まもなく“落城”1周年~朝日新聞の広報戦略

2015年09月08日 22:00

どうも新田です。開き直りと言い訳を自戒しております。
ところで徳力基彦さんがアドタイへの寄稿で、例のステマ問題との絡みで「PR」という言葉の使われ方について根本的な問題を提起されていました。PRとはパブリック・リレーション、つまり「大衆との関係性づくり」なわけですが、日本では宣伝と同義的に使われ、徳力さん風に言うと「PR会社=広告会社、宣伝会社、という脳内変換がされている」というわけです。


朝日本社
記事のタイトルが「真面目なPR業界の方々は「PR」という言葉を諦めて、「広報」に統一した方が良いのではなかろうか」という刺激的なものではありますが、メディアで取り上げてもらうだけがPRの仕事ではなく、何か事あらば消費者、株主等々ステークホルダーに理解を促すようコミュニケーションを図るという基本軸を思い起こしてもらればと思うわけです。

■新聞社では異例の事業説明会
書き出しが長くなりましたけども、新聞社の広報部門というのは本来、実はそうしたリレーションシップ、社外への働きかけという視点が不足しております。上場もしていませんので、主眼としているのは社内用の広報誌を作るとかインナー広報です。まあ、もともと攻めに強く守りに弱い、つまり「取材する側」であって「取材される側」ということを意識していなくてもいいわけですね。それこそ対外的には、社員が何かやらかしたとか、記事の件で訴えられた的な時の公式コメントを作るといった受け身の危機対応が主な仕事なわけです。読売の場合は歴代若手の広報が、主筆様の囲み取材に同行してそのやりとりをメモ上げするみたいな仕事もあるわけですが、これも守りの広報の範囲にカウントされます。

だから、去年の9月11日に従軍慰安婦問題と吉田調書の誤報を認めた時の朝日新聞なんかは、その守りの仕事の極地だったわけで、お疲れ様でした、という次第です。そして、もうすぐ1年が経つのでどうするのかと思っていたこの頃、この7日に新聞社としては異例の事業説明会を開催しました。あいにく都合がつかず行けなかったのですが、編集長の亀松さんが元朝日記者でもある弁護士ドットコムさんでその模様が伝えられております。

信頼回復に向けた改革について、「まだまだ道半ばであるし、その道が大変厳しいものであることは承知している」としながら、「多様化する社会のなかで、判断の材料になるものを過不足なく、幅広く提示していくことで、私たちがいつまでも必要とされるメディアであり続ける。そういうことを目指し、精進してまいりたい」と語った。

判断の材料提供を過不足なく提示していくというあたりは、掛け声倒れに終わるか、まだまだ課題山積なわけですが、企業広報視点で興味深かったのはこちら。

同社では今年4月から広報体制を大幅に見直し、スタッフも拡充した。「日々のニュースを報道するだけでなく、私たちが取り組んでいる業務のなかにもニュースとして伝えるべきものがあれば、伝えていきたい」(渡辺社長)。この日の事業説明会も、そのような広報強化策の一環だという。

■広報の現場は変化の兆しも…
守りの広報から攻めの広報というと言い過ぎかもしれませんが、対話性と透明性を上げ、ネットメディアも巻き込んで世間の自社理解を促そうという現場の努力は一定の評価はあってもいいかと思います。むしろ、会社が危機的な状況に瀕したからこそ、新聞社の広報としては他でやっていない取り組みをする発想が出てきたと言えると思います。

しかし、安保法制や戦後70年談話、国会前デモあたりの報道や論調ぶりを見ていますと、相変わらずの左旋回という感じは致します。慰安婦報道でも関与が取りざたされた社会部系の人たちが虎視眈々と復活の目を狙っているのではないか、という疑義もあって、それこそ池田先生やグロービス堀さんあたりから突っ込まれる要素はいっぱいあるわけで(苦笑)、本質的な部分が変わったのでなければ広報やブランディングという“化粧”をしたところで化けの皮が剥がれてしまいます。

反面、まあ、朝日の面白いところはメディアイノベーションの取り組みについては積極的です。この1年半、新聞業界でもネットとデジタルで一番強いというブランディングは形成されましたのは間違いありません。このあたりはアナログ路線に拘泥する読売とは、ペナントレースでいうと15ゲーム差くらいは付いているのではないかと思います。

私が朝日の広報さんの立場にいるとすれば、サヨDNA的な部分は変わらないと思うので、そこのところはもう諦めて、社内で「政治部VS社会部」の権力闘争を勝手にやらせておきつつ、後者の先進メディア的なブランドイメージを確固たるものにする路線を採りますね。あえて政治的なイシューと切り離し、業界誌なりビジネスメディアなりに働きかけ、ハッカソン的な斬新なイベントをどんどん開催するなりしていくと思います。対話性と透明性は、ネットらしさも兼ねますんで、ちょうどいいと思うんですよ。

■ハフポストの件は相変わらず対話性なし
しかし、この落城1周年のタイミングで振ってわいたのがハフィントンポストのステマ”えん罪”問題。私の記事が問題を指摘した後も、開き直りの記事を掲載したのには呆れますね。

ハフィントンポスト日本版における広告クレジットについて
ノンクレ記事は、読者が編集記事と誤って読んでしまう悪質なものであり、ステルスマーケティング(ステマ)と呼ばれ、優良誤認として景品表示法違反に問われる可能性があります。ハフポスト日本版はこのようなステマ行為に加担することは一切なく、今後も厳しく対処していく所存です。

さようか。
おっしゃることは一見もっともらしいんだけど、事前説明もなく一方的に名指しされた方々からの指摘に対してはどうお答えになるんでしょうかね。削除基準の詳細もいまだ明らかにされていません。対話性も透明性も全く感じられず、これでは朝日本社の広報さんも頭の痛いところではないでしょうか。今後どうするのやら。「9・11」まで、あと3日です。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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