がん患者さん・家族・団体への恩返しのために

2017年11月25日 11:00

今年の日本の勤労感謝の日と米国のThanksgiving Dayは同じ日となった。勤労感謝のも日が11月23日に固定されているのに対し、米国のThanksgiving Dayは11月の第4木曜日となっているので、5-6年に一度しか同じ日にちにはならない。この頃から、正月明けまで、時がゆっくりと流れるのが特徴だ。日本の正月休みには時が止まったかの感があるが、米国のこの1か月あまりは、だらだらと時が流れている感じだ。

今、東京医科歯科大学で26日の午後1時から開催される「がん患者大集会」に参加するために、オヘア空港にいるが、意外にも人が非常に少ない。荷物検査に時間がかかると思って早く来たが、荷物検査場もガラガラで、かなり肩透かしだ。連休の中日なので、人の移動が少ないようで、空港のラウンジも今までに見たことがないくらい閑散としている。気候も10月に続いて11月も比較的穏やかで、水曜日の朝にマイナス4度まで冷え込んだが、今の外気温は15度もある。水曜日は完全防備で歩いて出勤した。心臓への負担は心配だが、運動不足も不安なので、マイナス10度までは頑張って歩いて通勤したい。

今回の「がん患者大集合」のテーマは「患者力」だが、このテーマは私には荷が重いので、講演では世界の動きを紹介することに重点を置きたい。しかし、少しだけ触れると、がんを克服するためには、「自分自身のがんと闘う、患者さん自身の力」が不可欠だし、「がんという病気を国レベルで対応するための圧力団体としての患者力」も必要だ。それに加え、米国のがん患者団体は寄付金を集めて研究支援する、「研究をリードする力」も持っている。

個人レベルの患者力として、免疫力を高めるさまざまな工夫が絶対的に不可欠だ。もちろん、詐欺師に騙されてはならない。私自身は、科学的な臨床試験の形で、ネオアンチワクチン(+樹状細胞)療法、あるいは、がん抗原特異的TCR導入T細胞療法を進めるべく準備を整えている。人生最後の仕事と思っているが、日本で確立できるまで生きていられるかどうか健康には自信がなくなってきた。しかし、ここで引き返したり、立ち止まったりしているわけにはいかない。前に進むしかない。坂本龍馬は死ぬ時も前のめりに崩れ落ちたというが、私も最後の一歩まで前向きに進む覚悟である。

6年前にシカゴに移った際には、朝日新聞事件によって心が折れた上に、民主党政権下でのストレスが重なって、日本に対する愛国者を自認する私でも、日本という国にいるのが嫌になった。私に期待をかけて待ってくれている患者さんがたくさんいることを十分に理解していても、メディアの理不尽さ、政権の津波サバイバーや放射線に暴露された人たちへの不誠実さに、心が前を向いて歩む気力を失ってしまっていた。

最近の安倍政権に対する「印象操作」という言葉を聞くたびに、私に対する朝日新聞の「印象操作」を思い出し、胸が苦しくなる。関係のない事実を並べ、「ワクチンを開発するためにオンコセラピー社を設立した」という根も葉もない嘘をでっちあげてまで、印象操作を行った。一人の研究者を抹殺するための悪意が満ち満ちていた。しかし、私は学術団体、そして、患者団体に守られて生き延びることができた。その恩義は決して忘れない。それがなければ、私の人生は終わっていただろう。私ができる恩返しは、がん患者さんの健康と笑顔を取り戻すことだ。

私が日本で始めようとすることには、必ず、抵抗勢力が足を引っ張ってくるだろう。「面従腹背」の厄介な人たちが登場してくるかもしれない。でも、今回は何があっても逃げない。そして、たとえ、私が前のめりで倒れても、後継者が必ず成し遂げる用意を周到にするつもりだ。久しぶりに闘争心が蘇る。私は、カーブやフォークボールを絶対に投げないし、隠し玉などしない。ストレートを投げ続けて試合を続けるだけだ。それで負けても本望だ。

2017年11月26日、日曜日を、日本のがん医療の記念日とするために、是非、多くの人に集まってもらいたい。選挙と同じで、数こそ力だ。これも患者力を示す一つのバロメータになるはずである。知人・友人を誘って来場いただけることを心から願っている。厚生労働省に力のある政治家・がんで闘病している政治家・少し元気のない都知事なども集まって欲しいものだ(望みは限りなくゼロだが)。

よし、今から東京に向けて出発だ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
シカゴ大学医学部 内科教授、外科教授

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