ジブラルタルもEUから離脱せねばならなくなる?

2018年03月03日 06:00

Wikipedia:編集部

Brexitによって必然的にEUからの離脱を余儀なくさせられるのがジブラルタルである。それをGibralexitと称している。

昨年3月29日に英国のメイ首相がリスボン条約に署名してEUからの離脱を正式にEUに通告した際に、その書簡の中でジブラルタルを加えていなかったという逸話もあった。それはあたかもジブラルタルの住民の意思を表明したものであったのかもしれない。即ち、彼らはEUからの離脱を全く望んでいないからである。

Brexitか否かという国民投票が行われた時にジブラルタルでは96%の住民が「Remain」に投票したことはそれを如実に示したものであった。

ジブラルタルはスペインの王位継承戦争時の1713年に英国軍がジブラルタルに侵入し、そのままそこに居座り、その後のユトレヒト条約によって英国による統治が決まり、現在もそれが続いているのである。

スペインは今も英国による領有を承認していない。これまで英国とスペインはEU加盟国であるが、一旦英国がEUから離脱すればEUは必然的にEU加盟国のスペインの立場をより優先した姿勢に傾くようになるはずである。

ジブラルタルには33000人の住民が住んでいる。住民の生活を支えているのは年間1000万人が訪問する観光産業である。また、タックス・ヘイブン地区になっていることから、資金の流れも活発である。ジブラルタルで登記されている企業数は14000社にのぼるという。住民2.3人につき1社が存在していることになる。

問題はジブラルタルと国境を接するアンダルシア地方のラ・リネア・デ・ラ・コンセプシオン市から毎日ジブラルタルに勤務している人たちにとって英国がEUから離脱することによって国境が明確に設けられることになり、7500人のラ・リネアの市民がジブラルタルに毎日勤務で通うことに問題が生じる可能性があることだ。

同様にジブラルタルの住民がスペインに入るのに現在のように容易には入国出来なくなる可能性があり、ラ・リネア市の飲食業にもマイナス影響を及ぼすようになる。

1969年にフランコ将軍がジブラルタルを封鎖した時には、ジブラルタルは「陸の孤島」になってしまい、ラ・リネア市からジブラルタルへ毎日勤務していた労働者が通勤出来なくなって当時3万人の人口のラ・リネア市の40%の住民が出稼ぎで移民しなければならなくなったという苦い経験をしている。

市民の一人は当時を回想して「政治家は感情や狂信的な考えに支配されることはやめてもらいたい。それが市民にどれほどの被害をもたらすものか、彼らには理解できないのだ。現実を知らないのであれば意見を言う前に勉強してもらいたい。ラ・リネア市が迎える今後の事情は深刻だ」と取材記者に語ったという。

アンダルシア地方はスペインでも失業率が非常に高い地方である。ラ・リネア市の住民がジブラルタルで働くことが出来なくなると、嘗てのように職場を求めて移民しなければならなくなる。しかし、以前のように移民しても職場を見つけることは容易ではなくなっている。

その上、英国がHard Brexitを選択するようになると、EUの単一市場へのアクセスが困難となり、観光産業そして輸出入に支障をきたすようになると懸念しているのである。

この様な事情を知っているジブラルタルで投票権を持っている住民はBrexitか否かという国民投票が行われた時に96%の住民が「Remain」に投票した

一旦、英国のEUからの離脱が決定した後はジブラルタルの離脱についてはEUと英国との直接交渉の枠の中に含まれないとした。それはスペイン政府の勝利だとされている。何故なら、ジブラルタルとスペインとの間の直接交渉が可能となるからである。スペイン側から見れば、ジブラルタル自治政府に統治権を譲渡して来たということ自体が寛大な対処であり、ジブラルタルが今後もEU圏に留まることを望むのであれば、唯一選択できる道はスペインに帰属することであるというのがスペイン政府の姿勢なのである。

ジブラルタルの経済を支えているのは観光で、その大半をスペインに依存している。しかし、英国がHard Brexitを選択するようになるとジブラルタルの観光産業そしてタックスヘイブンの特権も失う恐れが多分にある。

そのハンディーキャップを回避するためにジブラルタル自治政府のファビアン・ピカルド首相が模索して見つけた手段はアンダルシア州政府と緊密な関係を維持して味方につけることだという手段を取ったのである。

仮に英国がHard Brexitを選択して、それにジブラルタルも追随せねばならなくなると、アンダルシア州政府にとってジブラルタルで仕事をしている7000人以上の同州ノ市民が被害を受けることになる。また、現在国民党が政権を握っているスペイン政府はこれまでもジブラルタル自治政府と色々と紛争を起こしている。その歯止め役にアンダルシア州政府を味方につければそれを阻止することにも繋がるとピカルド首相は考えたようである。

スペインの次期総選挙で社会労働党が政権に復帰すると、アンダルシア州政府は社会労働党の勢力が全国でも一番強い自治政府であることから、尚更ジブラルタル自治政府にとっては都合が良くなる。その意向も含めてピカルド首相は1月25日にアンダルシア政府を訪問してスサナ・ディアス州知事と会談している。彼女は社会労働党の幹部のひとりでもある。

Brexitが抱えている問題の一つがジブラルタルにあるのである。

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