【映画評】アトミック・ブロンド

2017年10月21日 06:00
Ost: Atomic Blonde

東西冷戦末期の1989年。イギリス諜報機関MI6が誇る美貌の女スパイ、ロレーン・ブロートンは、西ベルリンを訪れる。彼女に課されたミッションは、世界中で暗躍する各国機関のスパイの名が記録された超極秘リストを奪い返すこと。同じくMI6のエージェントで先にベルリンに潜伏している凄腕スパイのパーシヴァルと共に任務に当たるが、彼は不審な行動を連発してロレーンを混乱させる。各国のスパイがリスト争奪戦を繰り広げる中、ロレーンには、MI6内部にいる二重スパイを探し出して始末するというもう一つの任務があった。ベルリンの壁が崩壊する歴史的事件が間近に迫るなか、誰が敵で誰が味方が分からない状況に、ロレーンは絶体絶命の苦境に立たされる…。

MI6の凄腕女スパイが、盗まれた極秘情報の行方と裏切者の存在を追うスパイ・アクション「アトミック・ブロンド」。原作は、アントニー・ジョンストン、サム・ハートによるグラフィックノベル「The Coldest City」だ。英のMI6をはじめ、露のKGB、仏のDGSE、米のCIAまで入り乱れるハイレベルな諜報合戦は、裏切りの気配が濃厚で、敵味方の区別がつかない混乱、そこに隠された驚愕の事実…と、ジョン・ル・カレのスパイ小説さながらである。特筆なのは、主人公が超凄腕の女性エージェントであること。演じるのは演技もアクションも一級のオスカー女優シャーリーズ・セロンで、女性版007、いやそれ以上にクールでタフなヒロインを演じて、ハマリ役だ。男性優位のハリウッドで、これほど惚れ惚れするほどかっこいい女優はめったにお目にかかれない。ボンド風のロマンスもひとひねりした形でしっかり織り込んで、まさに女も惚れるイイ女が、ロレーン・ブロートンなのだ。

物語は、終わってみれば特に目新しいものではないのだが、裏切り者の存在や意外なつながりなどで飽きさせない。セロンのコスプレ付の超絶アクションによる見せ場もたっぷり用意してある。長身で筋肉質な身体のセロンが、廃ビルで見せる部屋から階段、外に至るまでの接近戦をとらえたワンカットのバトルは、本作の大きな見所だ。メガホンを取るのは「ジョン・ウィック」の共同監督を務めたデヴィッド・リーチ。冷戦末期の混乱したベルリンのデカダンス漂う空気を写し取った映像や、1980年代のヒットナンバーを効果的に活かす音楽など、随所にセンスの良さを感じさせる。荒唐無稽な活劇とリアリティをうまく織り交ぜた、ポップでクールなアクション痛快作だ。
【70点】
(原題「ATOMIC BLONDE」)
(アメリカ/デヴィッド・リーチ監督/シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、他)
(スタイリッシュ度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月20日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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