隣町の「家の税金」は少しだけ安いかもしれない

2018年01月27日 06:00

米議会両院がつなぎ予算案を可決したことにより、米国の政府閉鎖は約3日間で収束することになった。日本で「行政が停止する」ことなどは考えもつかないが、自治体の財政破綻によって似たような状況が生まれることもある。2007年に財政破綻した夕張市では今なお行政サービスの低下や諸税の高負担が問題となっている。財政破綻後、夕張市では住民税や軽自動車税などが引き上げられた。これは当然財政再建の為だが、ここから分かるのは住民税を含めた諸々の地方税は市町村によってその「税率に違い」があるということだ。

自宅(土地、建物)を所有している場合に課税される「固定資産税」や「都市計画税」も地方税である。固定資産税は都道府県および市町村が税率を設定できるとされているのだが、地方税法で定める標準税率は1.4%であり多くの自治体は標準税率で税額を算出している。しかし、都市計画税には「標準税率が無い」ため隣接している市町村でもばらつきがあるのだ。※制限税率は0.3%

そもそも都市計画税とは「…都市計画法に基づいて行う都市計画業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てる…」ための目的税なのだが(※地方税法第702条)、「固定資産税との区別が曖昧である」、「受益者負担金との二重課税である」などの批判も多い。各市町村の同税に対する姿勢も様々だ。茨城県常総市及び潮来市では地域間における課税の不公平等を理由として、2016年度に同税が廃止されている。この他にも都市計画税の税率の引下げを実施した団体(東京都多摩市、神奈川県逗子市など)や、逆に新たに同税を導入した団体(広島県大竹市など)もある。

都市計画税が回避できた興味深い話がある。神奈川県相模原市は2006年に津久井町・相模湖町と、2007年城山町・藤野町と合併した。その後、2010年に政令指定都市へ移行したのだが、ここで思いがけない問題がおこる。旧相模原市と旧城山町では都市計画により市街化区域と市街化調整区域が線引きされていたのだが、旧津久井町、旧相模湖町、旧藤野町はこの「線引き」がされていなかった。いわゆる「非線引き区域」である。

この当時、政令指定都市では都市計画法により区域区分を定めることが義務付けられていた。つまり上記の旧3町も「線引き」をしなければならなくなったのだ。線引きされると市街化区域に分けられた地域は土地評価額の上昇や都市計画税の賦課により税負担が増える。原則的に都市計画税は「市街化区域」の不動産に課税され、市街化調整区域や非線引き区域には課税されない。(※課税することはできる)

また、市街化調整区域に分けられた地域は評価額が下がり都市計画税も賦課されないので税負担減が見込まれる一方、新たな宅地開発が規制される等その用途が制限されることになる。そのため、上記旧3町の住民による「線引き反対運動」がおこり、最終的にはこの運動が政治を動かすこととなった。2013年、都市計画法自体の改正が行われ政令指定都市における「線引き義務付けの見直し」がなされたのだ。この結果、相模原市の旧3町では「線引き」がされず都市計画税の課税がなされずに済んだのである。誤解の無いよう明確にしておくがこの「線引き反対運動」の主たる目的は税負担の軽減だけではなく、線引きによる土地利用の制限とそれがもたらす地域の分断や、政令指定都市といえども地域ごとに多様性が必要であることを訴えたことにある。

少し話を戻そう。上記の相模原市、同市に隣接する町田市と厚木市を例に、土地(課税標準額500万円)と建物(課税標準額300万円)の都市計画税を試算してみる。(※各課税標準額は評価の特例及び調整措置後のものとする)

相模原市税率0.3% (500万円+300万円)×0.3%=24000円

町田市税率0.24% (500万円+300万円)×0.24%=19200円

厚木市税率0.2% (500万円+300万円)×0.2%=16000円

上記の例で示した評価額は低額だがこれが高額になれば当然税額も高くなっていく。

今あなたが所有している「家」に都市計画税は課税されているだろうか。そしてその税率をご存じだろうか。税率を考えればわずかな額かもしれないが、もしかしたら目と鼻の先の隣町では都市計画税が安い若しくは無いかもしれないのである。

高幡 和也    宅地建物取引士

※参考資料 国土交通省「都市計画法施行令の一部を改正する政令について H25.7.23」 国立国会図書館 調査及び立法考査局「都市計画税の現状と課題  H29.6.22」

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