文在寅大統領の第1の敵国は日本?

2017年12月16日 07:00

13日から始まった韓国の文在寅大統領の中国訪問は大統領府の狙いとは違った展開で終わったのではないか。就任後初の訪中で大きな成果を期待する声もあった。文大統領は14日、北京人民大会堂で習近平国家主席と首脳会談を行った。事前に予想されていたことだが、その直後の記者会見も共同声明もなく終わった。文大統領は16日、北京大学で前日演説した後、地方を視察し、帰途に就いた。

中国の習近平国家主席と韓国の文在寅大統領の首脳会談、2017年12月14日、北京で(韓国大統領府公式サイトから)

青瓦台側は、訪中を控え、2つの要望を北京側に伝えていた。一つは4泊5日の国賓訪問、そして「13日から」の日程だ。前者は習近平主席の日程の都合で断られ、1日短縮され、後者は受け入れられた。韓国側は、13日の中国の国家公式記念日の「南京大虐殺の追悼日」に訪中し、韓国と中国が連携して日本の過去を追及したいと考えていたはずだ。だから、韓国側は13日の訪中に拘った。

一方、中国側は18日から習主席主宰の経済工作会議に入る。だから、韓国の訪中は17日前でなければ年内の首脳会談実現は難しい、というのが基本姿勢だった。年内訪中を願う韓国側は北京側に無理押しした。その結果、日程は1日短縮され、国賓訪問の初日、ホストは北京に滞在せず、初日の歓迎会もなく、寂しく終わることが予想された。にもかかわらず、文大統領は13日の「南京事件の追悼日」に合わせて訪中を強行したわけだ。

しかし、13日、肝心のホスト役の習近平主席は追悼大会参加のために南京を訪れていたが、慣例の演説をせず、出席しただけで退席した(追悼式の演説は習主席ではなく兪正声・政協主席が行った)。日本のメディアは、日中関係が改善の兆しがあるので、それを妨げたくないという中国側の配慮ではないか、という憶測記事を流している。

文大統領は13日の訪中初日、在外韓国人の昼食懇談会に参加した後、、韓中ビジネスフォーラムに出席して演説を行った。聯合ニュース(日本語版)によると、文大統領は、「南京大虐殺から80年にあたる追悼の日で、われわれ韓国人は中国人が経験した辛い事件に深い同質感を持っている。私と韓国人は同病相憐れむの気持ちで犠牲者たちを哀悼し、痛みを抱える多くの人々にいたわりの言葉を差し上げたい。中国と韓国は帝国主義による苦難も共に経験し、共に抗日闘争を繰り広げ、厳しい時期を一緒に乗り切ってきた」と述べたという。

トランプ米大統領が訪韓した時の韓国側の対応を思い出してほしい。トランプ大統領は11月7日、1泊2日で訪韓した。ホスト国の文在寅政権は同日夜、国賓ゲストのトランプ米大統領夫妻のための歓迎夕食会を開催し、そこに、元慰安婦の李容洙さん(88)を招待した。日本メディアによれば、李さんの夕食会参席については事前に米国側に報告されていなかった。それだけではない。夕食会のメニューには日本と領土問題で争っている竹島で採られたエビが「独島産」として出されたという。

今回は訪中だ。それも国賓として招かれたのだ。そのゲストの文大統領は北京入りして最初に叫んだのが南京問題だった。聯合ニュースもさすがにおかしいと感じたのか、「就任後初めて訪問した中国で最初のメッセージとして南京大虐殺に言及したのは、ほぼ同じ時期に日本に占領されるという苦難を味わい、抗日運動を展開した韓中共通の歴史を際立たせることで、親近感をアピールする狙いがあるとみられる」と報じているほどだ。

中国と韓国両国は10月31日、在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)が「(北朝鮮以外の)第三国に向けられたものではない」などと確認、関係改善で合意していた。それを受け、中国当局は禁止してきた韓国行き団体旅行の取り扱いを一部許可、そして文大統領の国賓招待だ。

しかし、中国の対韓姿勢は変わったのだろうか。中国は依然、韓国側にTHAAD追加配備、米ミサイル防衛(MD)体制編入、日米韓同盟への発展の三つに「不可」を突き付けているのだ。両首脳会談の最大の課題だった北朝鮮問題では制裁と圧力を行使して北の核問題を解決する方向で意見の交換が行われたが、会談の詳細は不明だ。文政権は軍事介入も辞さない強い姿勢を崩していないトランプ米政権との関係を無視して、中国寄りの対北政策を完全に支持することはできないが、習主席との首脳会談では対話・外交での解決を強く主張したという。

文大統領には朝鮮半島の危機を克服するため日米との関係強化が不可欠だというコンセンサスがあるのだろうか。もちろん、中国との連携は欠かせられない。それだけに冷静で賢明な外交が求められるわけだ。

トランプ大統領訪韓時の接待、訪中時の文大統領の南京問題への言及などの言動を考える時、文政権の外交への不安を払しょくできない。文大統領の第1の敵国は日本ではないか、といった思いが湧いてくるのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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