国会議員に育児休暇は本当に必要なのか?

国会議員に「育児休暇(育休)」は本当に必要なのか?

国会議員の宮崎けんすけさんが育児休暇を取るということが話題になっています。これについて宮崎さんを応援する方が多いと思うのですが、一般人の育休と同じように考えることは間違っています。

国会議員は通常の会社員とは全く異なる労働環境にあるため、国民としては「新しい流れ!」ということで単純に歓迎すれば良いという話ではありません。

国会議員の労働環境・福利厚生環境とはどのようなものか?

国会議員の正規の労働環境・福利厚生環境は下記の通り。

・国会出席は週3日程度(国会開催は9:00~17:00)
・年間・約4000万円の現金支給(給料、期末手当、文書交通通信滞在費、立法事務費)
・公設秘書2名、政策秘書1名のスタッフの支給
・JR特殊乗車券、国内定期航空券の交付
・東京の一等地に議員宿舎の提供

ということになります。つまり、正規の仕事は週3日9時5時でスタッフ3名も税金で供給されるというのが国会議員です。正直に申し上げて、およそ「育児休暇」が必要なほど忙しい仕事ではありません。

再就職(再選)と出世のための個人の政治活動が大半を占めているのではないか?

国会議員が忙しいと主張する仕事の大半は、地元の声を聴くという名目の再選に向けた政治活動です。東京に選挙区を持たない議員は「金帰火来」という金曜日に地元に帰り火曜日に東京に戻る生活が一般的です。

さらに、自民党であれば、党内の部会などの勉強会や各種団体との対応など、自分の勉強&党内意思決定&出世のために必要な「党務」をこなすことが求められます。

しかし、これらは自らの再選や党内出世のためのプロセスであり、国会議員として給料が支払われている本来の職務とは異なるものです。地元活動であれば地元有権者、党務であれば政党の幹事長と話して個別に了承を得れば良いだけの話であり、国会を休むこととは質的に異なります。

つまり、公務員としての国会議員の仕事をこなした上で、自営業者としての政治活動家としての地元活動を減らし、なおかつ同業組合である政党の党務を欠席すれば負担は激減します。国会議員の仕事と自分個人の仕事を混同して考えていることに問題があります。

育児休暇自体は否定しないが、「国会議員」の仕事環境ならば育児休暇は不要

以上のことから、「国会議員」に育休は不要であると思います。社会全体としての育児休暇の必要性を否定しませんが、育児休暇は無条件に認められるべきではなく、その職務との見合いで本当に必要かどうかで判断されるべきものだと思います。

宮崎さんは、ご自身のブログで、

「しかし、次世代の日本のあり方と、女性が輝く社会を実現するための男性の支援を促すためにも一石を投じたいと考えました。勇気を振り絞り、またこの一歩が大きな道に繋がることを信じて前に進もうと決心しました。」

「※私はただ単に休暇を取りたいのではなく、育児をするライフスタイルを作り出すことを目的にしています。当然ですが毎日、私の事務所とも電話やメールで連絡を取り合いますし、地元の皆様の要望などを承る体制は整えます。」

と述べられています。軽薄な有識者らは表面的な判断で応援するかもしれませんが、国民に対して上から目線で啓蒙するような話ではありません。

国会議員の責任を放棄して、自分の政治活動についてはしっかりやります、とはどういうことでしょうか?国民に対して「俺も育児休暇をやるからお前ら見習えよ、ただし俺はお前に雇われたこと以外の別の仕事はやるけどな」という話とほぼ同義だからです。

国会議員以前に大人として当たり前の対応を社会に見せることのほうが重要である

宮崎さんの場合は予算委員会に所属されていますが、国会議員として自覚があるなら、開催日数・重要性度の観点から予算委員会の委員を今期は辞退するなど、自ら職務内容の調整を申し出ることも大人としてのケジメだと思います。(本会議について欠席届を毎回提出すると報道されていますが国会軽視甚だしいです。)

最後に、この流れが地方議会にまで波及する可能性があることは論外としか言いようがありません。彼らの年間の議会への出席日数は100日前後であり、他の日は基本的に地元活動と党務しかありません。そもそも育児休暇は取るべき人が取るべきであり、それを取る必要が無い人は取らなくて良いです。

今回の一件で各政党の育休に関する姿勢が問われるという主張では「地元有権者」「政党幹部」の判断を問うという意味では妥当ですが、国民全体の奉仕者である国会議員としての仕事の観点から捉えればナンセンスな議論です。

国会議員にはご自身の本来の仕事を見つめ直してほしいと思います。皆さんは国会議員である前に大人として最低限のケジメをつける姿を社会に見せるべきです。

渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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