経産省、エアバスに技術紹介、仏政府と覚書。都合のいい話では?

2017年03月01日 14:00

経産省、エアバスに技術紹介 仏政府と覚書日本経済新聞

経済産業省は日本企業の航空機産業への進出を後押しする。3月1日にフランス政府と覚書を交わし、日本の優れた部材や通信システムなどを欧州エアバスに紹介する場を2017年度に設ける。有望な技術を持つ企業には補助金も出す。新興国を中心に航空機市場は拡大、次世代航空機の開発も進むなか、日本企業の市場開拓を促す。

随分と都合のいい話ではないでしょうか。
経産省はエアバスを旅客機メーカーとしか認識してないんじゃないでしょうか。

エアバスグループは傘下にかつてのユーロコプター、ユーロコプターやA400Mなどの軍用機、人工衛星や、軍事技術のシステムインテグレーターで半分は軍事企業で、ボーイングみたいなものです。

さて、かつてユーロファイター商戦でははじめからF-35の採用ありきで、付き合った欧州側には大きな不満がありました。事実かなり要求をF-35に合致するようにマニュピレーションされたようです。

つまり出来レースの八百長。
建前のために形だけの競合を行う必要があったので競合にしたわけです。

窓口こそBAEシステムズでしたが、当然ながらエアバスも面白いはずがありません。欧州側はユーロファイターをテコに日本の防衛産業との商売の拡大を図ったわけですが、やっぱり米帝の犬だったよね、との失望感は大きかったはずです。

空自のUH-X商戦ですが、これまたインチキの官製談合です。
調達単価を実現できないUH-60J改をはじめから採用ありきで、これまたでき試合の茶番でした。

当初、23.75億円の調達単価で調達するはずのUH-60J改は概ね50億円とほぼ二倍です。このままではLCCも2倍になるでしょう。そもそも原型となった現用のUH-60Jの調達単価だって40~45億円でした。23.75億円でできないのは子供でもわかる話です。しかも仕様がこれまたUH-60に有利なようにすでに排された、昔のMILスペックを満たすこととか書かれていたわけです。ほぼ官製談合待ちがなし。空幕長以下組織ぐるみです。仏政府が抗議したのも宜なるかな、です。

そして陸自のUH-X。
これは本来、日本のヘリ産業を振興するため、国際共同開発を前提に計画されていました。ですからエアバスヘリは、最新型を川重と一緒に開発する提案をしました。これを世界中で1000機以上売る予定でした。成功すれば第二のBK117となって、国際市場での日本のヘリ産業の商売の拡大にったはずです。また防衛省ではこれをベースに武装ヘリを開発して既存のOH-6やOH-1,AH-1Sの更新も計画しており、それがきまれば更に100機程度の需要はあったでしょう。これは経産省も乗っていたはずです。

ところが蓋を開けてみれば、値段が安いのが一番だと、半世紀前に開発されたUH-1を創発かした412のマイナーチェンジ型です。実質いじるのは、トランスミッションだけで、これも外国機企業が担当します。つまり日本に対する技術移転はほとんどゼロ、富士重工に仕事を落とすために、国際価格の何倍の価格で調達するわけです。

だったら、ウチも既存モデルを投入してたよ、というのがエアバス側の本音でしょう。
確かに川重の不手際もあってでしょうが、それよりも防衛省の変心が大きかったでしょう。
察するにグローバルホークやらオスプレイやら高いアメリカ製のおもちゃを政治的に買わされることになって、UH-Xは安物で我慢しろ、ということになったのではないでしょうか。

仮にUH-Xを川重が受注していれば、事実上富士重工のヘリ部門は壊滅して、へりメーカーは3社から二社に集約されるはずでした。それもなくなり、費用対効果悪い防衛省専用産業として今後も3社体制が続きます。だったら、まだ412を生産しているカナダかインドネシアで生産して輸入した方がましだったでしょう。

一応これの民間型を今後150機売るといっていますが、カナダやインドネシアでほとんど同じものをもっと安く作っているわけで、大同小異の高い日本製ヘリがそれほど売れるでしょうか。

これも防衛省が勝手に方向を転換した、裏切られたとエアバスヘリ側は怒っていました。それは日本支社だけではなく、本社も同じで、この件に関して記者会見もあり参加しましたが、エアバス側の怒り心頭の様子でした。

そのエアバスヘリのヘッドだった、ムッシュ・ジヌーが今エアバス・ジャパンの社長です。

さて、こういう過去の行状で、エアバスさん、ひとつ宜しくというのは随分と虫がいい話ではないでしょうか。

無論、エアバスも商売ですから儲かる話なら乗るでしょうが、日本側を信用してくれるでしょうか。
また、同じ条件ならば意趣返しで別な国と組むのではないでしょうか。
仮にフランス政府の意思があっても、エアバスが断る話もあるでしょう。

防衛省はかつて、空自の練習機でもインチキな官製談合を行いましたが、こういうあからさまなインチキな入札を続けることは我が国の国際的な信頼を失います。
商売で何が大切かといえば、信用です。

その信用を防衛省が毀損し続けております。
ぼくもそうですが、仮に商品がいくらよくとも信用できない相手は組みません。過去、それで諦めた商売が多々あります。信用できない相手と組むと絶対に痛い目にあうからです。
商売をしている人間にとっては自明の理です。

インチキが習い癖の防衛省の所業も直さず、防衛航空宇宙産業で諸外国の政府と、企業の信頼を得られるでしょうか。また経産省にも確固たる防衛航空宇宙産業振興のビジョンもありません。政策はすべて近視的で、継続性がありません。ジェトロの航空産業の中小企業振興もそうです。

これでもくろみが成功すると考えているのであえれば、随分と世の中と商売を舐めています。

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。

60代も夢中「キノコホテル」とは?(上)
60代も夢中「キノコホテル」とは?(下)

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

海自ヘリ問題、諸悪の根源は「現場の暴走」だ
訓戒処分を受けたが、海幕長の判断は正しい

朝日新聞のWEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。

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戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ

続・南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
不足するキット、十分な応急処置ができない衛生兵……


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年3月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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