日本企業は多様性を求めているのか-外国人留学生の就職-

2016年08月18日 07:58

NHKのおはようニッポンでも特集されていたが、高度外国人人材の活用が重要であるといわれて久しい。

日本企業は外国人の採用に本気なのか?外国人は日本での就職を本当に求めているのか?

外国人留学生(以下、「留学生」)にフォーカスし、各種調査データをもとに私見を述べたい。

留学生の増加 

2008年、日本政府は2020年を目標に留学生30万人計画をうちだした。その後も、「グローバル人材育成推進会議」(2010年)、「日本再興戦略」(2015年)などの一連の政策等により留学生の獲得、養成、活用の必要性を訴えてきた。この結果、日本学生支援機構の平成27年度外国人留学生在籍状況調査結果によると、2015年5月1日現在の留学生数は208,379人(昨年比13,2%増)であった。うち、高等教育機関に在籍する留学生数は152,062人となっており、目標の2/3まで達している状況にある。2014年9月に37大学がスーパーグローバル大学創成支援の選定を受けたことを機に、各大学で留学生の増加が見込まれるので、2020年の30万人に向けて順調に推移しているといえるだろう。

留学生に対する入口段階(入学)での取組みは進んでいる。

次に、留学生の日本企業への就職(出口段階)の状況についてみてみたい。

留学生の日本企業への就職

2014年に厚生労働省が公表した大学における留学生の就職支援の取り組みに関する調査によると、留学生の進路状況は、「日本で就職(27%)」「日本で進学(16%)」「帰国して就職(15~16%)」。また「就職を希望したが帰国(19%)」「就職を希望したが進学(7%)」となっている。留学生の53%が日本での就職を希望しているが、実際に就職したのはその半数であったことがわかる。

これは、大学(学部)の就職率97.3%(大学等卒業者の就職状況調査,厚生労働省、2016年5月)と比較すると格段に低い数値であり、留学生の日本企業への就職は困難になっている。

留学生と企業のミスマッチ 

<企業> 

2015年に新日本有限責任監査法人が経済産業省からの委託で実施した外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査によると、留学生の採用方法は「日本人学生と区別なく採用(71.9%)、「日本人学生とは異なる方法で採用(10.6%)」となっている。同調査では、留学生を特別に採用しない理由(留学生採用の課題)として、「キャリアパスや社内のロールモデルを上手く説明できない(41,4%)」が多くなっている。この原因には、第一に留学生を採用したことがないので説明できないケースと、第二に過去に留学生を採用したが数年で退職して母国へ帰る・社内風土が合わず早期に退職する等、社内のロールモデルを上手く説明できないケースという両方の要因が考えられる。

<留学生>

先の厚生労働省の調査によると、就職活動における留学生側の課題としては、「日本の就職活動プロセスの理解不足」「就職活動の取り組みが遅い」「日本語の習熟度」があげられた。

実際に留学生の就職支援をしていて、日本独特の就職活動(新卒一括採用)や企業のニーズを理解できていない留学生が多いと感じる。また日本語ができなくても母国語さえできれば就職できると考えている留学生も多い。

さらに、実際に入社してからも、日本独特の根回しの文化、ジョブローテーションを理解できず、早期に退職する留学生が多いのも事実である。

留学生と企業には、留学生が就職できないという就職時のミスマッチと、留学生が就職しても活躍できないという就職してからのミスマッチの2つがあることがわかる。

今後の留学生の日本企業での活躍に向けて 

これまで、各種調査結果をもとに、留学生と企業のミスマッチが生じている現状を見てきたが、次に留学生が日本企業で活躍するために大学がすべきことについて述べる。

企業と学生、両方の情報が集まる大学がコーディネーターになることで両者の最適な出会いを創出できると考えている。

大学が留学生を支援するために最初にするべきことは、自大学の留学生の特徴(進路希望、支援ニーズの把握)、企業(留学生に求めるスペック等)の情報を収集する仕組みを整えることである。

今後、留学生がますます増加することを考えると、一部署の一担当者が足で情報を稼ぐのではなく、入学-学び(正課・正課外)-就職、それぞれの段階で留学生に関わる関係部署、学部が連携して継続的に情報収集できる仕組みを大学内に作ることがポイントになる。

具体的な情報収集方法としては、以下が考えられる。

■留学生の情報収集 

<入学時>

国際関係部署が主催する留学生入学オリエンテーションで、日本での就職希望を確認するアンケートをとる

<授業>

日本語教育関連部署が開講している留学生が多く履修する科目(日本語科目等)に、キャリア・就職関連の内容を組み込み、アンケート等でキャリア就職意識を把握する

<就職活動時>

就職関連部署が主催するキャリア・就職支援プログラムに参加する留学生の情報を収集する

■企業の情報収集

留学生の採用実績、採用意欲、必要な語学力、採用スキーム、入社後のキャリアパスについて以下のルートで情報を収集する

・就職関連部署が合同企業説明会参加企業、来校企業等から留学生の採用に関する情報を収集する

・OB・OGとの繋がりを持つ部署が、日本で就職した留学生OB・OGから、彼らが在籍する企業の情報を収集する

勿論、情報収集だけを行うのではなく、留学生への具体的な就職支援と一体となって進めていくことになる。その中で各大学の資源を有効活用した独自の支援プログラムの展開がうまれてくるだろう。

さいごに企業の姿勢について、日々感じることを述べて終わりとしたい。

「企業がグローバル化に向け歩んでいく象徴として、また組織に変革を起こす人材として、日本人にはない新しい発想をもった留学生が必要である」と企業の人事担当者は言うが、この認識が実際に配属になる現場レベルで共有されていないのではないか。

結果、せっかく採用した留学生が早期離職することになる。

・変化の激しい時代においてイノベーションを起こし続けなければ企業の存続は難しい

・イノベーションを起こすには多様性のある組織にならなければならない

・外国人留学生は既存組織に風穴を開ける起爆剤になる

まことしやかにささやかれている。

だが、日本企業では一部を除いて、いまだ留学生に限らず異分子、多様性を受け入れる土壌は育っておらず、同質の集団を好む傾向にあるのではないだろうか

各大学で英語だけで授業を行い単位取得し卒業できるカリキュラムが増加していく中で、日本語が話せない多くの留学生が大学に入学し、日本企業への就職を希望することになる。

理想論や想い先行の取り組みではなく、大学、企業共に目の前の現実に向き合うまで残された時間は長くない。

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