AIIB参加の条件

北尾 吉孝

今月7日閉幕した「第50回アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)年次総会」(横浜開催)でも「中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB:Asian Infrastructure Investment Bank)と(日米が主導する)ADBの関係に注目が集まった」ようですが、昨今AIIB「参加論が安倍政権内で再び浮上している」と報じられています。

本件菅義偉官房長官も昨日言われていた通り、事の是非は要するに運用の問題だと思います。アジアのため此の運用が公平公正である限りにおいては、中国が音頭を取ってやろうが日本や米国が音頭を取ってやろうが、余り大きな違いはないでしょう。

他方『AIIBには、中国の習近平国家主席が提唱する「一帯一路」構想を金融面で支援するという、もう一つの顔がある』とされています。日本の拠出金が一帯一路の実現といった中国の便益のためだけに使われるのならば、参加すべきではないと思います。

従って、AIIBの運営体制における十分な審査機能やチェック機能、取り分け意思決定に際しての透明性・公平性・妥当性の担保は、極めて重要な問題です。その点、1966年の設立より「歴史のなかで築いてきた信頼と条件」を有するADBとAIIB(2015年12月設立)を比べるに、その実績・評価等の類には言うまでもなく雲泥の差がありましょう。

然も夫々の投票権シェアということでは、ADBが「①日本:12.8%、②米国:12.8%、③中国:5.5%、④インド:5.4%、⑤オーストラリア:4.9%」であるのに対し、AIIBは「①中国:28.8%、②インド:8.3%、③ロシア:6.6%、④韓国:3.9%、⑤オーストラリア:3.8%」と中国が突出した支配権を握っています。

そういう意味では、仮に日米がAIIBへの参加を決めるとすれば、最大の資金拠出国は恐らく両国になろうと思いますから、参加条件の一つに中国の投票権シェアをADB並に下げ、日米中で同程度に持って行くことが重要でしょう。

そうした比率の適正化により初めて高水準のガバナンスが実現され公平公正な運用になって行くわけで、それが出来ない場合は日米主導(ADB)・中国主導(AIIB)という中で各々が違いを際立たせ共に存立して行く形を模索すべきでしょう。

そして別途ADBがAIIBのプロジェクト毎に、真に「アジア・太平洋地域における経済成長及び経済協力を助長し、開発途上加盟国・地域の経済発展に貢献することを目的とした」ものであるかを選別し、個々別々にADBの融資基準で応ずる程度を判断して行くということではないでしょうか。

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