「鳥瞰」と「俯瞰」のエトセトラ

2016年04月21日 15:23

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以前にも同じようなエントリーで記事を書いているのですが、「鳥瞰と俯瞰の使い方」について質問をいただくことが多いので使い方について説明をしたいと思います。

●まずは鳥瞰、次に俯瞰

4月21日の時点で、YAHOOで検索したところ、鳥瞰が約55万件、俯瞰が約1400万件ヒットしました。これは、一般的には俯瞰のほうが浸透していることを意味しています。

鳥瞰は二次元の平面のことをあらわします。俯瞰は平面を立体的に観察したものといえば分かりやすいでしょう。テレビなどのメディアにおいては「俯瞰」を使用する方が圧倒的に多いように感じます。特に最近は俯瞰を使用する方が非常に増えました。しかし間違った使い方をしている方も多いように思います。

例えば、平面の地図であれば鳥瞰ですが立体的な3D地図は俯瞰です。鳥瞰はその名のとおりバードビューともいいます。鳥は空を飛んでいますから、鳥がほぼ真上から全体を描写した視点が鳥瞰です。

会社の組織図、建物の見取り図、平面で表現できるものは鳥瞰です。コンサルタントが使用するドキュメントは鳥瞰です。最初に課題認識とプロジェクトの目的を明示しながら、プロジェクト鳥瞰図、または対象とする組織鳥瞰図を示します。わかりやすく鳥瞰することで、クライアントとの差異が無いかを確認するためです。

そして俯瞰ですが、これは鳥瞰したうえでの次の視点です。そもそも平面を把握せずに立体的な3Dを描くことはできません。鳥瞰のバードビューに対して、俯瞰はクォータービューという言い方をします。平面でありながらも立体感を出さなくてはいけませんから、平面の縦・横・高さ全てを把握して投影しなければいけません。

コンサルタントはプロジェクト前に全体を鳥瞰することからはじめます。いきなり俯瞰することができないことと、多くの人は鳥瞰すらできていないからです。例えば、組織分析における結果報告書は鳥瞰になります。組織上の強みや弱み特徴などを明らかにして会社の進むべき方向にあわせる参考資料として使用します。

しかし自社については、経営層でも詳細について把握はできていないものです。ここに鳥瞰することの重要性と意義が存在します。コンサルタントはクライアントを鳥瞰することに労力を注ぎます。会社においてもIR情報や企業概要はすべて鳥瞰です。

●間違った鳥瞰と俯瞰の使い方

ここでは誤った使い方について紹介したいと思います。

「俯瞰的視点をもて」「仕事を俯瞰する」
全体を把握する意味で使用されます。しかしいきなり物事を俯瞰することはできません。コンサルタントの作業と同じように、鳥瞰してからの俯瞰になります。一方で断片的な情報から全体を把握する手法もありますが、これは概念的思考力というもので俯瞰とはまったく異なるものです。

「事件を俯瞰する」「事故を俯瞰する」
ニュース番組などで事象ではなく、全体を把握する必要性がある際に使用されます。事件や事故を俯瞰するということは、まずは全体の鳥瞰が必要です。鳥瞰しなければ俯瞰することはできませんから違和感を感じます。

「試合を俯瞰する」
サッカーやラグビーの試合で、選手が何処にいるのか。またはどこにパスをしているのか、上から見たように解説をすれば視聴者にはわかり易く伝わります。最初に、選手のラインナップが紹介されます。これは鳥瞰です。試合中は鳥瞰を踏まえたうえで俯瞰していますから、スポーツの解説で使用することには違和感を感じません。

「場を俯瞰する」
置かれた場面を想定することに使用していますが、そもそも場を客観視しなければ俯瞰はできません。当該場面の正確な描写をすることによって俯瞰が可能になりますが、置かれた場面を客観視することは非常に難しいことです。単なる客観視であれば鳥瞰です。

「感情を俯瞰する」
自らの感情をコントロールすることを俯瞰と表現しています。そもそも感情は二次元で表現できません。仮に表現するとしたらそれはEQ検査のように一定の基準に照射して表すものです。つまり鳥瞰です。感情を俯瞰して立体化させるということは想像をかき立てて妄想するということでしょうか。感情の俯瞰にも違和感を感じます。

●煮詰まるに似ている鳥瞰と俯瞰

鳥瞰と俯瞰の使い方は、「煮詰まる」に似ています。「最近仕事が煮詰まっています」。これには2通りの意味があります。

「煮詰まる」は料理で煮物をしたときに水気が無くなっていく様をあらわしたものですが、本来は「そろそろ議論を尽くして結論がでる状態」のことをあらわします。ところが八方塞で打開策がなにも見出せない状況のことも「煮詰まる」と表現します。

以上のように、私はコンサルタントの経験を思い出しながら記述してみましたが、日本語としての正誤は専門家にお任せするとして、鳥瞰と俯瞰の使い方のイメージがおわかりいただければ幸いです。

尾藤克之
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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