「パリ同時テロ」で殉職した警察犬 --- 長谷川 良

2015年11月25日 13:15

パリ同時テロ事件が発生して以来、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)について考えてきた。同時に、犠牲となった人々の運命を考えざるを得なかった。突然、人生を失った人々、その家族、友人、知人たちにとってどれだけ無念だったことだろうか。

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▲警察犬とその指導官(オーストリアの警察犬を報じる同国内務省発行雑誌「公安」から)

米国内多発テロ事件以来、テロは世界各地で発生し、その度にメディアで詳細に報道されてきた。テロの脅威をメディアを通じて知るだけで、身近に感じることは少なかった普通の人々が突然、テロリストの銃弾のターゲットになり、犠牲となった。その衝撃は大きい。

ところで、パリ近郊のサンドニで18日早朝、警察部隊とテロリストの間で激しい銃撃戦が起き、5人の警察官が負傷したが、出動していた警察犬ディーゼル(Diesel)がテロリストの銃弾の犠牲となった。そのニュースが世界に伝わると、大きな反響があったという。多くの人々が殉職した犬に心が揺り動かされたことが分かる。

当方も警察犬ディ―ゼル(7歳)について考えた。当方はこのコラム欄で「なぜ、警察犬は短命か」(2012年5月22日参考)というタイトルの記事を書いた。普通の犬たちとは違い、警察犬は激しい訓練を受ける一方、危険な状況で冷静に対応しなければならない。

3年前のコラムでも書いたが、警察犬はストレスの状況下で生きている。出動を受けたその時、日ごろの訓練を発揮する時だ。その臭覚をフルに駆使し、爆弾物、異常な対象を見つけなければならない。時には犯人と対決しなければならない。命がけの使命だ。そのような状況下に生きている警察犬は短命だという。残念なことだが、当然かもしれない。極度のストレスが人間の健康を害するように、犬にとってもその寿命を縮めるわけだ。

サンドニに出動したディーゼルはどうだったのだろうか、どのような訓練を受けてきたのだろうか。ネット上で見るディ―ゼルの写真は堂々としている。殉教した犬は生涯最大の使命を受け、警察官の前にテロリストが潜む家屋に近づいていったのだろう。

犬は人間の最高の友だ。同時に、助け手でもある。盲導犬を見れば分かる。その盲導犬も普通の犬の平均寿命より短いと聞いた。人間が背負っていけないような重荷を人に代わって背負っていく。その姿は神聖だ。媚びることも、己惚れることもない。与えられた使命を忠実に行う。これを神聖といわずに何といえばいいのだろうか。余りにも身近にいるので、われわれは犬への感謝を忘れがちだ。

もちろん、犬にもさまざまな気質がある。全ての犬が忠実だと断言していない。無条件の犬賛美ではない。9年前に「西側に亡命した犬」の話を書いたことがある。主人、その環境が良くないと、犬は逃げ出すことだってあるからだ。このコラム欄ではあくまでも警察犬に焦点を絞っている(「西側に亡命した犬の話」2006年10月24日参考)。

愛犬家のプーチン大統領が先日、殉職したディ―ゼルの代わりに、1匹のジャーマン・シェパードをフランスに贈ったという話が報じられた。

 “ピンポン外交”ではないが、殉職した犬がきっかけでウクライナ紛争で険悪化してきた西側とロシアとの関係が改善に動き出すかもしれない。そうなれば、“ディ―ゼル外交”と呼ぼうではないか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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