日中韓外相会談の向かうところ

岡本 裕明

日中韓の外相会議が3年ぶりにソウルで行われました。私は会議が行われたこと自体に大きな進捗を感じています。直接的な成果は見られなかったようですが、継続すること、そして首脳会議をしかるべき時に行うことで一致したという事だけでこれは二歩も三歩も前進したと思っています。


正直申し上げるとこのところ外交で何か動いている気がします。アメリカを含めなにか大きな力がかかっていて我々に見えないピクチャーがあるかもしれません。不思議話はたくさんあります。メルケル首相が来たことはG7の下地作りだとしても慰安婦問題に口をはさむとは思っていませんでした。ミシェル・オバマ大統領夫人が来たことはこのタイミングとしてはやや不思議な気もします。それよりも麻生大臣がAIIBの参加に含みを持つ言い方をしたことが尚更気になります。

日本側が気にする動きとして考えらえるのは4月下旬の安倍首相の訪米、およびアメリカ議会での演説でしょう。TPPを早く決着をつけたい両国の意図に対し相当まとまったとされている中での訪米、首脳会談です。ならば大きなアナウンスをその時行うシナリオはないとは言い切れません。前回の首脳会議の時は交渉の亀裂があまりにも大きく、その目的は達成できず、寿司屋外交だけが印象に残ったのですが、今回は本気かもしれません。

ではアメリカ議会での演説。アメリカ側からするとこの議会演説を押し込んだのは共和党であるという事です。安倍首相とウマが合わないとされるオバマ大統領が議会演説の演出まではしないでしょう。では、最近、共和党が送り込んだ外国首脳の議会演説といえば先週、再選を果たしたネタニヤフ イスラエル首相であります。この時はアメリカ民主党議員はかなり欠席者がでていますが、安倍首相の時はどうなるでしょうか?多分、首脳会議をし、一定の成果を踏まえたうえでの議会演説となれば共和、民主云々はないと思います。満場が期待できるでしょう。

次に日本側としてはその演説の内容に注目するでしょう。安倍首相の演説は耳にタコができるくらい聞こえている中で新たな切り口として期待できるポイントは三つ。TPPと戦後70年の件、そして日中韓アジアの和平と成長であります。今回、日中韓の外相会議が実施されたことは少なくとも三国間にある歪の修正に進歩があったことをアピールするには大変効果的であります。

戦後70年のステートメントがいつどのような時にどのような内容で発表されるのか、これは有識者会議の進ちょく状況、及び絶妙のタイミングを見計らった上でのことになるでしょう。8月15日にこだわる必要はないと思います。

ここから類推できることはアメリカを含めた4国間の間でなにかしっかりした方向性を作り上げる作業が進んでいるかもしれません。確かに中国と日本の間における問題、特に尖閣についてはすっーと収まった状態になっています。思えば尖閣問題が民衆により扇動された時、中国に於ける日本企業や日本人は苦汁を舐めることになりました。しかし、ボイスが止まると爆買いといった平和的な関係が復活しました。これは正に政治主導でした。となれば今、注意しなくてはいけないのは慰安婦問題なのであります。

残念ながら私のいるカナダ、バンクーバーのすぐそばで新たな慰安婦像建立計画があり、面倒な事態になっています。しかし、このデモンストレーションとも言える問題は第三国であるカナダでそこに居住する日韓の住民達が熱くなる問題ではないのです。

本質的には日本と韓国の政府の間で納める問題であります。よって昨日の日韓外相会議では本案件は平行線だったようですが、政府レベルで話が進んでいるという事は尊重すべきであり、双方国民をあまり刺激しない戦略はありうると思います。そういう意味では慰安婦像が新たに建立されるのは余計な火種を作り上げることになるのですから政府間で鋭意進める交渉に水を差すことになるかもしれません。バーナビー市の賢明なる判断を期待したいと思います。

世界の力関係は今、実に微妙な気がします。経済、社会、思想、宗教、制度、歴史など多くのエレメントを抱えながらそれぞれの国の立場が入り乱れます。そしてインターネットを通じて拡声されたボイスが時としてエキストリームになり、コントロール不能にすら陥ります。そのためには政府レベルがきちんとしたボイスを流すと同時に一定のディスクローズもしてもらいたいものです。

日中韓プラスアメリカの外交で我々に見えない何か仕掛けがあるなら私はその大きな絵に期待をしたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本 見られる日本人 3月22日付より