ホンネで語る!人事座談会〜即戦力の採用成功の秘訣 --- HRレビュー

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売り手市場が続く採用マーケット。厚生労働省が発表した2016年1月の有効求人倍率は1.28倍と、24年1カ月ぶりの高水準でした。採用はますます困難になり、優秀な人材はよりよい環境を求めて流動化していきます。入社後すぐにパフォーマンスを発揮する即戦力人材の採用と、その人材の定着は、どの企業にとっても頭を悩ませる問題といえるでしょう。

そこでHRレビューでは、従業員約50名のベンチャー企業から1,000名以上の企業まで、人事・採用担当4名に集まっていただき、座談会を実施。採用上の課題と対策、即戦力採用の考え方を語っていただきました。今回は、前編として「即戦力人材の採用成功」についてお送りします。

※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。

ダイレクト・リクルーティングの採用成功事例

**座談会メンバープロフィール**

三井氏(仮名)
IT関連企業(従業員:約1,500名)の採用担当

安田氏(仮名)
サービス事業を手がけるベンチャー企業(従業員:約50名)の人事・採用担当

小林氏(仮名)
ソフトウェア会社(従業員:約200名)の人事・採用担当

稲垣氏(仮名)
ECビジネスを手がけるベンチャー企業(従業員:約100名)の採用担当

即戦力人材は“プールする”。継続的に連絡を取り、数年かけて追っている

――さっそく本題に入りますが、優秀な即戦力人材の採用のため、皆さんがどのように採用活動を行っているのか教えてください。

小林:採用と一言で言っても、一定の時期までに人数目標を達成しなければいけない採用と、社内で定めた絶対的基準に則した人材しか採らないケースとがありますよね。当社では、これまで広告媒体を使った採用から人材紹介(以下、エージェント)などあらゆる手段を使い、試行錯誤を繰り返しながら、「基準に届かない人材を採ると、その採用自体が事業成長にマイナスな場合がある」という考えに行き着きました。今では、当社にぜひ来てほしいけれども、当社のことを知らない求職者をいかに振り向かせるか、直接スカウトメールを打って母集団を形成しています。面接にあげる人数が少なくなったなと思ったら、スカウトメールを打つ。質を落とさないことが大事です。

三井:ダイレクト・リクルーティングですね。私は前職の外資系の会社で「エージェントは使うな」という外国人上司の指令により、しぶしぶダイレクト・リクルーティングを始めることになりました。7年前だったので日本ではまだダイレクト・リクルーティングは浸透しておらず、「スカウトメール送付」だけができるサービスはないかと、人材関連の企業に交渉に行ったこともありました。紹介を待っていればいいエージェントに頼るラクさに慣れていたので、当時は、上司に対して「なんて面倒なことをしてくれたんだ」と思っていましたね。

安田:結果として、即戦力採用には直接口説く手法がもっともマッチするという実感はありますか?

三井:あります。むしろ、こちらからオファーしていない人材の採用には非常に慎重になりますね。今は、即戦力人材は“プールする”というのが、基本の考え方。現在進行形で活躍しているのが即戦力人材ですから、いつ動く(転職する)スイッチが入るか、私にも本人にもわからない。2年、3年かけて連絡を取り続け、候補者をデータベース化しています。

小林:それって、プールする目的で面談も行っていますか? いつ動くかわからない人材を追い続けるのは、パワーがかかるのでは……と思ってしまうんですが。

三井:パワーをかけなければならないのは最初の2~3年ですね。プール人材を増やす目的で3年間コンスタントに活動していると、毎月、何らかの動きが出るようになる。そのサイクルができれば、母集団の質と量を担保できます。今は、全社員に「優秀な候補者をリストアップすること」を課していて、プール人材は1,000名ほどになりました。競合他社にいて直接アプローチできない人材に関しては、ヘッドハンターにアウトソースしています。その際も、2~3年かかってもかまわないというスタンスは崩しません。動くタイミングは人によって違いますから。

安田:なるほど。当社は、ほぼエンジニアのみの採用で、年間10名前後という採用規模なので、これはと思った人材には3カ月か半年ごとに、何かしらのコンタクトを取るようにして、転職スイッチが入る瞬間を逃さないようにしています。また、人材をプールするという考え方で、FacebookやTwitterでターゲットとはつながるようにしています。例えばFacebookのニュースフィードを見ていると、転職エントリー的な投稿や、「この人、今の環境に満足していないかも」といったネガティブな部分が察知できたりするときがあるのです。そこを逃さないようにしています。

三井:誰がどうチェックしているかわからないものですね(笑)。私も、継続的に接触して、何かあったときに相談をしてくれるような関係づくりを心がけています。親身になりすぎて「三井さんと話したら答えが出ました! 他社に転職します!」って去っていった候補者もいましたけど(笑)。

安田:採用あるあるですね。でも、その親切丁寧さが「あの会社の採用は良い」といった感じの口コミとなり情報が拡散していくかもしれませんよ。

稲垣:当社も、人材プールをつくってコミュニケーションを取ることに重きを置いています。“常に、優秀な人材の行列ができるような母集団をつくる”ため、会社全体で採用するといった文化や仕組みを入れています。きちんとP/L(損益計算書)にそった成果を出せる人を採用するために、たとえば、営業なら売り上げ、管理部門ならコスト削減を、どれくらいの時間軸で達成できるのか、採用要件のなかにプロットし、プールしてでも採るべき人材かを見極めるんです。

採用ミス・期待値設定ミスを繰り返さないために、採用成果をデータ化

小林:非常にロジカルに採用活動を行っているんですね。

稲垣:そこに至るまでに、たくさんの失敗をしてきたんです。人材を見誤って採用すると、当社のような100名ほどの企業規模だとマイナスのインパクトが大きいんです。そして、期待値を高く見積もりすぎて起こるミスマッチ。とくに、エージェントを使って採用すると、(エージェント側が)候補者の情報を実際より盛ってくることがあり、そうすると入社後に想定していた成果を見込めず、当社も本人も苦しむことになります。こうした失敗を繰り返さないために、「即戦力採用」の定義を明確にし、どんな採用チャネルからきた、どのポジションの人材が機能しているのかをデータ化しました。成果が出ていない広告媒体とエージェントは、一切使わなくなりましたね。

三井:よくわかります。当社にはエージェント主体で採用をしてきた人事経験者が多いので、求職者に直接アプローチするダイレクト・リクルーティングの手法を浸透させるのに苦戦しています。本質的には、1ポジションに一人、優秀な人材の応募があればいい。母集団を形成しなくても即戦力採用できることが理想ですよね。

稲垣:まさにそうです。ポジションごとのコンバージョンレート(採用に至る確率)を100%にすることが真のゴール。ダイレクト・リクルーティングを再現性のある採用手法にするために、より統計的に採用を行う必要がありますね。世の中の動きに敏感になり、最適な人材に最適なタイミングでその人材にスカウトメールを打つなど、個人の判断で行ってきたさまざまな手法も、共有していかなくてはいけません。

安田:自社の状況を踏まえて、採れる方法を自分で考えるのが、採用担当の仕事ですよね。私はエージェントを使った採用の経験が多かったこともあって、入社当初に社長から「エージェントを使ったら評価しない」と言われたときには、「何を言っているんだろう」と思いました(笑)。結果的に、採用弱者である当社をどう求職者にアピールすべきか、考えるクセがつき、広告媒体やエージェントをできる限り使わずに採用できるようになりました。

小林:エージェントを利用するのはラクなんですよね。一度、エージェントの紹介で採用成功した企業は、難度の高い即戦力採用以外のポジションも紹介してほしいと依頼することが多いようです。採用担当者はエージェントに頼りきりになり、採用コストはどんどん上がっていきます。

三井:リアルな情報ですね……。私はエージェントを使う際も、候補者にバイアスがかからないよう、エージェント側が出す候補者の推薦文は読まないようにしています。

小林:そうそう。推薦文をうのみにすることで、稲垣さんがおっしゃっていたミスマッチが起こりますから。ただ、当社ではエージェントをダイレクト・リクルーティングと並行して活用しているので、「この方、本当にオススメですか?」「大丈夫ですよね?」などと念を押して、「この会社の人事担当者は、面倒なおっさんだな」と思わせる作戦に出ています(笑)。「小林さんの会社は注力企業にしないとうるさいぞ」とエージェント側に思ってもらえたら勝ちですね(笑)。

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面接時の質問はすべて過去形。知りたいのは具体的な実績

――即戦力採用の面接において、皆さんはどんな評価項目を設けていますか?

三井:面接時にコミュニケーション力が高くても、そこまで信用しない……とかですかね(笑)。重要なのは、これまで具体的にどのような成果を出してきたのかという「事実」。成果のなかで発揮したコミュニケーションスキル、過去の経験、実績を評価できるように、質問は常に「過去形」でしています。

稲垣:当社では、社員の評価制度に基づいて質問を考えます。さまざまな項目があるのですが、入社後の評価につながる質問項目であるかどうかが重要です。また、人物を立体的に評価するために、配属予定部門だけではなく他部門の社員にも面接してもらいます。多方面の社員に会ってもらい、入社後、一緒に仕事を進めることになる部門の社員に人物を見てもらうことで、多角的に長所・短所を判断し、採用ミスを減らしていくのです。

小林:なるほど、勉強になります。でも、面接回数が増えてしまい、選考辞退になる懸念はありませんか。

稲垣:面談は代表の最終面談を含めて複数回行いますが、来社いただくのは2日と最小限に設定しています。最初来社された際に、30分刻みで社員に会ってもらいます。複数の社員に会ってもらうための時間の設計やタイミングなどを考えて面談をし、その後代表取締役社長が面談して終了です。採用ミスが一番の懸念なので、採用スピードは一定のトレードオフとして考えています。

安田:稲垣さん自身が面談を行うことはないんですね。うちも採用スピードは重要視しておらず、4回面接をしますが、一次面接は基本的に全て私が行っています。

稲垣:採用プロセスを設計し、現場に任せられるようにしているんです。プロセスを正確にたどって採用しているか、チェックするフェーズも設けています。面接者の「採りたい・採りたくない」という主観的なバイアスがかからないようにしています。もちろん全く出ないということはなく、時には面談のクオリティやどんな方が必要なのかを確認するという意味で、同席したりもしています。

三井:採用が科学されていて、本当にすばらしいですね。私はエンジニア採用の際、「人事も技術意識が高いですよ」と伝えるためにあえて面接でエンジニアリングの話をすることがあります。私が技術好きということもあるのですが。

安田:現場を理解してくれる人事の存在って大切です。当社の採用はほとんどエンジニア職なので、現場の説明をきちんとできない人事だと「人事は会社のことはものすごく丁寧に説明してくれるけど、エンジニアの具体的な仕事内容になると現場に聞いてほしいと言われる」と一般的には違和感を抱くことが少なくないようです。

稲垣:採用って、きちんと設計しないと納期や人数目標に追われて、入社させることだけに気をとられがちなんですよね。でも、その人が定着し、能力を発揮して活躍できなければ意味がない。そういう観点でも、人事は現場を理解した事業部出身者や一度起業して苦労してきた元経営者など、事業と組織を連動して多角的に見てきた人の方が向いているんだと思います。

小林:なるほど。ぜひ、人材の定着、いかに活躍してもらうかという人材配置の点も一緒に話したいですね。

【前編】ポイント

・即戦力採用には直接口説くダイレクト・リクルーティングの手法がマッチする
・即戦力人材は“プールする”というのが、基本の考え方。候補者をデータベース化し、連絡を取り続ける
・面接で聞き出したいのは、これまでどのような成果を出してきたのかという「事実」。質問は常に「過去形」でするのも一つの方法
・候補者を立体的に評価するために、配属予定部門だけではなく、仕事で関わる他部門の社員にも面接してもらう
・人事は現場を理解し、具体的な仕事内容なども説明できるようにする

後編のテーマは「人材配置の課題と改善策」。4名の熱き人事・採用論はまだまだ続きます。

取材・編集:田中瑠子、編集:冨田有香


編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ホンネで語る! 人事座談会【前編】即戦力人材の採用成功の秘訣」を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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