、平時でも帰社は午前2時、3時が当たり前、ひどい時は3か月家に帰れず、人生をこのまま終わらてはいけない、と感じていた矢先だった、とポツリ、ポツリと述べるのです。

しかし、広告代理店は顧客の販売、マーケティングを達成するために戦略を策定し、その作業部隊に仕事を発注するわけだから広告代理店の人間がなぜそこまで残業しなければならないのかと聞けば張り付かないと期限に間に合わない、思った通りのものができないというのです。あるいは顧客との会議は延々と続き、結論が二転三転とし、そのたびにデザイン事務所や制作会社に方針変更を伝えなくてはいけない、というわけです。

私はそれを聞いた途端、「君、それは顧客が決められないからでしょう。だから期限という制約まで一生懸命考え、方針を変えながらその努力をしたことをアピールするとともに最後、責任をどこかに転嫁したいのではないだろうか?」と聞き返したところ、その通りだ、と。だから、期限がもっと先にあればもっと違った結論すら出るだろうその意味は誰も確固たる自信を持っていないとも言えるのです。

「作戦参謀」は大いに議論、紛糾しながらも一旦決まった以上は作業部隊は極めて短時間しか与えられず、広告代理店が追廻しをし、皆、へとへとになりながらどうにか作品を完成させる、というシナリオがかなりありそうなのが日本の姿であります。これは正に人海戦力しかないのです。そこで私は「そんなのは作業の非効率ではないか」と更に疑問をぶつけたわけです。

しかし彼の返事は「それが日本のやり方だから」と論理的ではない答えを返してきました。

これは私の想像ですが、日本は売上に対する賃金が安いのだろうと思います。安いから人海戦力が可能なのではないかと思うのです。確かに関東地区だけで全カナダの人口がいます。これだけ密度があれば仕事のボリュームがあり、人件費を吸収できるだけの仕事量もある、とも言えるのです。

私はバンクーバーというカナダの代表的な都会のそのほぼど真ん中で仕事をしていますが、それでも人口密度は東京の10分の1以下でありますから売上も概して少ないわけです。そこには人件費を吸収する枠がないし、それ以上に北米の人件費の単価は高いのであります。サービス残業もないのです。アメリカに来た時、Do it yourselfを体感として初めて覚えたのでありますが、まさにいちいち専門家を呼ばず、こなせるだけ自分でこなすというのがこちらの常識であります。

同じ発想の中に病院への頼り方があります。日本人と話しているとどこか悪くなると「病院に行った方がいいよ」と言いますが、こちらの人は余程でない限り病院に行きません。むしろ予防措置を取ることに気を配っていると言った方がよいでしょうか?ちなみに医療費は無料です。タダでも行かないのがカナダの病院という事であります。つまり、できる限り自助努力をし、最後ダメな時だけ専門家に頼るわけです。

日本の低い生産性ということがよく言われます。そんな中でデパートに行くと面白いことがわかります。ユニクロでは掛け持ちスタッフが臨機応変にレジや接客、商品陳列をマルチプレーしますがデパートの店員は自分の売り場の自分の仕事に専念します。

日本の人海戦力は週末や繁忙期といった特定の時間に集中する忙しさへの対応には適していますが、それ以外の閑散期はあまりにも無駄な動きをしているケースが目立ちます。北米で長く仕事をしていると「手持無沙汰」は理解できない現象であります。逆に言えば日本では人が足りないと言われていますが、合理化すればまだまだ雑巾は絞れるようにみえます。

仕事の効率化を改めて考えるにはとても良い機会であったように思えます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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