神はトランプ氏を愛しているか

2017年09月08日 11:30

実業界ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任して以来、大統領の発言がメディアを飾らない日はほとんどない。そして多くは少々シニカルで批判的な報道が多い。リベラルなメディアは、ヒラリー・クリントン女史がトランプ氏に敗北したという事実を今なお完全に咀嚼できず、トランプ新大統領のあら捜しを続けている。

▲親の代からの聖書の上に手を置き宣誓式に臨むトランプ新大統領(2017年1月20日、CNN放送の中継から)

▲親の代からの聖書の上に手を置き宣誓式に臨むトランプ新大統領(2017年1月20日、CNN放送の中継から)

米国だけではない。欧州でもトランプ氏の評価は決して良くない。トランプ氏が「対北政策で軍事行動も辞さない」と発言すると、多くの欧州の政治家から批判の声が挙がる。パリのシャンゼリゼ通りで行われた7月14日恒例の革命記念日軍事パレードにトランプ大統領夫妻を招いて、もてなしたフランスのマクロン大統領だけは「理解できる」と評価していたが、他の多くの欧州首脳はトランプ大統領の対北政策には批判的だ。

欧州の知識人と呼ばれる人々には反米傾向がある。米大統領を無条件で評価する人はほとんどいない。いい悪いは別として、「欧州は米国とは違う」といった強い自意識があるからだ。欧州の知識人たちから好意的に受け取られた米大統領は最近ではバラク・オバマ前大統領だろう。まだ何もしていない就任直後にノーベル平和賞を受賞するなど、オバマ氏の場合、欧州では珍しく人気があった米大統領だった。

一方、トランプ氏の場合、就任直後から批判的な評価を受け続けている。もちろん、そのかなりの責任はトランプ氏自身の言動に起因している。変わりやすく、ぶっきらぼうな言動は欧州人に不安と誤解を起こさせている。

ところで、トランプ氏は現在、2つの課題に取り組んでいる。外交面では核開発を継続する北朝鮮への対応であり、国内では大型ハリケーン「ハービー」対策など危機管理だ。換言すれば、トランプ氏は就任以来初めて自分が起因した問題ではない課題に取り込んでいるわけだ。
選挙戦のロシア疑惑問題や最近では白人主義擁護発言などはトランプ氏自身がトラブルの発祥地だったが、北の核問題とハリケーンはそうではない。

トランプ氏は先月29日、ハリケーンの被災地テキサス州を視察し、犠牲者に声をかけて支援を約束した。その姿はホワイトハウスのトランプ氏ではなく、活き活きとしていた。初めて自分が原因ではない問題に取り組んでいるからだろう。

対北問題はエスカレートし、国際社会は北朝鮮の動向と共に、米国の対応に注目している。アメリカ南部を襲い、観測史上最大の降水量を記録したハリケーンでは大統領の危機管理が問われる。メディアで批判され、冷笑される機会が多かったトランプ氏はここにきてその真価を発揮できるチャンスを与えられたわけだ。

トランプ氏は前任者オバマ氏のように演説は上手くないし、その言動には常に揺れが見られる。その上、ゴルフ場に通う時間も他の大統領より多い。どの点からみても、従来の大統領とは違う。ホワイトハウス入りした初日、事務所のカーテンの色を変えるなど、その行動はユニークだ。ただし、そのトランプ氏を少なくとも51%の米国民が選んだのだ。クリントン女史ではない。この事実は看過できない。トランプ氏を選んだ国民もトランプ氏の生活様式、言動を全く知らなかったわけではないだろう。国民が知って彼を選んだのだ。

米国民は良し悪しは別として、何時でも事があれば神を持ち出す国民だ。神が米国を祝福し、世界の指導国家として導いているという確信がある。その意味で、トランプ氏の登場も別の観点から見る必要があるかもしれない。すなわち、トランプ氏には多くの問題があるが、神が今、彼を必要としている、といった観点だ。それが事実とすれば、神はトランプ氏に必ず救済の手をさし伸ばすだろう。

北朝鮮の核問題、ハリケーンの危機管理は関係者、当事国にとって深刻な問題だが、トランプ氏にとって一種の神の救いかもしれない。世界的人気が高かったオバマ氏も対応できなかった北の核問題を解決し、ハリケーンの被害対策に果敢に取り組めば、トランプ氏への評価は変わるだろう。それ以上にトランプ氏自身が米大統領として自覚が深まり、自信を得るかもしれない。

神が60万人のイスラエル人をカナンの福地に導く指導者にモーセを選んだ時、モーセは「自分は口下手だし、うまく話せません」と断った。すると神は話し上手な兄アロンを連れて行くようにモーセを諭した。この話は旧約聖書の「出エジプト記」に記述されている。
政治経験が皆無で少々、自己陶酔型のトランプ氏は人間的に見たら欠点の多い人物かもしれない。しかし、神の目と人間の評価は時には全く異なることがある。トランプ氏には“神の証人”となって頂きたい。すなわち、「私(トランプ)でも神が祝福した米国の大統領職を務めることができた」という証だ。

トランプ氏は大統領宣誓式にトランプ家の聖書を持参し、その上に手を置いて宣誓式に臨んだ。罷免されない限り、トランプ氏はあと3年以上の時間が与えられている。同氏は与えられた時間を有効に活用し、米国ファーストだけではなく、世界の人々の願いにも耳を傾ける大統領となってほしいものだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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