六大学野球から東大を外すべきなのか

2015年05月24日 07:00

どうも新田です。野球記者時代、東京六大学野球を担当したことがありますが、東大戦を真面目に見たことはなく、ネット裏のプロ球団スカウトからドラフト情報収集したりとか記者席でほかの記事を書いたりとかして過ごした不届き者です。ところで昨日は、東大がリーグ歴代最悪の連敗を「94」で止めたわけですが、東大卒業生の方のSNSの反応から、六大学野球や東大野球部のブランドについて考えてみました。


東大勝利

■東大OB反応いろいろ
Facebookでは某有名出版社に勤務するOBの編集者氏がスタンド観戦されていて喜びのシェアをされており(写真はその方からのご提供です)、ツイッターでは私の速報ツイートを法学部出身の政治家の方がRT。著名人では、茂木健一郎先生も東大の池上高志先生の投稿をRTされておりました。

一方、同じ東大OBでも冷めた見方をされている方もおられまして、池田先生なんかは「リーグ改組」を言及されておられました。


■入れ替え制のない六大学は生ぬるい?
このあたり、アスリートをリスペクトしているスポーツファンの中でも、入れ替え制が整備されているサッカーのファンからは「なんで六大学野球は入れ替えしないの?」みたいな見方をされるかもしれません。

実は私もかつては「入れ替えのない六大学は生ぬるい」「東都と交流戦をやる等の構造改革をすべき」と一時期思っていたこともありました。大学野球の担当記者は、週末は六大学、平日は東都大学リーグを取材するわけですが、東洋、亜細亜、青山学院、駒沢などプロ球界に実力者を数々輩出してきた東都の選手たちは、それこそ「ハングリー」の塊。それというのもまさに生存競争の世界で戦っている姿に圧倒されます。

平日真っ昼間のスタンドは応援団とプロ球団のスカウトとか人影はまばら。昔の川崎球場どころじゃない閑古鳥。早慶戦のような華やかさなど全くなし。。。それでも神宮は檜舞台で、試合に負け続け、最下位になり、2部優勝チームとの入れ替え戦に負ければ、隣のゴルフ場と併用している第2球場で試合をする悲惨な日々になるわけです(※)。一球一球、フェンス際の難しいファウルボールを追いかける様なんかも、「ゴルフ場なんかで野球をやりたくない!」という危機感、真剣さが伝わって来るわけです。

市場競争、経済合理性、実力主義を重視する価値観の人であれば、前述のように六大学の構造改革を考えられるところ。私もサッカー的に構造改革したほうがいいのではと思っていた中で、記者だった当時、六大学のある監督さんがある日、ポツリと言われたんですよ。「野球の実力のことだけを考えれば東大を六大学から外すべきという意見をよく聞くが、東大あっての六大学野球ということを忘れちゃいけないんだ」。当時はピンと来なかったんですが、きのうふと思い出して考えてみたんですよ。

■東大ブランドのメディアパワー
そもそも六大学のブランド価値は何でしょうか?ブランドを構成している要素を考える上で、ブランド・エクイティ(BE、ブランドの資産価値)という概念があります。BEは「ブランド認知」「知覚品質」「ブランド連想」等の構成要素があるわけですが、六大学のBEを考えてみると、ブランド認知という点で、世界三大学生スポーツの一つ(と早慶の人が言っている)「早慶戦」があり、「六大学」というワード自体がもはや野球の枠を超えて社会的にも定着しています。

そして、「頭がいい」「文武両道」といった東大の社会的信頼性が野球とは違う文脈での付加価値が知覚品質となっている側面があるように思えます。

BEは、企業合併のときの買収価格や、ブランドのライセンス料を見積もる際にその評価を額面に算出するわけですが、昨日の東大の勝利は広告効果としてみると、通常の大学野球のコンテンツでは生成されないパワー、リーチ力があります。夜中にこれを書いているので朝刊紙面を見ていませんが、このリンク先の朝日の記事には、勝ち投手の柴田君を「柴田投手」と書いていますので選手名を呼び捨てにする運動面ではなく、社会面の記事と推察されます。つまりスポーツのニュースにとどまらず、スタンドの雑感も含めて「社会現象」として報じられているわけです。

「呪いがとけた」「歴史的瞬間」 東大勝利にOBも歓喜
東京六大学野球の春季リーグ戦で23日、東大が法大に6―4で勝ち、2010年秋から続いていた連敗を「94」で止めた。東大が法大に勝ったのは08年秋以来。勝ち投手になった柴田叡宙(あきひろ)投手(京都・洛星高出身、2年)は「自分が連敗を止めるつもりで入学した。ほっとした」と喜んだ。

さらにNHKの7時のニュースも、地上波での大学野球の報道が珍しくなったご時世にあって、ちゃんと映像付きで報じるわけですから、改めて東大ブランドの大きさを物語っています。

■伝統芸能化に甘んじるか?構造改革をすべきか?
これらを考慮すると、東京六大学が大学野球界の中での特別な存在として継続したいのであれば、やはり東大ブランドを早慶戦以外に取り込み、参入障壁を継続することは合理的なのかもしれません。しかし、六大学野球も早慶戦以外はまともに観客が入ることもなく、斎藤佑樹投手の早大卒業後は世間的にほとんど見向きもされていない状態に逆戻りしています。

ある意味、旧来型のブランド保持、伝統芸能化することで良かれという日本的な保守性を象徴するようでもありますが、球界を見渡せば、侍ジャパンプロジェクトによるプロ・アマ活性化策の模索など、新風を吹かせようとする動きもあります。東京六大学野球が、今後も規定路線を取り続けるべきなのか、そうした新しい動きに連動して大学野球の構造改革をすべきなのか、ブランド戦略の視点から考えてみると面白いかもしれません。ではでは。

【※追記 24日16時】東都大学リーグ2部は2014年から、神宮球場または各大学のグラウンドで行われています。ま、それでも各大学のグラウンドで試合というのが2部の悲哀を残しているわけですが。。。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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