消費のミクロとマクロ

2016年07月06日 10:11

1980年代、多くの家庭では車を持ち、海外旅行に年に複数回行き、お父さんは月一のゴルフのために週末は5000円かけて打ちっ放ちで練習していました。奥様も平日は近所の奥様とグルメ三昧でその時着ていく洋服は「あちらの奥様が素敵なのを着ていたから私も買う」でした。

私から見るとバブルとは高度成長期、一億総中流の流れの総仕上げだったとみていますが、これは国民全般がお互いに刺激しあってみんなで同じレベルになることを「要求」していたと思います。今考えてみれば国民が好きで消費していたというより自分をそのレベルに合わせないと恥ずかしいという気持ちが先に行っていた気がします。

これが私の思うマクロの消費。つまり、だれでも均等に同じようにモノを買う時代です。

その背景には金回りが多少は良かったことがあります。賞与も割と出ていましたし、ベースアップも普通にありました。出張に行けば接待や社費の飲食が許された上に出張手当がついてちょっしたへそくりになりました。また、世の中は金利が高かったので利息収入や「中期国債ファンド」などがバカ売れしていました。株をやる方にとっても本当によく儲かった時代です。

あの時代はもうすでに25年以上も前の話で、海外に長くいるからこそ思うことがあります。それは当時の年功序列の給与システムで皆を喜ばせることができるのは旧社会主義の計画経済と実質的には同等であり、経済の初動の時には非常に効果的であるけれど一定水準に達するとワークしなくなるのと似ているところであります。

何を言わんかとしているかといえば皆、同一会社の似たような給与の枠組みから一歩も出ていないのになぜそれだけ消費ができたのか、そちらの方が不思議だった気がするのです。

私が20歳の時、初めてアメリカに行って習ったことは賃金の支払いに週払い、隔週払い、月払いなどがあることです。なぜか、と聞けばいわゆる労働者らは給与をもらうと直ぐに飲んだり、使ったりして次の給与までのマネーコントロールができない人が多いから、と聞きました。だから、業務レベルに応じて賃金の支払いペースが違うのだと。

この支払いシステムは今でも全く変わりません。ここカナダでも我々のように給与支払者が源泉徴収額を計算する際、コンピューターシステムは給与の支払いの頻度をまず聞いてきます。そして私のところを含め多くの場合、月二回払いです。

これが上級の社員になると月一払いですし、各種ボーナスクローズがついたり、ストックオプションもあったりします。そのため、親は子供に良い大学、そしてできれば大学院まで行かせ、ある程度の将来を確保させます。一方、そこまで恵まれない子はどうしても週払いや隔週払いの世界から抜け出せないため、独立してステップアップを図る人も多いのです。

北米で思うことは恵まれた教育を受けた人もそうではない人も常に上に行きたいという強い願望、その理由は良い家、良いクルマ、旅行をしたり十分な消費ができることを目指していると思います。そのためには転職も厭うこともありません。ある意味、肉食であり、狩猟型であります。

以前、日本からの出張者に「北米に来るとクルマが新しい」といわれたことがあります。田舎に行けばぼろいクルマもたくさん走っていますが、確かにどんどんレベルアップしています。日本に行くと田舎は軽自動車ばかりだし、街中には日本車ばかり。バブルのころは「いつかは『ヤナセ』のマークを付けた車に乗りたい」と思っていたのに今ではクルマは動けばいいという若者が増えていないでしょうか?

北米の消費はまさに勝者が引っ張る消費力ではないでしょうか?唯一国民的盛り上がりをみせるのが感謝祭やクリスマスのころのギフト。

それに対して日本は消費が伸びないというマクロの数字は人々がマインドコントロールされている気がしてなりません。実際には消費のメリハリが起きていて売り上げが伸びるものは伸びているのですが、マスコミ、メディアが低消費生活のトレンドを強調し過ぎたため、多くの日本人が財布のひもを必要以上に締めすぎていないでしょうか?

最近、あるメディアに「結婚式が会費制になってきた」と記載されていました。そう書かれると皆、そういうふうにしていると思わせ、今の人の主流がそうである錯覚に陥ります。日本人は「主流につく」癖が強いため、そのような報道に敏感に反応するものです。北米なら「私には関係ないわ、3日間ぶっ通しのパーティーよ」なんていうスゴモノもたまにお見かけします。

一般的な消費は伸びないのではなくて頭を抑えられているだけかもしれません。そして欲しいと思うものには日本人はちゃんとお金を使っている姿も見受けられます。消費のミクロとマクロの世界は大いなる違いなり、なのでしょう。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 7月6日付より

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